
ジュエリーブランド「4℃(ヨンドシー)」などを展開するエフ・ディ・シィ・プロダクツは、2022年3月にECサイトをリニューアルするとともに、コンテンツ強化の取り組みを加速している。ECサイトにインスタグラム(インスタ)に投稿した画像を掲載したり、商品の魅力を伝える動画を配信したりしている。ECサイトにおいて、インスタ投稿を見たユーザーのコンバージョン率(CVR)は約3倍、動画を閲覧したユーザーのCVRは約7倍に高まったという。今後、実店舗とECサイトの顧客情報を統合し、より顧客理解を深め、コミュニケーションを深めていく方針だ。ECにおけるコンテンツ強化の狙いや、OMO(ネットとリアルの融合)の展望について、EC営業部 EC営業課長 西川逸人氏と、第三事業部の販売促進部 販売促進課長 神島涼子氏に聞いた。
――エフ・ディ・シィ・プロダクツの事業概要を教えてください。
西川:当社は1972年にジュエリーブランド「4℃」を世に送り出して以来、全ての女性に「美しさ」と「ときめき」をお届けすることを使命に事業を展開しています。
商品企画、デザインから製造販売まで一貫して手がけるSPA事業を強みに主力の「4℃」を始め、クラシカルテイストの「EAUDOUCE 4℃(オデュース・ヨンドシー)」、普段使いしやすいアイテムを幅広く展開する「Canal 4℃(カナル・ヨンドシー)」など、数々の独自性があるジュエリーブランドがあります。
D2Cブランドとして、サステナブルジュエリーを取り扱う「cofl by 4℃(コフル・バイ・ヨンドシー)」、ジェンダーレスに楽しめるジュエリーを展開する「4℃ HOMME+(ヨンドシー・オムプラス)」、ヨーロッパと日本のデザインエッセンスを表現した「RUGIADA(ルジアダ)」などもあります。
幅広いお客さまに喜んでいただけるように、販売チャネルの多様化も進め、たくさんのお客さまにご支持していただいています。
▲第三事業部 EC営業部 EC営業課長 西川逸人氏
神島:昨年、当社は創業50周年を迎えました。次の50年を見据えて「サステナブル」「ジェンダーレス」など時流を捉えた新たなブランドの取り組みを始めました。
新しいブランドはまず、D2CブランドとしてEコマースから販売を開始しています。各ブランドとも好評な声をたくさんいただいており、少しずつ店舗展開もしていきたいと思っています。
<コロナ禍にEC強化、リニューアルも推進>
――EC事業はどのように注力してきましたか?
西川:2006年頃からECを展開しています。ECはもともと、実店舗を補完するような位置付けでしたが、コロナ禍に実店舗を閉めざるを得ないときには、ECが主役でした。
実店舗で買えないこともあり、ECの注文がかなり増えました。物流のメンバーと密に連絡を取り合い、毎日の出荷をどう乗り切るかに追われた日々でした。
普段、あまりネットを触ったことないお客さまからお問い合わせをいただき、使い方をお伝えしながら、ECでご購入いただくこともありました。
日によっては出荷件数が、それまでの2,3倍になるときもありました。コロナ初年度の2021年2月期のEC売上高は、前期比約20%増でした。
神島:コロナ禍に高まるECのニーズを捉えるために、送料無料のキャンペーンを急遽、実施したり、SNSの配信を止めないように投稿をいつもよりも頻度をあげて継続いたしました。
お誕生日や結婚記念日などにジュエリーを贈りたいけど、実店舗で購入できないと悩んだ末に、ECに来ていただいているため、ECを止めてはいけないという思いでした。
なかなか親しい人でも会えなかったコロナ禍だからこそ、身に着けるもの、肌に直接触れるものだったり、気持ちを込める意味でジュエリーを選ばれる方もいらっしゃいました。
▲第三事業部 販売促進部 販売促進課長 神島涼子氏
西川:コロナ禍にECのニーズが高まり、目の前の業務に追われながらも、先を見据えて、ECサイトのリニューアルを検討しました。
変わっていく環境の中でどういうプラットフォームが最適なのか、どういうスピード感でお客さまに対応していった方が良いのか、などを話し合いました。
2021年からリニューアルに向けて取り組み始め、ECサイトを刷新したのが2022年3月でした。
――リニューアルで重視したポイントは?
西川:コロナ禍で特に考えていたことは、接客ができない中で、ECでジュエリーの魅力をどうすれば伝えることができるのか、ということでした。
着用したり、接客したりできないECサイト上でどのように表現することができるのか。思いを巡らせる中で、コンテンツを強化する方向性が明確になっていきました。
リニューアルを機に社内でコンテンツを迅速に更新できるようにしたいと考えました。メンバーがHTMLやJavaScriptなどを学ぶとともに、自分たちで運営しやすいようなシステムに変更しました。
さらに、今後を見据え、実店舗とECの顧客情報を統合し、アプリで一括管理できる体制も作りたいと考え、リニューアルしました。
<毎日投稿しているインスタ画像を有効活用>
――コンテンツを強化するためにどのような施策を行っていますか?
西川:リニューアルに合わせて、インスタの投稿をECサイトと連携するため、「visumo social(ビジュモ ソーシャル)」を導入しました。
「visumo social」を活用し、ECサイトにインスタに投稿した画像を掲載しました。ジュエリーはアパレルなどと異なり、見栄えが変わりづらい商材です。インスタに毎日投稿している画像がECサイトに載り、商品を伝えるコンテンツが増えました。
連携ツールを探している中で、自分たちでも活用しやすいツールとして「visumo social」を選びました。
▲第三事業部 販売促進部 販売促進課長 神島涼子氏(左)、第三事業部 EC営業部 EC営業課長 西川逸人氏(右)
神島:各ブランドのターゲット層と親和性の高いインスタは、以前から重要視していました。フォロワーは8.5万人おり、日々投稿しているものの、その投稿がどのくらいご購入につながったかなど、成果が見えにくいため、どちらかというと継続・維持することを優先する形になっていました。
「visumo social」であれば、インスタの投稿と商品情報をひも付けることができます。商品詳細ページに、その商品に関連するインスタ投稿を載せることができるようになりました。
商品詳細ページが潤うことが大事だと考えています。商品詳細ページまで来て下さる方は、購買意欲が高いお客さまです。そのお客さまにインスタのコンテンツを紹介できる効果は大きいと考えています。
さらに、「visumo social」では、ECサイト上でインスタ投稿がどのぐらい閲覧されたか、コンテンツを見た人がどのくらいECサイトで商品を購入したか、などを可視化することもできます。
▲第三事業部 販売促進部 販売促進課長 神島涼子氏
――「visumo social」導入による具体的な効果は?
西川:実際、「visumo social」のコンテンツを閲覧したお客さまは、閲覧していないお客さまと比べて、CVRが3倍くらい高いというデータが出ています。
神島:外国人モデルなどを起用したビジュアルも掲載がありますが、商品をより身近に感じていただけるように、インスタでは日本人のスタッフが着用した画像などを投稿しています。
これまでインスタのみで完結していたコンテンツが、商品詳細ページにも載ることで、活用の幅が広がり、コンテンツ制作の費用対効果も上がっていると感じます。
<EC売上の10%が「visumo」経由に>
――ECサイトでは、動画コンテンツの配信にも注力していますね。
神島:商品のスペックやコンセプトを伝えるために動画を活用しています。ジュエリーは、ぱっと見で0.15カラットと0.2カラットのダイヤを見分けるのは難しいですが、動画で2つを比較するととても分かりやすくなります。
また、チェーンの長さを調整できるネックレスであれば、動画で実際に長さを変えて着用したイメージを紹介すると、見え方がどう変わるかを簡単に伝えることができます。
シーズンごとのコンセプトを表現するために、さまざまなコーディネートの動画を作ることもあります。
西川:動画をECサイトに掲載するために、動画連携ツール「visumo video(ビジュモ ビデオ)」を導入し、ECサイト上に動画を配信できる環境を整備しました。「visumo video」で配信した動画を閲覧したお客さまは、閲覧していないお客さまと比べてCVRが7倍くらい高くなりました。
神島:動画連携ツールを探している中で、使いやすさ、導入のしやすさで「visumo video」を選びました。「visumo social」を先行して導入しており、使い慣れていたことも大きかったと思います。
西川:「visumo social」や「visumo video」を導入したことで、EC売上高の約10%が、「visumo」で投稿したコンテンツを閲覧したお客さまの売り上げになっています。
――社内でコンテンツを強化するために取り組んでいることは?
西川:EC担当が勉強会を開催し、ブランドの担当者に「visumo」の使い方やコンテンツの作成方法などを伝えています。
「visumo」ではコンテンツの効果を可視化できるため、担当者と実績を見ながら、より取り組みを強化することができています。
コンテンツを制作したスタッフも自分たちの業務が成果につながっていることが可視化されるため、モチベーションの向上につながっていると思います。
神島:販売促進部ではコンテンツの質を高めるために、トンマナを考え、どういう画像だと良い、これはNGなどのマニュアルを作成して、共有しています。
西川:動画については、顧客層が比較的若い「Canal 4℃」から活用が進みました。「Canal 4℃」はメンバーも若く、メインの「4℃」よりも少し自由にコンテンツ制作に挑戦できる環境もありました。
動画を配信したことで、思った以上に実績につながりました。「Canal 4℃」で試した取り組みを、マニュアル化し、「4℃」などに展開していきました。
▲第三事業部 EC営業部 EC営業課長 西川逸人氏
<ブランド担当者がコンテンツ強化策を提案>
――商品を360度撮影した動画もありますね。
西川:「Canal4℃」の担当者が360度撮影できる機械を展示会で見つけてきました。この機械で360度動画を撮影したら「visumo」でサイトに上げられるかを聞かれ、できることを伝えると、自ら機械を購入し、試し撮りを繰り返し、360度動画を作成しました。
360度動画はクオリティーも高く、「Canal 4℃」にとっても、商品を詳しく紹介できるコンテンツとして重宝しています。今では「4℃」など他のブランドでも360度動画を活用するようになってきています。
――動画は購買促進以外の効果もありますか?
西川:動画で商品のイメージや使い方を伝えることで、問い合わせの削減にもつながっています。以前、これまでと異なる形の留め具のアイテムを発売した時に、問い合わせが増えたことがありました。
そこから留め具の使い方を説明する動画を作成し、ECサイトに載せたところ、すぐに問い合わせがなくなりました。
最近では、ブランド担当者が新商品を出す際に「この辺が分かりづらいですよね」と話し合いながら、「じゃあ、そこを分かりやすく紹介する動画を撮りましょうか」と提案してもらう機会が増えています。
神島:商品部と販売促進部とECのメンバーで毎週のように、商品ごとにどう紹介すると、お客さまに魅力が伝わるのか、話し合っています。
<顧客統合でコミュニケーションを深化>
――今後、ECやOMOをどのように強化していきたいですか?
西川:実店舗とECの顧客情報を統合することで、実店舗で購入しても、ECで購入しても、より良いタイミングでお客さまとコミュニケーションできる状態を作りたいと思っています。
その次には、上位顧客を増やしていく取り組みを強化します。ジュエリーは短いスパンで購入する商品ではないですが、1〜2年の間に再購入していただけるように、チャレンジしたいと思います。
神島:実店舗とECの双方で商品を購入しているお客さまもいらっしゃいますが、これまではその状況が把握しづらい環境でした。
実店舗とECの顧客情報を統合することで、これまで見えてこなかったお客さまの購買行動が見えてくると思っています。
当社はリアルな顧客パーティーなどを開催しています。そういったパーティーにECで多く買っているお客さまも招待させていただき、顔を見てお話しできる機会も増えていくと思います。
▲第三事業部 販売促進部 販売促進課長 神島涼子氏(左)、第三事業部 EC営業部 EC営業課長 西川逸人氏(右)
西川:今後もEC売上高を順調に成長させたいと考えています。
私はECの売り上げを管理していますが、ブランド全体の売り上げが上がらないと意味がないと思っています。
ブランドの価値を上げるために、ECはどういった存在であるべきかを考えることが重要です。全ての接点がブランドにつながっているということを考えながらECを運営して行きたいと考えています。
顧客情報を統合することで、「visumo」でECサイトに上げたコンテンツを見たお客さまが実店舗に行っているか、など今は見えていないデータも見えてきます。顧客統合により、コンテンツの取り組みも進化していくと思います。
顧客統合を足がかりに、ECと店舗との垣根をなくし、ブランドの価値をより一層、高めることができる状態を目指していきたいです。
■「4℃ ジュエリー オンラインショップ」
https://www.fdcp.co.jp/
■「visumo」
https://visumo.asia/