Z会幼児向けドリル編集者&監修者が語る「子どもに金融を教えるコツ」

学習指導要領の改訂により、小学校から高校の授業において、金融を取り扱う時間が増えた。その流れを受けて、家庭での金融教育を意識し始めているパパやママは多いのではないだろうか。そんな時に役に立つのが、書店で購入できる学習ドリル。

近年は、お金にまつわる幼児向けドリルも出てきている。そのひとつが、Z会編集部が発行している『Z会グレードアップドリル まなべる おかねとしゃかい』。シールやカードを使いながらお金について知るだけでなく、ICカード決済やお金と社会のつながり、仕事についても学べる内容になっている。

このドリルが制作された経緯や工夫について、Z会ソリューションズ開発部の堀水保さんと監修者の生活経済ジャーナリスト・あんびるえつこさんに聞いた。

幼児期から必要な「お金」と「社会」に関する学び

「『まなべる おかねとしゃかい』の初版は2020年3月に発行したのですが、当時はちょうど幼少期のお金の教育ブームが始まった時期でした。2020年度の小学校の指導要領改訂で金融教育が導入されるということで、その前段階からお金について知ろうという流れができたのだと思います。当社でもお金の学習は大事だと捉え、ドリルの制作が始まりました」(堀さん)

通信教育や塾を展開しているZ会は、国語や数学といった教科を教えているイメージが強いが、会社の理念に金融教育も合致したという。

「当社の教材に対する考え方のひとつに、教科の知識・技能を高めるだけでなく、大人になり社会に出るにあたって必要な自分で考える力、生きていく力の素地を伸ばしたいという想いもあります。そこを見直したときに、金融教育も大切だろうと考えました。お金を使ってどう生きていくのかといった学びが、幼児教育には浸透していなかったところもあるので、社会におけるお金の役割にも触れようと、あんびるさんにお声掛けしました」(堀さん)

あんびるさんはもともと新聞社で生活経済記事を担当し、金融について取材をしていた。退職して子育てをしているときに、お金と社会に関する学習は、子どもが幼児期に入って社会を知るようになった頃から始めるものだと感じ、「子供のお金教育を考える会」を立ちあげ、子ども向けの金融教育を開始したそう。

「子どもが幼かった頃、夫の仕事の関係で、我が家は経済的に大変でした。でも、子どもにとっての祖父母は豊かで、いわゆる“6ポケット”の環境にありました。ときに親から厳しくされ、ときに祖父母から甘やかされる環境のなかで、子どもがきちんとした金銭感覚を身に付けるのは難しいと感じ、金融教育に取り組むようになったんです」

あんびるさんが『まなべる おかねとしゃかい』を制作するにあたって意識したのは、さまざまな教科が混在していること。

「生活のなかには算数もあれば社会や道徳もあって、さまざまな教科がごっちゃになっていますよね。『まなべる おかねとしゃかい』も、お金の計算だけではなく、環境や仕事に関する内容も盛り込み、生活のなかからいろいろな教科を学べるように意識しました」

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学びを深めるポイントは「子どもに意思決定させること」

いざ幼児向けドリルの制作を開始すると、お金や社会について、いかに幼児にわかりやすく伝えるかというハードルが出てきたとのこと。

「数の計算だけでなく、買い物をするとおつりが発生することやお金を得るための仕事という方法など、目に見えないものを、幼児の少ない語彙のなかでいかに簡単に伝えるかが難しかったです。また、幼児の金融教育は学習指導要領などがないので、問題のレベルの設定にも時間がかかりましたし、算数的な設問と社会的な設問のバランスを取るのも大変でした」(堀さん)

幼児向けドリルはひらがな表記になるため、文章量も多くできず、全72ページという制約もあった。そのなかで、あんびるさんが心掛けたことが次の3つだという。

(1)得た知識を活用する力を養うこと

(2)子ども自身が意思決定する場面をつくること

(3)幼児の狭い社会でも理解できる内容にすること

「現代の子どもたちは、インターネットを通じてさまざまな情報にアクセスできるため、知識を得ることは簡単です。重要なのは、その知識を暮らしのなかで活用することなので、買い物や仕事に関する問題を入れ、知識を活用する力を養える内容にしています。2つ目に重視したのが、子どもに意思決定させること。買い物にしろ投資にしろ、選択する場面はたくさんありますよね。ただ問題を解くのではなく、子ども自身が意思決定する問題も用意しています」(あんびるさん)

子ども自身が意思決定する問題の例として、複数のおもちゃのなかから、100円以内で買うものを2つ選択するというものがある。

ほかにも、1000円を持って出かけ、お金の使い方を選んでいく問題もある。例えば、「駅までバスに乗る(100円)」「駅まで歩く(0円)」といった選択肢のどちらかを選んでいくことで、「バスに乗って100円使っちゃったから、おやつを食べられなかった」といったように、お金に限りがあることに気付ける。

「3つ目は、幼児の世界のなかで理解できることです。幼児が生きている社会は、家庭と園(幼稚園や保育園など)で構成されているような狭いものなので、そのなかでわかる範囲の内容にすることを心掛けました。堀さんたちとも何度も打ち合わせをして、ここまでなら理解できるだろうと考えていきました」(あんびるさん)

もうひとつ、現代の金融教育を意識して取り入れたのが、ICカード決済に関する問題だ。

「都市部の小学生は交通系ICカードを持つのが一般的で、そのICカードを使って友達に飲み物や食べ物をおごってしまうトラブルが発生していることを、さまざまな学校や家庭から聞きます。子どもたちは、数の概念を知る前に、ICカード決済を経験してしまうので、ICカードを使うとチャージしたお金が減るという“お金を使っている感覚”が育ちにくいんですよね。見えないものの理解は、見えるものと比べてだいぶ遅れて発達するので、まずはドリルで“見える化”して、数の概念とICカードの仕組みを知ってほしいと思います」(あんびるさん)