AI知識の壁なくす…楽天グループが社内風土を築く

楽天グループは2月、国内の本社に勤務する全社員を対象に人工知能(AI)の基礎を学ぶeラーニング研修を始めた。同社は2010年に英語の公用語化を宣言。ビジネス会話に支障のないレベルの英語力を社員に求めたことで日本語の枠を超えた社内コミュニケーションを加速し、国際化に対応できる社内風土を生み出した。AIでも同様の社内風土を築き、革新を生み出す。

「技術系人材とビジネス系人材の間の知識の壁をなくし、さらなるイノベーションを創出する組織風土を醸成することがAIナイゼーションの神髄だ」。楽天グループ採用育成部の日高達生ジェネラルマネージャー(GM)は、AI研修を始めた要因をこう説明する。

同社はAI化を意味する造語「AIナイゼーション」をテーマに掲げ、ビジネスのあらゆる面でAIを活用する取り組みを推進している。

具体的には、AIを駆使してマーケティングとオペレーション(業務手順)、電子商取引(EC)サイト「楽天市場」出店者の効率を20%引き上げる「トリプル20」プロジェクトを始めた。生成AI「チャットGPT」を手がける米オープンAIの協力を受け、営業や戦略策定、システム開発などを支援するAI基盤「楽天AI・フォー・ビジネス」の本格提供も控えている。

今回、自社開発したeラーニングプログラムはパソコン画面上に映し出された大規模言語モデル(LLM)などに関するクイズに正解しなかった場合、そのクイズの解答を理解するための学習ができる仕組み。正解数が多ければ早く終了し、最短30分間で完了する。

日高GMは「まず自分たちがやらねばという部分もあるが、別の角度から見ると組織変革の取り組みだ」と強調する。楽天グループの代表的な取り組みとなった英語の公用語化(イングリッシュナイゼーション)は、英語を話せる社員と話せない社員の知を掛け合わせられるようにしたことで、グローバルイノベーションカンパニーになるための変革を生み出した。

これに続く成功例を創出するべく、今後、グループ企業や海外法人を含む全社員約3万2000人もAIの基礎を学ぶeラーニングプログラム対象とする見込み。第2弾、第3弾のAI学習用eラーニング研修プログラムを作成する計画だ。全社レベルでAIに関する知識の差を減らすことにより、“AIナイゼーション”を起こす挑戦が始まった。(編集委員・水嶋真人)