世界シェア3割の主原料「ヨウ素」…ペロブスカイト太陽電池で生かすために必要なこと

次世代太陽電池の本命と目され、世界で研究開発が活発になっている「ペロブスカイト太陽電池」。日本では積水化学工業や東芝、パナソニックなどが事業化を目指すが、製品の競争力は完成品メーカーの技術力はもちろん、太陽電池を構成する素材の力も左右する。そうした素材を扱うメーカーは2035年に1兆円とも予測されるペロブスカイト太陽電池市場の事業機会をうかがう。ペロブスカイト太陽電池をめぐる素材の動向を追う。

「主原料の安定供給が見込める」―。ペロブスカイト太陽電池について日本の優位性を語るとき、発電層に用いるヨウ素はその筆頭に挙がる。日本の生産量は年1万トン程度。チリに次ぐ世界2位で、シェアは30%に上るからだ。メーカー別では伊勢化学工業が世界シェア15%、合同資源(千葉県長生村)は同7%、K&Oヨウ素(千葉県白子町)が5%を持つ(それぞれ自社調べ)。さらに埋蔵量は推計500万トンで世界トップ。そうした豊富な資源や、それらを扱う国内メーカーの存在は強みだ。一方、ヨウ素業界はその強みを生かすための体制整備の重要性を指摘する。

ヨウ素は地下500―2000mの地層からくみ上げた天然ガスかん水を原料に生産する。一般に、固体から液体を経ないで直接気体になる昇華しやすい特性を生かしたブローアウト法という方法で、天然ガスかん水に含まれるヨウ素を分離・析出する。特に、千葉県は国内最大級の天然ガス鉱床「南関東ガス田」が広がる一大産地。国内の80%を生産しており、メーカーの本社や工場が集積する。

ヨウ素はいろいろな特性を持ち、多様な製品で活躍している。X線を通さない性質を利用した「X線造影剤」や殺菌性を生かした「消毒剤」、反応性の高さを利用する「医薬品」などだ。また、ヨウ素原子は電子を53個も持つ大きな元素で、電子の結合が不安定なため、受け渡しがしやすい。ペロブスカイト太陽電池ではその特性が高い性能の実現に貢献する。

国産ヨウ素を利用する上では注意点もある。世界トップの埋蔵量を持つものの、増産は容易ではない。くみ上げるかん水の量を急激に増やすと、地盤沈下のリクスが増すからだ。このため、メーカー各社はリサイクル体制を整えている。生産量に占めるリサイクル率は年々高まっており、現在は数十%という。

ペロブスカイト太陽電池の発電層には、毒性のある鉛のヨウ化物を用いる。実用化時には鉛を適切に管理し、後に回収できる技術やスキームが不可欠になるが、ヨウ素循環の観点でもリサイクル体制は求められる。

一方、ペロブスカイト太陽電池の主原料としての脚光は、ヨウ素業界にとっても追い風だ。背景には業界の課題意識がある。ヨウ素は8割程度を原料のまま輸出し、欧米からはヨウ素を利用した高付加価値な医薬品などを輸入している。メーカー各社はそうした状況を改善し、高付加価値なヨウ素製品を直接供給したい考えを持つ。ペロブスカイト太陽電池用のヨウ化鉛の供給はその手段になる。

産官学が連携してヨウ素の高度利用を目指すヨウ素学会(千葉市稲毛区)の海宝龍夫副会長は「メーカーはヨウ素の特性を生かした高付加価値化を常に考えている。ペロブスカイト太陽電池はその市場になり得るため、(ヨウ化鉛の安定供給に向けて)各社がそれぞれ研究に取り組んでいる。今後は連携も必要だろう」と説明する。その上で「ペロブスカイト太陽電池の競争力を高める上で原料のサプライチェーン構築は重要。特にヨウ化鉛は毒性を持つため、大量製造する体制を整える際には配慮すべき部分が出てくる。そうした技術の確立や、設備投資に対して政府の支援があれば」と訴える。

また、「ヨウ化鉛の高純度化によりペロブスカイト太陽電池の性能向上に貢献できる余地がある。完成品メーカーなどからフィードバックを得ながら具体的な高純度化の方法を研究したい」と連携体制の構築も期待する。

資源豊富というヨウ素の強みをより生かす上で、リサイクル技術の確立や安定供給の体制整備などの推進はカギになりそうだ。