6月から始める定額減税。仕組みや経緯をおさらいします

日経新聞を読んでいないとしても、「定額減税」というキーワードを耳にしたことがあると思います。減税、すなわち税の負担が軽くなる政策です。どれくらい安くなるのか、どんなウラがあるのか、今回は定額減税についてみていきたいと思います。

画像=PIXTA

6月から始まる定額減税とは、1人当たり所得税3万円と住民税1万円、合計4万円の税の負担を軽くするというものです。つまり一言で言うと、税の負担が軽くなります。どれくらい軽くなるかというと、あなただけでなく、扶養家族も頭数に入れて計算します。例えば、納税者と配偶者、子供1人の3人家族で12万円、納税者と配偶と子供3人の5人家族ならば15万円が減税されます。

納税できる額が少ない人に対しては、減税しきれない部分は1万円単位で切り上げて給付することになります。非課税世帯の人は定額減税の対象にはなりませんが、代わりに1世帯7万円が給付されます。

今回、政府は給与明細に所得税減税額を記載することを義務付けました。給与明細に、定額減税の金額が示されることになるそうです。これは「みんなが減税を実感しやすいように、ちゃんと給与明細に書いてね」ということのようです。

こんな面倒なことを企業に求めるのは、一つにはこの政策が岸田政権肝入りの目玉政策であり、気合を入れて国民にアピールする意図があるためしょう。物価の上昇が続く中で、国民の生活費の負担は上がり続けています。一方で、期待される賃上げは思うように進んでいません。

物価が高くて大変ですよね、生活を支援します、というのが今回の定額減税。そのため、物価高の影響が比較的低いということで年収2,000万円超の人は対象になっていません。こうした減税策の背景にあるのは、まだまだデフレから脱却できていないという認識があるためです。昨年11月、岸田文雄首相は会見で「今回のチャンスを逃せばデフレ脱却が難しくなります」として、可処分所得を伸ばし、消費拡大につなげ、好循環を実現するために、減税による生活支援と賃上げを促す政策をセットで行うと話していました。

パー券問題で自民党への不信感が高まる中、目玉政策として政権が打ち出した定額減税。とてもわかりやすい選挙対策です。ただ問題は、物価の上昇に加えて賃金の上昇を実現して、経済成長へとつなげていけるかです。日本が世界の中で、物価安・賃金安の国になっていることは、昨今の円安を背景にした外国人旅行客の急増を見ても肌で感じる部分がありますよね。日本は物価が安くて賃金も安いので、観光の先としてちょうど良いわけです。これって日本人が新興国に旅行に行く時と同じようなテンションです。日本はそれだけ「安い」国になった。ここから抜け出さなければ、若者は海外に出稼ぎに行くことになるでしょう。つまり、この減税を単なる人気取りの政策にするのではなく、次の成長のステップへとつなげられるのかを有権者はよくよくチェックする必要があります。

もう一つ、別の側面からの問題もあります。今回の定額減税は、税収が増えたのでその一部を国民に還元するという建て付けになっています。確かに、国の税収は3年連続で過去最高を更新中で、税収自体は増えています。実際のところは消費税増税による影響でそこまで増税の効果はないなど色々議論はありますが、重要なことは、税収増も大事だけれど、借金の返済も大事だということ。

日本の国債の残高は約1,100兆円で、毎年の支払い(歳出)の4分の1くらいを国債の借金返済に充てています。さて、借入が多い場合、金利上昇がどのような影響をもたらすか、不動産業の皆さんはよくご存知ですよね。日本は借金が多いために、金利の上昇にとても弱いという弱点があります。ということは、税収を増やして借金を減らしていき、財政の健全化を目指すことが必須になります。バラマキは選挙対策のその場しのぎにしかなりません。

もっとも、理屈の上では、インフレになると現金の価値が下がり、借金をしている人は得をします。つまり、物価が上がっていけば、借金の多い国にとっては負担が軽くなるわけです。こうした議論を始めるとい色々と堂々巡りになるわけですが、私は借金の比率を減らしていくことが王道だと思っています。