【混沌帝龍 -終焉の使者-】
2003年4月24日 登場

 爆アドォォォ!アドえもんです!筆者は普段YouTubeにて遊戯王を中心にカードゲーム動画を投稿している愉快でうるさいオジサンだ。

 今回も超長い歴史を持つ「遊戯王」カードの中で特に名高い連中をそのカードが生まれた日に合わせて紹介する企画「宇宙最強カード列伝」第9回をやっていこう!

 今でこそエラッタの影響で影を潜めてるが、長きに渡る禁止カード期間の中で「コイツがそのままで解除されたら遊戯王は終わる」と永遠に言われ続けたほど恐れられている存在である。21年前の今日、2003年4月24日に発売した「混沌を制す者」にて登場した「混沌帝龍 -終焉の使者-」(エラッタ前)が本日の主役カードになるぜ!

 今回のカードは正に「The best of 禁止カード」と読んでも良いレベルのカリスマ! 筆者的には禁止カードといえばコイツという印象がある一枚だ。

数多のデュエリストに恐怖を与えた存在。正直見た目はメッッッッチャ好き!

 あっ!!! 僕の遊戯王終わっちゃった!!!

 当時小学生だった筆者はこのカードを3枚所持している同級生のお金持ちや上級生のお兄ちゃん達に完膚なきまでにボコボコにされ、冗談抜きで本当に同じゲームをやっているのか疑問に思ってしまうほどのカードパワーに驚愕した記憶があった。

 そして大人になり当時の環境を調べれば調べるほど、あれが小学生の戯言ではなく、この時期の遊戯王OCGが本当に別ゲーになるレベルのインフレを起こしていた事や、コイツが“暗黒の第三期”と呼ばれるゆえんを生み出していた原因の1体である事を知ったのだ。

 今回はそんな生まれた時代もパワーも間違え、その名の通り遊戯王にマジで一時の“終焉”をもたらした彼の生涯を振り返っていこうと思う。

何もかもがバグっているパワー! 現代カードでも超えられない最強のリセット能力がなぜ21年前に……?

 事前に伝えておくが今回の最強列伝は今までよりも圧倒的に短い事が予見される。なぜなら今まで紹介した他のカード達の場合は禁止に至る経緯や理由に様々なメタゲーム的背景や他のカードと組み合わせた極悪コンボ等が紐づいている事がほとんどだったが、コイツに関しては“テキストに書いてあることがそのまま最強すぎた”事で禁止カードになったので掘り下げるられる事が非常に少ないのだ。

 そんな「混沌帝龍 -終焉の使者-(以下:カオスエンペラー)」のエラッタ前テキストをまず最初にチェックしていこう。

 現代では当たり前となった「カオス」系モンスターが持つ「墓地から光属性と闇属性を除外した場合に自身を特殊召喚する」効果に加えて、固有の能力として1000LPを支払うとお互いのフィールドと手札を全て墓地に送り、墓地に送ったカードの数×300ダメージを与えるという効果を持っている。非常にシンプルでわかりやすい。

エラッタ前の詳細なテキストがこちら

 現代基準で見ても色々とおかしい事が書いてあるが、とりあえず1つずつ紐解いていく。

 まず現代なら「カオス」系モンスターの多くが所持している特殊召喚効果だが、どう考えても2003年には生まれてはいけないテキストとなっている。この時代の遊戯王は現代のような最強展開をぶつけ合うゲーム性ではなく、1枚1枚のカードで細かくアドバンテージを稼いでいくスローテンポのゲーム性だったのだ。特殊召喚ができるカードもほとんど存在せず、上級モンスターはしっかり生贄召喚(アドバンス召喚)で出していて、「死者蘇生」が展開の頭数をバグらせる激ヤバカードだった位なので、現代のようなモンスターを1ターンに何度も出すという概念がほぼ無かった時代なのである。

 そんな中で突然生まれた激ユルの特殊召喚効果。しかも打点が当時では最高峰である3000。もう意味わかんないレベルの強さだった。

 このカードが生まれる直前のメタゲームがどんなパワーラインだったかを知ればコイツの異常性も強く感じ取れると思うので一例を紹介するが、「ブレイドナイト」が最強の下級モンスターとして数多のデュエリストの必需品となっていたり、「ピラミッド・タートル」から「ヴァンパイア・ロード」が特殊召喚されるだけで状況が覆される……それ位のパワーで争っていた時代である。

 そんな中で突如簡単に繰り出される攻撃力3000の化け物……これが如何に異様な存在だったかは理解していただけるのでは無いだろうか。

当時としては打点が2000になるだけで十分最強。それでいてリバース効果を打ち消せるというオマケ効果が数多のデッキの機能を封じていた。

下級モンスターから上級モンスターへアクセスできるというだけで強力だったセット

中でも「ヴァンパイアロード」は蘇生効果があった事で場持ちも良く使い勝手が良かった印象だ

 当時のパワーで考えれば2の効果が無くても有象無象を粉々にできるのだが、このカードの真髄はリセット能力にある。

 現代カードでも二度と生まれてくることは無いであろう「手札すらも全て破壊し尽くす」効果は1枚1枚アドバンテージを稼ぎあう当時のゲーム性の根本を全て否定するような最強最悪効果だったと言える。どんなに頑張って有利状況を生み出しても相手のトップからコイツが飛んでくれば全て水の泡なのが最高にイカレていたのだ。

 現代基準で考えればギリギリ墓地リソースで何とかなるかもしれないが、当時墓地リソースをしっかり活用して戦えるのがコイツを含めた「カオス」連中しか居なかったという最高に皮肉の効いた状態だったので、「カオス」に抗えるのは「カオス」だけという最悪な環境を生み出す結果となった。

効果使用後のトップ勝負でも、当時同期の「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」を一緒に3枚投入できた「カオス」側が圧倒的に有利なのがヤバい

 このリセット効果については当時ならではの強みが2つ存在している。

 1つ目は当時の「優先権」ルールの恩恵だ。当時は起動効果であってもモンスターを場に着地した瞬間に何故か“出した側に”優先権が発生するルールだったため、速攻魔法や罠で対応する前に起動効果を発動できたのである。つまりは特殊召喚自体を否定できるカウンター罠でも無い限り、「カオスエンペラー」のリセット効果は確実に通ってしまうのだ。

 罠カードも活用した盤面リソースが超重要な時代だったのにも関わらず、どうやっても全リセット効果だけは大体通ってしまうので、多くのデッキがこのカードに否定しつくされたのだ。

この優先権のルールに関しては時代がかなり先のシンクロ期まで引き継がれることになる。「ダーク・グレファー」や「氷結界の龍 ブリューナク」が何故か着地した瞬間に効果を発動していたのが懐かしい

 2つ目は同じく最強カードの1枚「八汰烏」を組み合わせた史上最凶コンボができた事だ。これは「クリッター」等を場に用意した状態で「カオスエンペラー」のリセット効果を発動し、全破壊に巻き込まれた「クリッター」の効果でデッキから「八汰烏」をサーチして攻撃を加えれば手札も場も0枚の状態で相手に対しドローロックが行なえるというモノである。当時を知らないデュエリストでもやってる事のヤバさから認知しているプレーヤーも多いだろう。

 コンボに必要なカードが3種類だけかつ、どれも多くのデッキで採用できるカードであり、「カオスエンペラー」は簡単に特殊召喚できるためスタートがウルトラ簡単という3拍子が揃ったことで瞬く間にこのギミックを採用したデッキが流行することになった。一応対策として自分も「クリッター」などのモンスターを場に用意しておく等で抗う事はできるが、コンボのお手軽さと使われるカードの単体スペックの高さで別にこのコンボをしなくても普通に「カオスデッキ」が最強であり、前述した優先権の有利を上手く使った上で不意に飛んでくるこのコンボがヤバかったのだ。何度も言うが「ブレイドナイト」や「ピラミッドタートル」で戦ってた時代にコレをしてるんだぜ……?

「八汰烏」は当時隙を見つけては相手を詰ませるカードとして非常に強力だったが、「カオスエンペラー」とコンボまでし始めたのは流石にマズかった

「クリッター」もとりあえず入れておけば安牌みたいな立ち位置だったので、デッキにとって無駄なカードが1枚も入らないで発生するコンボだったのが凄い

 こんな脱法コンボが許されるわけもなく、「カオスエンペラー」は登場からわずか2カ月後のリミットレギュレーションで爆速の制限カード入りを果たす。

 デッキに3積みできなくなったことで流石にコンボの安定感が削がれ、「八汰烏」が風属性だったことで「カオスエンペラー」と元々そこまで相性が良くなかった事から“このコンボを主軸に置いた”デッキは数を減らすことになる。だが……本当に最悪なのは実はここからだったりするのが恐ろしいところ。

 何度か言っているが当時の「カオスエンペラー」は別にこんなコンボをしなくても十分すぎる程スペックオバケなのである。つまり「光/闇を主軸としたデッキ」にこのカードを雑にぶっこんだデッキが最強デッキだったのだ。現代のように「テーマデッキ」が活躍するのではなく、強いカードを集めた「ハイビート」のような構築が主流の時代だったため、デッキのモンスターを光属性と闇属性に固めた構築が流行し、単純なカードパワーの暴力だけで環境を染め上げてしまったのである。

 この時代は「カオス」を入れたデッキが圧倒的「Tire1」で、「カオスを入れるか入れないか」だけがデッキの区別点になるレベルの魔境となってしまった。

「ブレイドナイト」の他にも「魔導戦士ブレイカー」などの高スペック下級モンスターが軒並み闇か光属性だったのでコストには困らない状態

「カオス」モンスターを投入しない「ハイビート」は「怒れる猿人」や「お注射天使リリー」などの別属性の高スペックモンスターを投入することで差別化を図ったが、「カオス」の圧倒的パワーには追いついて無かった印象だ……

 そして激動の2003年はこの「カオス」を圧倒的最強デッキにするかのように、激ヤバカードがさらに多数生まれていくことになる。

 「カオス」系統のデッキで使用すれば当たろうが外れようが撃てさえすれば大体勝てる「第六感」、次弾となる「暗黒の侵略者」ではエーススペックの闇属性でシナジーもある「混沌の黒魔術師」の追加、同じパックに収録された最強盤面展開カード「次元融合」を「カオス」デッキがどんなデッキよりも上手く扱えたりなど、オーバーパワーで相性の良いカードが次々に登場する。

 これらの武器を余すことなく吸収していった「カオス」は変な無限コンボやワンキルギミックがあるわけでも無いのに、単純なカードパワーだけで他の追随を許さないレベルの圧倒的Tire1デッキになったのだ。この時の「カオス」の一強ぶりは歴史の長い数多の遊戯王の環境の中でもトップレベルで酷かったと言うプレーヤーも少なくない。(この後のまともにバトルすらしない時期の方が酷いと語る者も多いがそれは別の話……)

それぞれが最強カード列伝で紹介できるほどの化け物カードである2枚。墓地と除外を利用できるカオスはこの時期にあるまじきレベルでこの2つを使いこなせたのだ

というか改めて思うが、この時期のカード禁止カードまみれや……

この「カオス」一強時代に輝いたのが我らが「霊滅術師 カイクウ」! 墓地リソースを枯らせるだけでなく、相手の除外を封じる事でカオス系モンスターの着地を否定でき、さらに自身が闇属性な事でカオスモンスターの素材になれるため「カオス」デッキで非常に重宝された! ……あれ?

 圧倒的カードパワーの暴力で環境を荒らしまわった結果、同年2003年の10月のリミットレギュレーションにて「開闢の死者」デッキとしては「開闢の死者」、「混沌の黒魔術師」、「魔導サイエンティスト」が制限カードにぶち込まれたことで大きく弱体化。「カオス」デッキとしては流石に戦いづらくなったことで使用率も下がり、一時は過去に活躍していたデッキタイプが蘇って環境は活気づく事になるが……それも長くは続かなかった。

 この後環境としては遊戯王史において最も最悪最凶のデッキとして名高い「サイエンカタパ」が長きに渡り無法先行1キルを始めたり、少し時代が進むと「深淵の暗殺者」を用いた無限ドローでゲームを終わらせるなど、歴史の長い遊戯王の中でも暗黒期と名高い第3期らしい極悪デッキがいくつも登場。古の最強カードをぶん投げあう魔境が作られていくのだが……それはまた別の機会に掘り下げよう。

「サイエンカタパ」に関しては将来的に「魔導サイエンティスト」の回で詳しく紹介する予定だ

ひっそりと研究され続けてきた災厄デッキがこの時期に完成を迎えた……

この2枚を用いた無限コンボもヤバいといえばヤバいのだが、それよりも第三期はこれらのカードを使いながら1枚も禁止カードが無かった時代が存在しているのがマズすぎた

無限コンボと初期カードならではの暴力パワーの応酬はある意味この時期の特権かもしれない

 本記事の主役である「カオスエンペラー」は自身が主軸となっていたデッキを失うことにはなったが、そもそも単体スペックが化け物なので“それはそれとして”光と闇が絡むデッキでは最強のリセットマシーンとして活躍し続けていく事になり活躍の場には困らなかった。

 このような第三期の魔境を清算すべく行なわれた2004年以降のリミットレギュレーションでは遊戯王OCGとしては初となる「禁止カード」が施行されて環境はある程度整備されており、最初の制限改定ではギリギリ規制を許されていた「カオスエンペラー」だったが、2回目となる2004年9月のリミットレギュレーションにてついに禁止カードとして投獄される事となった。

 この時期は現代だと当たり前のように禁止カードに居座っているカードたちが軒並み初の規制を受けたタイミングであり、これらのカードを当然のようにぶん投げ合っていた第三期が如何にヤバい環境だったかがよくわかるような改定となっている。「カオスエンペラー」はその中でも第三期のパワーインフレの始まりとなったカードだったので、このカードの禁止化は1つの時代の終わりを表していたのを覚えている。(ぶっちゃけ筆者は全然悲しく無かったけど)

この時期の化け物カードバトルは現代とはまた違った面白さがあったことも事実。第三期の人気カード投票では「カオスエンペラー」や「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」がランクインしてる事からもわかる通り、歪な環境ではあったがその中でも派手な効果で確かな人気はあったのだ

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エラッタにより厳しすぎる制約がつき復活!現代だと使い道を探すのが楽しいカードに

 そんな「カオスエンペラー」は現代だとエラッタされて禁止解除されており、何なら3枚使用することすらも可能だ。

 とはいえエラッタ内容がかなり厳しく、自身に対する蘇生・帰還に制限がついたことに加え、手札・フィールドを殲滅する効果を“発動するターン”他の効果を発動できないといった誓約まで追加されている。ぶっちゃけこの効果で2003年に登場していたとしてもぶっ壊れ扱いだったと思うので、オリジナルが如何にイカれているかがよくわかる。

【エラッタ後テキスト】

自身に対する蘇生・帰還に制限がつき、墓地送り効果を使う場合、他の効果が発動できない誓約がつけられた

 現代遊戯王の基準で考えるとまったく動けなくなるデメリットが重すぎるため使い道を探すのが少し難しいが、少し考えてみるとやりようはいくらでもある感じだ。

 1つは優秀なステータス面を生かすというプランだ。ドラゴン族のレベル8というだけで現代では数多のサポートが存在しているが、その中でも「ドラゴン目覚めの旋律」に対応しているのは大きなポイントだろう。「ブルーアイズ」デッキなどで一緒にサーチを行なえば、特殊召喚条件も比較的緩いため打点として追加したりエクシーズ召喚の素材に絡めたりなど使い勝手は良い。特殊召喚できる高スペックモンスターとしての運用は現在でも十分可能だろう。

「ドラゴン目覚めの旋律」に対応するステータスの中でも特殊召喚が行ないやすいという点である程度は差別化はできる

同じくサーチ可能なリメイク後モンスターである「終焉龍 カオス・エンペラー」とも役割が異なることで差別化でき、オリジナル独自の利点は発揮しやすそうだ

 2の全ブッパ効果を活かすプランで考えると、“効果を発動できない”という部分に注目して扱えば面白いことは可能だ。この手のカードにしては珍しく特殊召喚は制限してこないので、あらかじめ墓地に必要なモンスターを用意しておけば「ヴィシャス=アストラウド」や「究極宝玉神 レインボー・ドラゴン オーバー・ドライブ」などのチェーンに乗らない特殊召喚が可能なEXモンスターと組み合わせてワンキルを狙うこともできるだろう。

 自身の特殊召喚が簡単な事もあって手札に来ても腐りづらいため、面白いコンボやリセットボタンとして手軽にデッキに組み込みやすそうなのもグッドだ。

準備は少し難しそうだが光/闇属性であればシナジーを作りやすい対応力の高さが「カオスエンペラー」の良いところ

条件を満たせばEXから簡単に出せるモンスターが増えた事で、ワンショットを狙う事は十分可能だろう

 そんなわけで今回はかつて禁止カードだった存在の中でもトップレベルでヤバかった「カオスエンペラー」について掘り下げてみた。

 正直現代でも昔のテキストのままだったら確実に禁止カードなオーバースペックな存在が、21年前に環境を荒らしていたって考えると恐ろしさが凄まじい。当時小学生だった筆者はまだトーナメントシーンでは戦ってなかったので被害は少なかったが、当時ガチ環境で戦っていたプレーヤーは一体どんな気持ちだったのだろうか……ぜひ知りたいところである。いや知らない方が良いか……?

 こんな感じで今後も(色んな意味で)ヤバすぎるカードの紹介記事を書いていく予定なので、その時はチェックしてくれると嬉しい!それではグッッッッ爆アドォォォ!!!