ヴィンテージやアンティークと呼ばれるアイテムは、現代のプロダクツでは味わうことができない雰囲気だけでなく、まだ技術が未熟だった時代のクラフト感やマシンメイドではない時代ならではの魅力、それに年月が生み出した風合いがある。いわゆるアンティークの世界では、いろいろなカテゴリーで価値基準がある程度確立されてはいるけれど、そんな世間のものさしではチョイスしないのがデザイナーの性分。新しいモノでも旧いモノでも、自分目線のものさしを大事にしているスティーブンソンオーバーオールのデザイナーである多賀谷さん。彼の古着やアンティークの選び方は、一般的な価値だけにとらわれることのない、その独特な審美眼も含めて参考になる。


多賀谷強守さん|機能服として生まれたヴィンテージのワークウエアやミリタリーウエアに、もしデザイナーが存在していたらという世界観をプロダクツに落とし込むStevenson Overall Co.のデザイナー。独特なセンスと縫製仕様にまでこだわりを持ったアイテムたちは、日本のみならず世界でも高い評価を受けている。http://www.soc-la.com

その個性的な選球眼は服だけでなく小物や家具にも投影される。

Vintage Jacket 

もはやいつ、どこで買ったのかも憶えていないが、古着で見つけたジャケット。このはっきりとした2色使いが私のなかでは今が旬。当時のアメリカ人がデザインまで考えて配色したわけではないだろうが、自分の作る服にもこういうバランス感覚を取り入れることができたらなあという野望をかき立ててくれる存在。目立つ必要がある職業のためのワークウエアなのか、カジュアルウエアなのかは不明。

Showa Era Remake Iron Leg Stool 

昭和時代の野球場で使われていた観客席をスツールへとリメイクした1脚。これは神戸に出張に行ったときに地元でふらった立ち寄った骨董品店で出会ったモノ。 全体のデザインというよりは、年代や、経年によって生まれた座面の色ツヤ感やヤレ感などに惹かれてしまうのはいつものこと。やはり気になって購入してしまった。現在も事務所で活躍してる。

1930s Mimo Wrist Watch

ヨーロッパのアンティークウォッチである。これはデイト付きの時計としては最初期のモデルで、通称「ビッグ・デイト」と呼ばれているMIMOの1930年代のモデル。サーモンピンクの文字盤やコンディションの良さに惹かれた。昔はピッグスキンのベルトが多かったので、そんな時代感に合わせてベルトも作ってもらっている。ちなみにMIMOは1950年代ごろまでGirard-Perregaux(ジラール・ペルゴ)の欧州市場向けブランドとして存在していた。手に入れたはいいけれど、普段はほとんど時計をしないので、コレクションのひとつになっている。