
新型コロナウイルスによる混乱期を除き、国内企業はここ10年間新卒の初任給を継続して引き上げています。賃金が上がらない日本社会の中で、企業が初任給を上げる背景には、人材確保での優位性を高めることと、若手人材の離職を抑えるという狙いがあるようです。
2023年度初任給の動向
民間シンクタンクの産労総合研究所が公開した「2023年度 決定初任給調査」によると、初任給を引き上げた企業は68.1%に上り、増加率は30年ぶりに2%を超えたということです。
この調査は上場企業を中心にした3,000社に対して、2023年4~5月に郵送によるアンケート形式で実施されました。
主な学歴ごとの初任給額は、大学院卒(博士)が246,052円(前年増加率3.71%)で、大学卒が218,324円(同2.84%)、高等学校卒が179,680円(同2.80%)という結果。初任給を引き上げた企業が6割を超えたのに対して、据え置いたという企業は28.9%と「引き上げた」が「据え置いた」を4年ぶりに上回る結果となりました。
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最近10年で初任給が大幅に伸びた企業
東洋経済新報社は、2012年度と2022年度を比較して、初任給が大幅に伸びた企業をランキング形式で紹介しています。その中で第1位はバンダイナムコエンターテインメントで、20万4,000円から10年間で30万円にまでアップしました。また、ランキング上位6社では、10年間の伸び率が40%以上となっています。
一時期は情報通信や、IT関連の企業が初任給を引き上げていましたが、今回のランキングでは顔ぶれが大きく変わり、金融業や不動産業に関わる企業がランキング上位に並んでいます。ただし業界が偏っているわけではなく、メーカーや商社、エンターテインメント系など、幅広い業界で初任給が上昇していることがわかります。