子どもの学習動画視聴で今すぐやめるべき「字幕」「かわいいキャラクター」「リアルすぎる映像」。集中力を損ない逆効果、と全米トップ高校長が指摘

スマホは現代において、もはや欠かせない情報収集、インプットの最強ツールだ。スマホやタブレットは大人だけではなく、子どもの学習のために動画で勉強させたりすることにも使われている。しかし、その使い方を間違えるととんでもないことになるという…。『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』 (朝日新書)より、一部抜粋、再構成してお届けする。

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マルチメディア時代のインプットとは


「速聴」以外にも、「聞く」インプットをより効率的にする方法がもう一つあります。

それは、「見る」を加えること。単に「聞く」だけではなく、ビジュアルも加えること。マルチメディアで情報を吸収すると、理解度が格段に上がることがわかっています。

スマホでのインプットの最大の利点は、このマルチメディアを簡単に利用できることです。

例えば、YouTubeの動画は、「聞く」に加えて「見る」、さらに、「読む」機能もついている。話し手の表情や音声にプラスして、補足的な画像やコメントも表示されるので、どこが大事なポイントなのかも非常にわかりやすい。

そうしたマルチメディアの環境の中では、私たちの理解度が格段に違ってきます。

記憶力や理解力は、マルチメディアからポジティブな影響を受けることが実証されており、スマホはその最善のツールだと言えます。

マルチメディアによるインプットが効果的であることは、最近では脳科学的に裏付けがなされています。わかりやすく解説しましょう。





私たちの脳の主要機能としておなじみの、「ワーキングメモリー」。長期や短期の記憶を現在の意識にホールドして、整理したり、組み合わせたり、なんらかの「コマンド」を意識下で実行する脳の働きのことです。

頭の中で、「123+37」という計算をする時は、このワーキングメモリーがフル稼働しています。それぞれの数字を意識して、足し算を実行する。そうやって頭を使うことができるのは、すべてワーキングメモリーのおかげです。

そして、このワーキングメモリーは、どんな人でも容量がかなり小さい。3つから5つくらいのものを意識にホールドするのが限界であるとされています。

ですから、その小さな容量をうまく使いこなすことが、効果的なインプットのために求められてきます。

では、どうすれば効果的なのでしょうか?

それは、外から入ってくる情報を、「見る」「聞く」などの違う種類のインプットに分散させることです。

思い出してください。授業で先生の話を理解しようとしても複雑でお手上げだったのに、黒板に図にしてくれた途端、すぐに吞み込め理解できた。そんな体験を誰しもが持っているのではないでしょうか。

「聞く」だけではワーキングメモリーがパンクしてしまうものの、「見る」も併用してインプットの負荷を分散させる。そうすることで、ワーキングメモリーをより効率的に使うことができます。

だから、「『読む』『聞く』『見る』のどれが最も効果的か」という問いも大事ですが、「どうやってそれらを混ぜた形でインプットができるか」という視点を持つことが大切なのです。


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動画の習慣で避けるべきこと


しかしここで、要注意。マルチメディアのインプットなら、どんな形でも効果的であるというわけではありません。

それどころか逆効果になってしまうこともあるので、「読む」「聞く」「見る」を上手に混ぜ合わせることが重要になります。何でもかんでもゴチャ混ぜでは、思ったような効果は出ないのです。

例えば、字幕。

動画を見る時に、「聞く」「見る」だけでは心許ないので、字幕をオンにして動画の内容の取りこぼしを防ごうなどと思ったことはないでしょうか?

字幕を付ければ、「聞く」インプットに「読む」インプットも追加でき、聞き逃しても文字で追い直せるので理解度も上がるだろう……。そう考えるのも自然です。

しかしながら、実際にはそうではありません。動画視聴で音声に字幕を加えると、ワーキングメモリーの負荷を分散させられるどころか、字幕の情報量でオーバーフロー状態になりかねないのです。





例えば、パワポを使ったプレゼンテーションでは、資料画像に文字を入れすぎないようにと言われたりしますよね。それこそ、「何文字まで」と制限されることだってある。

それは、過度な書き文字によって、聞き手の注意力が文字の方に引かれてしまい、プレゼンの詳細が耳から入りにくくなるからです。うまく集中できなくなるわけです。

動画の字幕も同様に解釈できます。

例えば字幕付きの映画で、字幕に気を取られて登場人物の表情を見逃したり、その場の雰囲気や気持ちが理解できなかったと感じたことはないでしょうか?

字幕によって、動画のインプットが増え過ぎてしまい、情報の理解度そのものが落ちてしまう傾向があるのです。

特に、未知の分野を学んだり、新しい情報をゲットしたりする時には、ワーキングメモリーに負荷をかけてはいけません。ついつい良かれと思って字幕を付けて、余計な情報を増やしてしまわないように気をつけましょう。