【第62回 静岡ホビーショー】
開催期間:5月8日~12日
会場: ツインメッセ静岡 (静岡県静岡市駿河区曲金3-1-10) 入場料:無料

 タミヤは、1/35ミリタリーミニチュアシリーズ「ドイツ連邦軍主力戦車 レオパルト2 A7V」を、「第62回 静岡ホビーショー」にて展示した。本キットは6月発売予定で、価格は5,720円。

 レオパルト2は1979年に生まれたドイツのMBT(主力戦車)。登場からすでに40年の時が経っているにもかかわらず、数々の改修によって今なお他国の戦車と較べてもトップクラスの性能を誇っている。そのバランスの良さからドイツ国内のみならず、オランダ、オーストリア、スペイン、デンマーク、カナダ、トルコなど様々な国でも配備されており、近年ではドイツがウクライナに対して「レオパルト2 A6」の供与をしたことがまだ記憶に新しい。

 今回タミヤが展示したのは、この「レオパルト2 A6」を改修した、レオパルト2 A7のさらなる発展型である「レオパルト2 A7V(以下、A7V)」の最新仕様だ。A7Vは、車体前方に装甲を追加して防御力を高めると共に、車重増加に対応するために足まわりも強化されている。主砲はA6と同径の55口径120mm砲ながら、新型砲弾により最大で5,000m先の目標との交戦が可能となっており、加えて視界不良時でも戦闘能力を確保できるように運転支援システムの導入や、履帯の改良、砲塔後部への空調装置追加など、数々の改修が行われている。

1/35ミリタリーミニチュアシリーズ「ドイツ連邦軍主力戦車 レオパルト2 A7V」

 A7V自体の配備は2021年9月から順次行われていることもあり、多くのプラモメーカーから同モデルのキットが登場している。だが、今回タミヤから登場したA7Vは一味違う。今回のキットはタミヤが実際にドイツ連邦基地で取材を行い、現地で使用されているA7Vの最新仕様を確認して再現したものとなっている。そのため、車体各部に設置されている装備類はもちろん、搭乗員が身につけている装備も現在のものへとバージョンアップされている。

 今回はタミヤのスタッフにA7VのキットがA6からどのように変化しているのかを聞くことができたので紹介する。

(左)A6(右)A7V

金型をすべて新規に作成した新たなレオパルト2

 上記で述べた通り、「1/35 ドイツ連邦軍主力戦車 レオパルト2 A7V」はタミヤがドイツ連邦基地で実際に実機を取材して、可能な限り最新仕様の特徴を再現したキットとなっている。

 A7Vでは多くの箇所が改修されていることから、すべてのランナーが新金型で作成されている。実際にA6とA7Vのキットを並べてみるとその違いは明白だ。

(左)A6(右)A7V

 特に目立つのは砲塔部分の改修だろう。A7Vでは新たに空調設備が追加されたことで、砲塔後部の形状が変わっている。それに伴い、物を収納するためのケース類の多くが移動しているのがわかる。また、砲塔側面には空間装甲を兼ねたメッシュ状の収納バスケットなども取り付けられており、防御面の強化がはかられている。

砲塔後部に新たに設置された空調設備

砲塔下部にもしっかりと空調設備用のファンが追加されている

砲塔後部に設置された細長い筒はアンテナを収納するためのもの

砲塔両側面には空間装甲の役割も兼ねたバラクーダカモフラージュネットを収納するためのバスケットが設置されている

(上)A6では2列で配置されていたスモークディチャージャーが、(下)A7Vでは1列で配置されるようになっている

 逆に車体部分は細かな部分が数多く変更されており、一見しただけでは見えないところまでしっかりと再現された作りになっている。

車体前面に取り付けられた増加装甲

車体下部前方の搭乗員区画に取り付けられた地雷防御モジュール

砲塔を回転させるとA7Vから新たに取り付けられた車体空調設備のファンが見えるようになっている

 今回話を聞いてて特にタミヤの拘りを感じたのが車体の足回り部分だ。キットとしての大きな変更点もここにある。A6のキットではベルト式のゴム製履帯が採用されていたのだが、今回のA7Vでは分割式のプラスチック履帯へと変更されている。変更した理由をスタッフに尋ねたところ、ゴム式履帯では一定の厚みまでしか出すことができないからだそうだ。本キットでは履帯の厚みをより実機へと近づけるために素材をプラスチックに変更し、直線部分は上下2分割、曲線部分は一コマずつ連結する方式にすることで履帯の厚みを再現している。

2つのパーツを組み合わせることで履帯の厚みを再現している

(上)A6のゴム履帯と並べると、(下)A7のプラ履帯の方がわずかながら厚みが増しているのがわかる

 上記以外にもA7Vでは多くの改修が加えられている。その数の多さからむしろどこか変わっていないのかを探す方が大変なほどだ。これには金型をすべて新規で製作する必要があったということにも納得してしまう。

A7Vでは足回りを全体的に強化したこともあって、キットの方もよく見ると駆動輪の形状などが変更されている

A6までは丸型だったヘッドライトがA7Vでは四角型のライトへと変更されている

車体後部エンジングリル上面のメッシュがA7Vではエッチングパーツでの再現に変更されている

A6ではモールドで驚くほど繊細に再現されているこのメッシュだが、金型のメンテナンスがかなり大変らしい

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可能な限り実機の最新仕様を再現した圧倒的な情報量

 実際にA6のキットと比較するとA7Vではキットに施された情報量の多さに驚かされる。砲塔部分をパッと見ただけでもその差は歴然だ。

A6は戦車自体の形状を楽しめるスッキリとしたフォルム、A7Vは装備品などが装着されていることで、より実戦配備の状態を感じられるようになっている

 実際に配備されている実機を取材して再現していることもあって、本キットは装備品の再現度が凄まじいと言わざるを得ない。車長用ポータブルディスプレイ、個人携帯火器収納ケース、防水シートなど数多くの装備品だけでなく、さらには搭乗員までもが現在の実機とマッチするようになっている。

車長側のハッチにはポータブルディスプレイを設置可能

ディスプレイの画面やボタン類などはデカールで再現されている

キューポラ正面には個人携帯火器収納ケースが設置されている

砲塔後部には防水シートや雑具箱が設置されている

(下)A6ではクッション系のヘルメットだった部分が(上)A7Vではケプラー素材の最新のヘルメットに変更されている

細部のディテールまで拘りたい方用のメタル砲身も同時に発売予定

 本キット発売時には「1/35 ドイツ連邦軍主力戦車 レオパルト2 A7V メタル砲身」1,980円(税込)の発売も予定されている。この砲身はアルミ切削製の高い質感に加えて、パーティングラインなどの処理が必要なく、高い真円度によってレオパルト2A7Vの完成度と精密感をいっそう高めることができるアイテムだ。実際にプラスチックのものと比較すると、細部のシャープさの違いがわかる。また、細部のモールドについてもメタル砲身の方がしっかりと表現されている。

よく見ないとわからないレベルではあるが、プラスチック砲身の方は本来点であるはずのモールドが一部変形しているのがわかる。これが気になる人はメタル砲身を使用するのがオススメだ

 実際のキットを見ながら直接タミヤのスタッフと会話できるのはホビーショーの大きな魅力の一つだ。これのおかげで、自分では知ることができなかったA7Vの様々な改修点や、タミヤが本キットの設計にかけた拘りや工夫の数々を知ることができた。あまりの数に今回すべての改修点を紹介することができなかったが、ホビーショーにこられる方はぜひ自分の目で確かめつつ、タミヤのスタッフと会話してみてほしい。きっと楽しい時間を体験できるはずだ。

 1/35ミリタリーミニチュアシリーズ「ドイツ連邦軍主力戦車 レオパルト2 A7V」はタミヤの熱い想いと共に精密で迫力のあるディテール表現を楽しめるように再現された、まさにレオパルト2戦車プラモデルの決定版と言っても過言ではない製品だ。