ある日、Workshipで案件を探していたら、聞きなれない言葉を目にして、思わず二度見してしまいました。

ハイパーカジュアルゲームの求人(Nobollel株式会社)

ハイパー……カジュアルゲーム???

まったくわかんないですが、めちゃめちゃ字面が強いですよね。いったいどんなゲームなのでしょう……。気になります。

そこで、Workship MAGAZINE編集部の権限を使って、Workshipにこの求人を出したNobollel株式会社にインタビューを行いました!

山内健

Nobollel株式会社のゲーム事業部でディレクターを務めている。ざっくりいうと「ハイパーカジュアルゲーム事業の責任者」。

聞き手:少年B

Workship MAGAZINE編集部員。「名無し厳禁」の時代、ポケモン金銀の攻略掲示板に書き込むために10秒で考えたハンドルネームで今も仕事をしているライター。Nintendo Switch OnlineにMOTHER2が追加されたことを喜んでいる。

ハイパーカジュアルゲームってどんなゲーム?

少年B:

はじめまして。Nobollelの求人を見て気になったのですが、ハイパーカジュアルゲームとはいったいどんなゲームなのですか?

山内:

ハイパーカジュアルゲームはスマホのアプリゲームなのですが、そのなかで大きく3つの定義があります。

ハイパーカジュアルゲームの3つの定義

山内:

まずひとつめは、遊ぶ「人」を選ばないこと。ハイパーカジュアルゲームは、国籍や年齢、性別、宗教などに関わらず、どのような人でも遊べる、シンプルなゲームを指します。

たとえばRPGだと、どうしても言語の問題がありますよね。言葉がわからなくても遊べるゲームが理想です。

少年B:

なるほど……。わたしもRPGは好きだけど、英語のRPGをやろうって気にはならないもんなぁ。

山内:

ふたつめは、遊ぶ「時間」を選ばないこと。いつでも手軽に、隙間時間に遊べるゲームです。RPGは、つい夢中になって、延々とプレイしてしまいませんか? そうなると「隙間時間で遊ぶ」のはむずかしいですよね。

少年B:

おおお、「大作はNG」ってことなんですね。最後のひとつは何ですか?

山内:

最後のひとつは、集客とマネタイズの方法が「広告だけ」ということです。家庭用のコンシューマーゲームですとゲーム機本体やソフトを購入するし、ゲーセンではプレイにお金が必要です。

アプリゲームでも、いわゆるソシャゲであればガチャを回したり、アイテムを購入するための課金要素があったりしますが、ハイパーカジュアルゲームは基本的に無料です。ただし、ビジネスモデルが広告なので、遊んでいると定期的に広告が出てきます。

ハイパーカジュアルゲームは収益化できるの?

少年B:

ゲーム業界のことを知らないわたしからすると、「それで収益が成り立つのか」と疑問なのですが、実際にはどうなんですか?

山内:

ハイパーカジュアルゲームで稼げる広告費が、集客にかかる広告費を上回れば成立します。

ただ、「サービスを無料で提供して、広告費で稼ぐ」というビジネスモデル自体は古くからあるものなんです。たとえばフリーペーパーやテレビなんかも、合間にかならずCMが差し込まれますよね。それをゲームという場に持ってきたのがハイパーカジュアルゲームだといえます。

少年B:

たしかに。WebメディアやYouTubeにも同じようなビジネスモデルがありますよね

山内:

ハイパーカジュアルゲームの唯一の課金要素は「広告を消すこと」なので、そういう意味でもYouTubeは近いかもしれませんね。

少年B:

ああー! YouTube Premiumとかもそうですね! 課金すると広告が消えるという!

(広告の後にも続きます)

世に出るのは数百分の1!? ハイパーカジュアルゲームが突破しなければならない2つの関門

少年B:

ちなみに、TwitterやYouTubeを見ていても、ハイパーカジュアルゲームと思わしき広告がたくさん出てきますよね。マネタイズも広告とのことですが、コストは回収できるんですか?

山内:

ハイパーカジュアルゲームは世界中で作られています。正確に数えたわけではないんですが、今や1日に100種類くらい出てるんじゃないですかね?

じつは、TwitterやYouTubeなどの広告に出てくるゲームは、超エリートなハイパーカジュアルゲームなんですよ。

少年B:

超エリートハイパーカジュアルゲーム??? わたしが幼稚園で作った班の名前が「おはなスーパーファイヤーグループ」だったんですが、似てますね。

山内:

いや冗談ではなくてマジな話です。すべてのハイパーカジュアルゲームは「CPIテスト」と呼ばれるテストにかけられるのですが、ほとんどのゲームはCPIテストを突破できずに終わります。

少年B:

ええっ、そんなに厳しいんですか!?

関門1. CPIテスト

山内:

はい。まず、ゲームの企画を考える段階で、Goが出るのがだいたい7案~8案にひとつ。そして実際に開発したうち、CPIテストに合格するのが10タイトル~20タイトルにひとつ、ぐらいの割合ですね。

少年B:

提案した企画のうち、通るのは70分の1〜160分の1……! そう考えるとヤバいですね。ちなみに、CPIとは何の略ですか?

山内:

CPIは「コスト・パー・インストール」です。ゲームをユーザーにインストールしてもらうために、どれぐらいの単価が必要かを調べることです。もちろん、お金をかけてたくさん広告を出せば遊んでもらえますが、それだとどんどん赤字になっちゃいますからね……。

少年B:

CPIテストはどのようにして行うんですか?

山内:

まず、「ゲームのなかのいちばん面白いところ」だけ制作していきます。たとえば、パズルゲームだと後半になると難易度が上がって、パズルの色や模様が増えたりしますが、そういうのは後回し。とりあえずかんたん・ふつう・ちょっとむずかしいの3ステージでみんなが「楽しく遊べる」ところまで作る感じです。

そしたら動画広告を作って、1タイトルあたり数万円程度の広告費をかけて、1週間くらい実際に広告を流します。そこで、実際にどれだけインストールしてもらったかを調べるんです。

少年B:

インストールのされやすさって正直、動画次第なところってありませんか?

山内:

そうですね、動画で楽しさが伝わらないとだめですし、場合によっては動画の見せ方を変えて、再度テストをすることもあります。

少年B:

SNSだと、簡単なパズルゲームをなぜか失敗する動画広告がめっちゃ出てきますよね。「そっちじゃねーよ!!!」って、ついツッコみたくなってしまうんですが。

山内:

それは、そっちのほうがCPIテストの結果がいいからですね。ハイパーカジュアルゲームの世界では「パズルは失敗する動画を作れ」ってのが定石なんですよ。

少年B:

そんな定石あるんだ!?

関門2. LTVテスト

少年B:

お金のことが気になるので聞いちゃいますが、CPIテスト中も収益が発生するんですよね? 広告がついてるわけだから。

山内:

いえ、CPIテストの段階ではゲーム中の広告はつかないんです。あくまでテストで、売上を出すのが目的ではありませんから。

少年B:

えっ! ってことは、テスト中は利益が発生しないってことですか!?

山内:

そうなります。そしてCPIテストをクリアしたゲームは、次にLTVテストにかけられます。

少年B:

またテスト!? なんか学生時代を思い出してしまいますね。

山内:

LTVテストではゲームのなかに広告を追加してみて、それでも遊んでもらえるか?を調べます。

収益を得るためには、広告をたくさん見てもらう必要がありますよね。話をかんたんにするために、1人のユーザーを獲得するのに、100円の費用がかかったとしましょう。

少年B:

はい。

山内:

そして、ユーザーが広告を1回見るごとに、弊社に1円の収入が入るとする。ということは、60秒に1回広告を入れるなら、1ユーザーあたり平均100分(6,000秒)遊んでもらえれば、コストを回収できますよね。

▲広告収入が100円を超えると黒字、それ以下なら赤字になる。このモデルでは、100円を稼ぐためには、100分遊んでもらう必要がある

山内:

広告費と収益がトントンでは事業として成り立ちませんので、もっと長い時間遊んでいただく必要があるわけです。そこで広告のバランスを考慮して、プラスになるかマイナスになってしまうかを判断するのがLTVテストです。

少年B:

実際には何秒くらいを目標にするんですか?

山内:

うーん……そうですね。弊社の場合だと、だいたい1つのゲームを2,000秒くらい遊んでもらえるように設計することが多いですかね。

そして、LTVテストを突破したら広告費を使って、世界中のさまざまなところで遊んでもらえるように、グローバル展開をしていきます。

少年B:

LTVテストを突破しなかったら?

山内:

その時点で終了です。ハイパーカジュアルゲームはグローバル展開が前提なので、日本でしか通用しないものは作らないんですよ。

少年B:

ひえぇ! めちゃめちゃ厳しいじゃないですか……!

山内:

とはいえ、LTVに関しては企画段階である程度設計しているので、そこまで厳しくはないんです。どんなに悪くても、2本〜3本に1本は突破する計算になると思います。

少年B:

なるほど……。しかし通算すると、1本のヒットを作る裏には、およそ140個〜480個の企画があるってことなんですね……!

▲確かに、表に出てくるのは「超エリートなハイパーカジュアルゲーム」だった

山内:

だから、SNSなどで何度も目にするゲームは超エリートなんですよ。ハイパーカジュアルゲームはいつでも世界中の誰でも遊べるゲームなので、1億ダウンロードされることだってあります。

もし世界中で遊んでもらえるヒット作が出れば、それまで投資した資金はぜんぶ回収して、それ以上に大きな利益が出るんですが、ヒットが出なければ全部赤字です。いわば、全打席ホームラン狙いみたいなビジネスモデルですね。

少年B:

大きな一発を当てるために、回数を重ねて試行錯誤するってことなんですね。1万回だめでへとへとになっても、1万1回目は何か変わるかもしれないと。

山内:

どっかで聞いたことのある言葉ですが、まぁそういうことです。

ちょっと待って、広告詐欺はない?

少年B:

数年前に、「スマホゲーの広告が内容とまったく違う、詐欺じゃないか!」って問題になったことがありますよね。広告だけで集客をすると聞くと、そのあたり大丈夫なの?って気持ちになっちゃうんですが。

山内:

ああ、ありましたね……。ただ、少なくとも弊社のハイパーカジュアルゲームに関しては、そういったことは起こらないと思っています。

少年B:

えっ、なぜですか?

山内:

先ほども言ったように、ハイパーカジュアルゲームではインストール単価を下げる必要がありますが、「何秒遊んでもらえるか」も大事になってきます。

なので、人間の本質的な楽しさを掘り下げる必要がある。「えっ、これ詐欺じゃん」って思ったユーザーは、すぐにゲームを辞めてしまいますよね。それでは、いくら広告費が安くなったといっても、結局そのコストを回収できないと思うんです。

少年B:

それは確かに……。じゃあ、どうして詐欺広告は横行したんだと思いますか?

▲「ゲーム 広告詐欺」で検索すると、批判が山ほど出てくる

山内:

それでコストを回収できるビジネスモデルができていたんじゃないでしょうか。課金がメインのゲームは、ハイパーカジュアルゲームに比べ、LTVが数十倍あるので、インストール後、多くのユーザーが離脱したとしてもLTVがCPIを上回り成立しているんだと思います。

少年B:

ううん、なるほど……。

山内:

あくまでも理屈としてはわかるんです。ただ、弊社としてはそれは正しい形だとは思いませんし、ちゃんと楽しいゲームを作って、魅力ある広告で集客していきたいと考えています。