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 米半導体エヌビディアの業績が絶好調だ。世界の半導体企業主要10社の23年7~9月期決算(企業によって6~8月期、8~10月期)は、車載向けが伸び悩んだのに加えてスマホ向けが不振だったことにより、前年同期比で17%の減少だから、全体が順調な訳ではない。半導体企業には分野別の得意・不得意や、需要を先読みという感性の違いが存在するから、個社別に観察すると全く違う景色が見えて来る。

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 現在の半導体需要は、生成AIの話題沸騰に引きずられて、AI(人工知能)に集中している。このため主要10社のうち、サムスン電子、SKハイニックス(以上韓国)、TSMC(台湾)、インテル、クアルコム、テキサス・インスツルメンツ、マイクロンテクノロジー(以上米国)、STマイクロ(スイス)は軒並み売上と損益の減少に見舞われた。

 売上と損益の増加を実現したのは、エヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイス(以上米国)の2社のみで、中でもエヌビディアの好調ぶりが突出して株価にも反映し、時価総額は180兆円を超える水準に到達した。

 この動向を人一倍、苦々しい思いで見つめているのが、ソフトバンクグループ(SBG)総帥の孫正義氏だろう。

 9月に米株式市場ナスダックにIPO(株式新規上場)を果たした英アームは、孫正義氏が大事に守ってきた虎の子の資産だ。SBGは16年に3兆円以上の資金を投じてアームを買収し、非上場企業として手元に留め、企業価値の向上を図ってきた。

 半導体の設計に強みを持つアームは、特にスマホのバッテリー効率が優れているとの定評があり、世界で90%超のシェアを誇っている。アームを手中に収めた当時の孫氏は、世の中の動きを見透す水晶玉を手中に収めたと喜びを語った。

 ようやくアームを手に入れた孫氏の気が変わったのは、4年後の20年だった。8月下旬にSBGの幹部が「アームがSBGを支える成長戦略を練っていたが、こんな素晴らしい条件なら売却の検討は当然だ」という趣旨の発言をしたと、伝えられた。SBGでこんな発言ができる「幹部」は自ずと絞られる。

 売却の予定先はエヌビディアで、最大400億ドル(約4兆2000億円)の現金と約6.7~8.1%(215億ドル分)のエヌビディア株が獲得できるというものだった。エヌビディアは自社株を買収原資の一部に充てることで、キャッシュの流失を抑える計算だったが、当時のレートで売却金額を計算すると、概ね6兆5000億円だったことになる。(続く)