【日興AM】低コスト・低リスクで「米ドル投資」を実現するETFが登場!

2023年9月7日、東京証券取引所でアクティブETF(上場投資信託)の上場が解禁となった。その約1カ月後の10月5日、日興アセットマネジメントのETF「上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)(2093)」が上場された。

一般的にアクティブETFとは、指数に連動せず、運用会社やファンドマネージャーが運用方針に沿うように組み入れ銘柄や資産配分を決め、市場平均を上回るリターンを追求していくものを指すが、「上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)」は少し違う。指数に連動しないETFではあるが、ファンドマネージャーが適宜売買の判断を行うわけではなく、一定のルールに沿って運用する「ルールベース」を採用しているのだ。

従来のETFともアクティブETFとも異なる新たなETF「上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)」について、日興アセットマネジメントETF事業本部 ETFビジネス開発部 ETFビジネス開発グループ グループマネージャーの花村憲治さんに聞いた。

ETFをグローバルに展開する運用会社・日興アセット

――まずは、日興アセットマネジメントの特徴から伺えますか?

「運用会社としての特徴は、3つあります。1つ目は、伝統があること。1959年に前身となる日興證券投資信託委託を設立し、60年以上運用に携わってきた会社として、長く投資家の皆さんと一緒に歩みをともにしてきました。

2つ目は、運用資産総額が32兆円超と規模が大きいこと。ETFも日本では36銘柄上場していて、残高は17兆円強となっています。(2024年3月末時点)

3つ目は、グローバルであること。現在900人以上の社員が30以上の国や地域から集まっています。グローバルなビジネスに精通した者が経営や事業に携わっています」

――歴史が長く、規模も大きい日興アセットマネジメントから出されているETFは、ラインナップが充実していますよね。

「2001年に当社初のETF『上場インデックスファンド225(1330)』(日経平均株価に連動するETF)を上場してから、20年以上にわたってETFに携わってきました。純資産残高は大きくなっていますし、オーソドックスなETFは取り揃えたと自負しています。全36銘柄のうち10銘柄は日本株ですが、それ以外にもREIT(不動産投資信託)や外国株、外国債券に投資するETFも用意しています。

当社のETFの特徴的な部分は、アジア市場に上場する銘柄も扱っているところです。2005年からシンガポール取引所にETFを上場し、シンガポール市場ではシェアNo.1です。2019年からは香港取引所にもETFを上場しています。ETFにおいても、グローバルにビジネスを捉えられているところが強みだと考えています」

――グローバルな展開に強いというところで、2023年10月に上場されたアクティブETF「上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)」も、投資対象は米国国債ですよね。なぜ、米国国債に注目したのでしょう?

「投資家のニーズが見込まれたからです。短期の米国国債に投資する機関投資家は多いので、ETFを上場すれば残高が増え、流動性が増すという確信がありました。また、個人投資家のニーズもあると考えています。『上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)』は残存期間2年以下の米国国債に投資するものですが、短期の米国国債の価格上昇によって利益を得るというよりも米ドルに換金するようなイメージで使えます。

ETFには、株式と同じように市場で取引したいときに取引できるという特徴がありますし、『上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)』は信託報酬0.066%(税込)とコストも低くしているので、FX(外国為替証拠金取引)よりも手軽に米ドル投資ができると考えています」

――円安が続いているいま、円を米ドルに換えて備えておくという運用方法に関心が向いていますよね。

「まさに、その使い方ができるETFです。リスク分散の観点でも、資産の一部を米ドルに換えることは重要だと思います。例えば、1米ドル=100円のタイミングで円を米ドルに換え、1米ドル=150円になったら、米ドルに換えた資産は円貨から見ると1.5倍になるということです。

米国株のファンドを買うことで円を米ドルに換える方法もありますが、株式の価格変動は大きく、リスクも高くなります。一方、短期米国国債は価格変動が少ないので、円を米ドルに換える手法として使いやすいといえます」

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「短期の米国国債」に投資することで米ドル投資が実現しやすく

――米国国債に投資するETFはこれまでも上場されていましたが、「上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)」はどのような点が異なるのでしょうか?

「アクティブETFが解禁される前は、ベンチマーク(連動する指標)に沿わないETFは上場できませんでした。しかし、アクティブETF解禁によって、ベンチマークがないETFも上場できるようになったのです。

『上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)』は、指数に連動するETFではありません。残存期間2年以下の米国国債に投資し、債券の残存期間に応じて『6カ月以下』『6カ月超12カ月以下』『12カ月超18カ月以下』『18カ月超24カ月以下』の4つのグループに分け、25%ずつ保有するというルールでラダー型ポートフォリオでの運用を行っています」(※ラダー型ポートフォリオとは債券のポートフォリオ運用形式の一つで、償還期限の異なる債券を各期間にほぼ同額ずつ組込む方式の事。そのポートフォリオの形がはしご(ラダー)型になっているのが特徴。)

――指数に連動する従来のETFとは異なるものの、いわゆるアクティブETFとも違うものといえそうですね。

「おっしゃる通りです。私たちの想いとしては、アクティブETFのプラットフォームを使いながら、パッシブ運用(指標に則った運用)のルールに基づいて正確に運用し、ファンドマネージャーの判断による銘柄選択や積極的な売買などアクティブファンドで取るリスクを取らないETFとして整理したいと考えています」

――「上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)」で設定しているルールは、指数に則ると実現できなかったのでしょうか?

「『残存期間2年以下の米国国債を半年ごとに25%ずつ運用する』という条件で東証上場のETFとして使用できる指数はありませんでした。適当な指数がない場合は、指数算出業者にベンチマークを用意してもらうこともできるのですが、カスタムした指数をつくってもらうには手間もコストもかかるので、あまり効率的ではありません。アクティブETFのプラットフォームで実現できるのであれば、ベンチマークをつくる必要はないと考え、現在の形に至りました」

――新たに指数をつくった場合、そのコストは手数料として投資家に跳ね返ってきますが、そこを避けたということですね。

「はい、信託報酬0.066%(税込)での提供は難しくなると思います。債券投資をされる方の多くは、ある程度の利益を確実に達成したいと堅実に考えているので、コストの重要性はより高くなると思っています。そこも意識して、アクティブETFのプラットフォームを活用しました」

――信託報酬0.066%(税込)は、かなり魅力的ですよね。ところで、なぜ残存期間2年以内の米国国債に絞っているのでしょうか?

「米国国債の価格変動によって得られる可能性のある利益を大きくしたいのであれば、残存期間20~30年といった残存期間の比較的長い債券の方がいいと思います。しかし、今回目指したのは、シンプルに日本円を米ドルに換えられるETFでした。そう考えると、残存期間が短い債券のほうが金利の変動が少なく、債券価格の変動による利益は得にくいものの、米ドルの動きを追いやすい商品になります。

『上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)』と同じルールで値動きを追ったデータと米ドルの動きを過去3年分比較すると、それぞれの動きが0.5%以上乖離することはほとんどありませんでした。短期債券のみに絞ることで、シンプルに米ドルの動きを追うETFにできるのです」

――だから、米ドル投資につながるのですね。ちなみに、半年ごとに債券の残存期間を変えて25%ずつ保有するのは、なぜでしょう?

「すべての年限の債券を均等に保有することで、リスクを分散できるからです。例えば、残存期間2年の債券だけを持っていると、その債券のリスクに傾いてしまいますよね。とはいえ、年限を細かく分け過ぎると売買の頻度が増え、運用コストが増してしまうので、ちょうどいい塩梅として半年ごとに25%ずつという形に落ち着きました」