約120種の国産天然魚×味付けの組み合わせでSKUは約6000


フィシュルに使われる未利用魚

 魚の種類は約120種、すべて国内で水揚げされた天然物だ。例えば未利用魚の代表格ともいわれるアイゴは白身でクセのない味わい。ただし、海草を食べるために時間が経つと内蔵から独特の臭みを発する。新鮮なうちに処理してしまえば、おいしく食べられるが、背びれと腹びれに毒バリが付いていて、刺さると指が腫れてしまうという厄介さもある。

 イラ、マトウダイ、ニザダイ、ミノカサゴといった魚は、見た目が悪い、加工しづらいといった理由で未利用魚として扱われている。タカノハダイ、ミシマオコゼ、オジサンといった魚は、そもそもの水揚げ量が少ない。それで未利用魚となっている。

 未利用魚の加工・調理について、ベンナーズでは試行錯誤して独自のノウハウを編み出してきた。社員約50人のうち、製造に携わるのはおよそ30人。冷凍方法もさまざま技術を試して、マイナス30度で瞬間凍結させるアルコール冷凍がベストだという結論に至ったという。

 魚は加工の過程で骨がほぼ完全に取り除かれ、保存料などの添加物を使用しない。「生食できる状態のものしかお届けしておらず、品質には絶対の自信を持っています」と井口社長。

(広告の後にも続きます)

魚ブームを起こして食文化をリニューアルしたい

 ベンナーズの工場は福岡市にあり、そこで加工される商品は福岡、佐賀で水揚げされた魚が中心だが、青森から鹿児島まで10ヵ所に協力会社の工場があり、「フィシュル!」のノウハウで商品が加工されているという。「取り扱っているのは天然物の魚のみ。そのため水揚げされる魚種が偏ったり、不漁が続いたりする時期もあります。そういった時でも、いかに品質を保ちつつ、お客様の元にきちんと商品を届けていけるか。そこは永遠に向き合っていかなければならない課題だと考えています」と井口社長は話す。

 これからは商品開発をさらに強化していくことを考えているという。「例えば冷凍フライで、魚のうまみが凝縮された熟成魚シリーズなど、今までに販売されていないジャンルや形態の商品を作っていければ、販路もさらに広がると思います」と井口社長は意欲を見せる。

「フィシュル!」を契約すると、漁師などを紹介する情報冊子、魚を紹介した図鑑などが付録でもらえる。井口社長によると「毎月お客様にお送りしている手紙でも、魚をご紹介しています」と。23年9月には青山学院初等部で井口社長が食育の出張授業を行い、未利用魚の給食も提供された。食育の授業は今後、福岡の学校でも予定され、地元外食企業とコラボレーションしたイベントの開催も計画しているという。


ベンナーズ代表井口氏(左)と、パートナーである漁師の宮本氏(右)

「魚ブームを起こしたい」と井口社長。「魚ファンが全国的に増えることで、魚の相対的な価値が上がっていく。そうすれば漁師の人たちの稼ぎも良くなり、漁業を続けていける。そして未利用魚の活用がより進めば、人気のある特定の魚種の乱獲を抑えられ、水産資源の回復にもつながります」と。

 中長期的には海外市場も視野に入れているという。井口社長によると、水産業は世界全体で見ると成長産業。「世界では年5%伸びていて、東南アジアには年18%も成長している国もあります」と明かす。まさにブルーオーシャンだ。「フィシュル!」のビジネスモデルを川上から川下まで丸ごと海外に持ち込み、現地で水揚げされた魚を、その場で加工し、付加価値を付けた商品をつくって、現地で販売する計画を練っているそうだ。

 井口社長は「フィシュル!」の今後について「未利用魚というよりも、あくまでも、おいしい魚を提供するサービスとして認識してもらいたい」と話す。食べられる魚を増やす。魚を手軽に食べさせる。魚ブームを起こして、魚を食べる文化をリニューアルする。これからも続く「フィシュル!」のチャレンジは、フードロスを削減し、海の豊かさを守る、SDGsの持続可能な目標に貢献する取り組みとして参考になるだろう。