主要7カ国(G7)は、暗号資産の個人間取引の規制整備を検討するよう、資金洗浄(マネーロンダリング)やテロ資金対策の国際組織「金融活動作業部会(FATF)」に要請する意向であることがわかった。5月11日に日経新聞が報じた。

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現在は暗号資産交取引所など業者を介する取引のみが対象になっているが、個人間取引まで拡大することで資金洗浄や経済制裁の監視のすり抜けを防止する。13日まで開かれる財務相・中央銀行総裁会議で、FATFに課題や必要な対策の検証を求めるという。不正取引が生じないよう交換業者に厳格な顧客管理を求めるほか、民間の分析会社や当局などと連携し疑わしい取引の把握することなどが想定される。

個人間取引は数の膨大さに加え、個人情報保護への配慮も必要となり、規制の実現へのハードルは低くはないのが現状だ。日本でも2022年に成立した改正資金決済法で資金洗浄対策を強化しているが、個人間の取引は対象外になっている。

G7の中では米国は4月、米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長が、米下院金融サービス委員会で開かれた公聴会で「法令順守違反が事業モデルとして確立している。暗号資産のエコシステムには、SECのような“警察官”が必要である」と発言。SECはほとんどの暗号資産は米証券法の規制対象である「有価証券」に該当するという立場をとっているが、米連邦政府レベルでは暗号資産に対する包括的な規制が存在していない。

暗号資産の規制強化が急がれる背景には、22年11月の大手暗号資産取引所FTXトレーディングや、3月の米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻がある。一方で、暗号資産規制について重点的に議論された2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、暗号資産に対する規制の厳しいインドは禁止も模索しており合意に至らず、国境を越えたデジタル規制の難しさも課題となっている。