半導体の熱問題を解決できる技術、東大が開発

 東京大学の研究グループは9日、半導体シリコンの熱放射を倍増させる技術を開発した。

 高性能半導体デバイスにおいては、局所的な発熱により性能や信頼性が低下してしまうことが問題となっている。しかし研究グループでは、シリコン膜の表面をわずかに酸化させるだけで、プランクの熱放射則で決まるとされていた熱放射を倍増させることに成功した。これにより、発熱問題解消に期待がかかる。

 熱の伝わり方には伝導、対流、放射の3種類があるが、誘電体薄膜においては「表面フォノンポラリトン」が4つ目の伝わり方としてあることが知られている。表面フォノンポラリトンは、薄膜の面内方向に熱を放射するため、放射波長より薄い薄膜からの面内方向の輻射熱は黒体輻射限界を上回る。しかし単一薄膜では形状の維持が困難だった。

 今回の研究ではまず、厚さ10μmの被誘電体であるシリコンの表面を30nmだけ酸化し、そこに表面フォノンポラリトンを発生させることができる誘電体を形成。そしてこの多層膜の端からの熱放射の強さを測定するために、2つの構造を10.7μmのギャップを有して対向する構造を作製した。

 そして、それぞれの表面上に金属線を形成し、片方をジュール熱により加熱されるヒーター、もう片方を電気抵抗の温度依存性を利用した温度センサーとして作製。温度センサーで測定することで、2つの3層構造間における輻射熱輸送を評価した。

 この結果、シリコンだけで計測すると、温度上昇に伴い熱コンダクタンスが上昇したが、3層構造では2倍程度の大きな値となり、黒体輻射限界を上回る値が観測された。これはプランクの熱放射則では説明できないため、表面フォノンポラリトンが寄与したと考え、実験の数値をもとに理論的に計算を行なった結果、その効果が実証された。

 従来、誘電体膜を数十nmまで薄くしないとプランクの熱放射則を上回る熱輻射が得られないと考えられていたが、構造を設計して表面フォノンポラリトンをシリコンの導波モードと結合させることで、はるかに丈夫な構造で熱輻射を増強できることが明らかとなった。

 今回の研究結果を受け、半導体の熱管理、輻射ヒーター、宇宙空間での放熱などの応用が期待される。