ダイバーシティが日本で注目される理由

アメリカやヨーロッパにおいては宗教や人種などが多種多様であるため、ダイバーシティが重要視される理由はわかります。
しかし、単一民族国家であり、「空気を読む文化」が生まれるほど同質性の高い日本において、なぜダイバーシティが求められるようになったのでしょうか?
その背景には下記のようなものがあります。
- 少子高齢化による労働力不足
- 企業やビジネスのグローバル化
- 働き方の多様化
それでは1つずつ解説していきます。
少子高齢化による労働力不足
日本は少子高齢化が進んでおり、2045年には15歳未満人口は全体のおよそ11%に落ち込む一方で、65歳以上人口はおよそ37%になると予測されています。
また、15歳から64歳の生産年齢人口も2015年には全人口の60.8%を占めていましたが、2045年には52.5%になり、その後も減り続けるでしょう。
このように、日本では企業が求める人材が減り続けることがほぼ確定しているため、多様な人材(女性や高齢者、外国人労働者)を活用しなければなりません。したがって、日本は急いでダイバーシティを推し進めているのです。
(参考:少子高齢化はどれくらい進むの?丨公益財団法人 生命保険文化センター)
企業やビジネスのグローバル化
現代は企業やビジネスのグローバル化が進んでいることも、ダイバーシティが注目される理由です。人口が減り続ける日本市場は縮小するため、海外でビジネスを展開しなければ生き残れない時代に突入しようとしています。
実際に日本企業がさまざまな国に進出してグローバル化が進んでいますが、海外でビジネスをするには現地の人材を活用しなければなりません。このためにも企業は受け入れ体制を整えて、国籍や人種を問わず優れた人材の確保が求められているのです。
働き方の多様化
従来であれば、一度入れば定年退職まで勤め上げる「終身雇用制度」や、「年功序列制度」が当たり前でしたが、近年ではこのような日本的雇用慣行が崩壊しつつあります。
特に若者は、
- 自身の成長につながるなら転職もいとわない
- 自身の価値観に合わせて働けるようにフリーランスで働きたい
- 仕事と家庭の両立のためにパート勤務を希望する
といった、働き方に関する価値観が大きく変わっています。人手不足が深刻化しているからこそ、企業はこうした労働者の多様な働き方を認めて、人材を確保していかなければなりません。
(広告の後にも続きます)
日本におけるダイバーシティの取り組み

日本は国としても省庁が連携し「ダイバーシティ経営」を推し進めており、下記のような取り組みを行っています。
- 女性活躍推進法の改正(厚生労働省)
- 女性を含む多様な人材の確保(経済産業省)
それでは1つずつ解説していきます。
女性活躍推進法の改正(厚生労働省)
2019年5月29日、女性活躍推進法の一部を改正する法律が成立しました。
そもそも「女性活躍推進法」とは、働く女性の活躍を後押しする法律として成立したものです。この法律では、国や自治体、企業などの事業主に対して、女性の活躍状況の把握や課題分析、行動計画の策定・公表をすることが求められています。
従来であれば300人以下の事業主の場合は「努力義務」でしたが、改正されたことによって「義務化」が101人以上の事業主に拡大されました。また、301人以上の従業員がいる事業主は、情報公開の枠をさらに広げることが求められます。
こうした女性の活躍を推し進める企業には「えるぼし認定」がされていましたが、さらに高い水準をクリアしている企業には特例認定制度の「プラチナえるぼし(仮称)認定」が付与されることとなりました。
(参考:女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)丨厚生労働省)
女性を含む多様な人材の確保(経済産業省)
経済産業省は少子高齢化のなかで人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高める「ダイバーシティ経営」を推し進めるために、女性をはじめとする多様な人材の活躍が不可欠としています。
それを推し進めるためにも、経済産業省では、企業の経営戦略としてダイバーシティ経営を広めることを目的として、下記のような取り組みを行っています。
取り組み | 内容 |
新・ダイバーシティ経営企業100選 | ダイバーシティ推進を経営成果に結びつけている企業を選定して表彰する |
「なでしこ銘柄」の選定・発表 | 優良な女性活躍推進をおこなう上場企業を選定して発表する。 |
幹部候補の女性を対象とする「リーダー育成事業」の推進 | 「ダイバーシティ2.0」検討会の提言を取りまとめた「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」の策定。 |
ダイバーシティ2.0とは
経済産業省が提唱している「ダイバーシティ2.0」とは、ダイバーシティの新たな方向性を示すものです。多様な人材を活かし、それぞれの特性を発揮することで、中長期的に企業価値を生み出し続ける経営上の取り組みを指しています。
また、経済産業省からは、ダイバーシティ経営を実践するためのガイドラインである「ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン」が公開されています。
<<あわせて読みたい>>

2021/12/16市場の多様なニーズに対応する力「ダイバーシティ」の重要性を徹底解説!