食用油業界の今年の課題は、主要産地スペインのオリーブ不作による世界的なオリーブ油の価格高騰への対応と、業務用と家庭用の両面における販売量の回復だ。

大豆と菜種の原料価格はピーク時と比べると落ち着いているものの、為替の円安や各種コスト上昇などで、メーカー各社は引き続き、厳しいコスト負担を強いられている。適正価格販売に注力する中、一部カテゴリにおいて、「年明け以降は値下げ基調が強まっている」(製油メーカー)との指摘もある。今年度(24年4月~25年3月)上期の取り組みでは、業務用では外食ユーザーが抱える人手不足の課題に対応する商品の提案が引き続き進められ、家庭用では高騰するオリーブ油の代替としてブレンド油が流通サイドからも好評だ。

足元の環境を見ると、為替の円安基調が継続し、地政学的なリスクの顕在化、干ばつによる水位低下により、世界の海上輸送の要衝であるスエズ運河とパナマ運河が通峡規制されている状況だ。それによって、欧州からのオリーブ油と北米からの大豆の輸入の多くはアフリカ南端の喜望峰周りルートを余儀なくされ、航路日数の長期化もコスト増となっている。物流24年問題によって物流費の上昇に拍車がかかり、エネルギーコストも高止まりしたままだ。

そうした中、23年度(23年4月~24年3月)上期の業務用食用油市場を振り返ると、過度な価格競争に陥る局面は少なく、一定の相場水準が維持されたもようだ。ただ、一部のカテゴリでは、「年明け以降は値下げ基調が強まっている」、「行き過ぎた価格調整がなされており、業界全体として収益構造が厳しくなっている」などと指摘され、採算状況の悪化を受け、コスト状況次第では再度の値上げの必要性も示唆されている。

コロナ5類移行後の外食産業は、金額ベースで各業態ともに毎月前年を上回って推移しているが、居酒屋などは19年までの回復には至っていない。さらに、訪日外国人の増加や円安による高単価メニューへの消費意欲の旺盛さによる客単価上昇によるところが大きく、「客数はまだ19年の水準に回復していない」(製油メーカー)。人手不足の慢性化や物流24年問題による影響など、外食産業を取り巻く環境は依然深刻だと言える。

メーカー各社は、より一層ニーズが高まっている作業負担の低減や調理オペレーションの簡略化につながる長持ち油や炊飯油などの機能性油、調理油の提案を進めている。日清オイリオグループは支店営業の新規開拓をサポートする新部署を新たに設置した。J-オイルミルズはCFP認証取得の油を16品目に拡大し、量販店の総菜を中心に環境負荷の低減の提案をさらに進める。昭和産業は油種ポートフォリオを拡大した強みを生かし、炊飯油と機能性油の新製品を上市予定だ。

〈23年度の家庭用市場規模は1,800億円の大台維持、安定調達のリスクヘッジ必要〉

家庭用食用油の23年度の市場規模は、日清オイリオグループの推計で前年比0.5%増の1,815億円と微増での着地となった。一方で、物量は4.4%減の29万9,000tとなったもようだ。金額のカテゴリ別では、汎用油は4.9%減、付加価値油のうち、ごま油は3.5%増、オリーブ油は4.0%増となった。アマニ油やえごま油などのサプリ的オイル全体で7.9%減となったが、MCTオイルは39.4%増と大幅増となった。こめ油も10.1%増と2ケタ増で順調に拡大している。

ただ、最大カテゴリのオリーブ油の前年超えは、価格改定による単価上昇と、2月下旬から3月上旬に発表され、大きく報じられた大幅な価格改定の駆け込み需要が寄与したものだ。汎用油の平均価格も数次の価格改定前と比較すると高水準を維持しているものの、「じわじわ下落し始めている」(製油メーカー)。販売量とともに、22年度以降キープしている1,800億円の大台を維持、拡大に向けての取り組みが期待される。

折しも、最大カテゴリのオリーブ油は、23/24年クロップで世界の4割以上を生産しているスペインで降雨不足が続き、2年連続の大減産となる見込みだ。(次面に続く

「史上最高値を記録した22/23年クロップに引き続いて、極端な在庫不足や収穫の遅れ、長引く降雨不足からくる次年度への不安視などさまざまな要因が重なり、新穀が出回り始め価格が軟化する端境期(11月以降)を迎えても価格が再上昇し、見通しが立ちにくい状況が続いている」(製油メーカー)。

相場上昇の影響により、流通店頭では21年頃には6割程度を占めていた廉価な輸入品が23年度上期には45%程度にまで縮小したとされる。メーンブランドに需要が集中し、現地や輸送ルートなどサプライチェーンの混乱もあり、出荷調整や一部商品の休売も余儀なくされているようだ。

そういった中、代替となるキャノーラ油とのブレンド油のニーズが流通側からも高まっている。後発の昭和産業は差別化を図り、ヒマワリ油「オレインリッチ」とのブレンド油を投入する。

パナマ運河で通峡規制が発生した直後、各メーカーは通常のガルフ積み(ニューオリンズ港)に加えて、急遽PNW(太平洋岸北西部)を手当てした。「同エリアから積み出される大豆は傾向的に低油分、低窒素であることが多い。PNW積みと南米大豆、ガルフ積みを併用することで品質リスクを軽減することにつなげている」、「PNWの大豆は品質的には問題なく、ガルフ積みと比べて遜色なかった。ただ、PNW積み大豆は以前から低たん白と指摘されており、全てが今回の品質と同等とは限らない。今後、注視しつつデータを集めていく」、「ガルフ積みのものと比較し、たん白が低い。比較的たん白値の高いブラジル大豆の在庫を持っていない時期は使用しづらい。また、たん白が低いと油のコストにも影響する」と評価されている。

21/22年のカナダ産菜種大減産の際、豪州産菜種の輸入増での対応も記憶に新しい。地球温暖化は今後も続き、輸入原料に影響を及ぼす可能性は高く、安定調達のためのリスクヘッジが必要となってくるだろう。

〈大豆油糧日報2024年5月8日付〉