製造工程のCO2排出量削減、太平洋セメント・UBE三菱…セメント各社が脱炭素へ凝らす工夫

セメント各社がカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)に向けた取り組みを進めている。環境省によると、2022年度の産業部門別二酸化炭素(CO2)排出量のうち、セメント業界を含む窯業・土石製品は7・5%と鉄鋼、化学工業、機械に次いで4番目に多い。サプライチェーン(供給網)全体でみると、特にセメント製造工程からのCO2排出量が多い。いかに製造工程でCO2排出量を削減できるか、各社は工夫を凝らしている。(岡紗由美)

太平洋セメ CO2、e―メタンに転換

セメント製造工程から排出されるCO2は2種類に分かれる。主原料である石灰石の炭酸カルシウム(CaCO3)を焼成する過程でCO2を排出する原料由来が約6割を占め、残り約4割がセメント製造時に使う化石エネルギーや電力消費に伴うエネルギー由来だ。それぞれのCO2削減対策が必要となる。

原料由来のCO2排出量削減について、太平洋セメントはCO2を回収する技術を開発している。完全子会社の太平洋マテリアル(東京都北区)の小野田工場(山口県山陽小野田市)にCO2回収型仮焼炉の実証設備を建設し、24年度から実証試験を始めた。仮焼炉はロータリーキルン(回転式窯炉)の焼成効率を向上させるための予熱装置であるプレヒーター内に設置されている燃焼装置。仮焼炉から原料由来のCO2の大半が発生するため効率的な回収を目指す。

CO2回収型セメント製造設備(C2SPキルン)は、仮焼炉の燃焼用ガスを通常の空気から酸素に変えることで燃焼後の排ガスに含まれる窒素の量が減少する。太平洋セメント中央研究所の江里口玲副所長は「空気燃焼による排ガスのCO2濃度は20%以下だが、90%以上の高濃度CO2ガスを回収する想定だ」と話す。回収したCO2は水素と反応させて合成メタン(e―メタン)に転換し、セメント製造時の熱エネルギーとしての活用も検討していく。

実証試験では、酸素を燃焼させる条件やCO2を実際に回収できるかどうかを検証していく。同設備のメリットは「(既存のプレヒーターとロータリーキルンを活用したまま)仮焼炉の一部改造で導入できること」(同社)という。実証試験は25年までの予定で、30年までに完全子会社のデイ・シイ(川崎市川崎区)の川崎工場(同)で実機実証試験をする予定だ。

UBE三菱 焼成エネ、産廃で50%代替

一方、エネルギー由来のCO2排出は、セメントの中間製品であるクリンカーの製造に熱エネルギー源として主に石炭を使用することに起因する。1450度Cという高温で焼成するため多くの熱エネルギーが必要になる。UBE三菱セメントはセメント焼成用の熱エネルギーについて、石炭から廃プラスチックや下水汚泥など産業廃棄物の置き換え率向上を進めている。同社は熱エネルギー代替率50%の達成を掲げる。

同社で唯一、関東圏にある横瀬工場(埼玉県横瀬町)は、産業廃棄物などを集積しやすい立地を生かし、下水汚泥を全拠点の中で一番多く処理している。現在、熱エネルギーのうち約3割に下水汚泥や廃プラスチック、再生油、廃タイヤを利用している。「今後は廃プラスチックの破砕設備や圧送設備などを増強する」(同社)とし、処理能力向上を進めていく。

UBE三菱セメントの宇部セメント工場内にある廃プラスチック処理設備

また、同社は宇部セメント工場(山口県宇部市)でアンモニアを熱エネルギー源として使用する混焼試験に取り組む。アンモニアは燃焼時にCO2を排出しない。試験では混焼率の目標を30%に定め、段階的に上げながらエネルギー転換に関する課題抽出と対応策の具現化を行う。

島裕和フェロー兼地球環境対策プロジェクトリーダーは「シミュレーション技術を活用しながら、開発したバーナーの性能や設置場所を検証する」とした。

CO2固定化し活用、人工石灰石原料化で新技術

セメント各社はCO2の固定化にも取り組む。主にCO2をセメント系材料中のカルシウム(Ca)分と反応させ、炭酸カルシウムとしてセメント内に封じ込める炭酸塩化技術の開発が進められている。

カーボキャッチスラリー使用時と一般のコンクリートでのコンクリート配合比較

住友大阪セメントはカルシウムを含む廃棄物を活用した人工石灰石の活用を目指す。開発中の人工石灰石は廃コンクリートや一般焼却灰など、カルシウムを含有する廃棄物などから酸化カルシウム(CaO)を抽出し、セメント生産工程で分離されたCO2と再結合させることで生成する。生成した人工石灰石はセメント原料などに利用する。30年までに技術確立や社会実装を目指す方針だ。

一方、太平洋セメントは硬化前のコンクリートにCO2を効率よく固定化するシステム「カーボキャッチ」を開発した。CO2を満たした密閉容器内に、セメントと水を混ぜたセメントスラリーを循環。供給したCO2のうち、90%以上を炭酸カルシウムとして固定化する。

カーボキャッチで炭酸化したスラリーは、コンクリート配合時に水とセメントの一部に置き換えて使用する。中央研究所の江里口副所長は「回収したCO2の固定化とセメント使用量の減少によるCO2排出量削減を実現する」と話す。30年までに市場に一定量を普及させたい考えだ。