北朝鮮北部の税関、未だに本格的業務の再開には至らず

北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)税関は、2020年1月にコロナ対策として閉鎖されて以降、何度も「まもなく業務を再開する」との噂が流れた。しかし、期待のあまりもの高さが生み出した根拠不明な噂話に過ぎず、その度に人々はぬか喜びしてきた。

恵山には、鉱業と貿易以外にこれといった産業がなく、コロナ禍では餓死者を出すなど非常に厳しい状況に置かれていただけあって、税関業務再開に寄せる人々の期待は非常に大きい。

「7月17日以降に税関の業務を再開する」との通告があったものの、税関の防疫設備に問題があったとして、大々的な検閲(監査)が行われることとなり、再開が遅れていたが、ようやくわずかながら、行き来が再開された。

現地のデイリーNK内部情報筋によると10月16日、恵山税関に工業製品や靴などを積んだ車1台が入った。しかし、荷下ろしをすると、空荷のままで中国に戻っていった。また、9月末から税関に関係者が出入りするようになった。同時期の秋夕(旧盆)には、様々な種類の果物が輸入された。

10月1日の中国の国慶節、10日の朝鮮労働党創建記念日を前後して、国境周辺の動きは鈍化していたが、今回、中国側から荷物を積んだ車がやって来たことで、恵山市民の期待はいつになく高まっている。

「コロナ前と同じように貿易ができるようになるのは時間の問題」(恵山市民)

ところが、上部からは税関業務の再開に関する明確な指示は下されておらず、事情通の関係者はやきもきしている。

「鉱石を輸出する会社は、車に荷物を積んで待機している状態が続いている。税関を通るだけでカネになるというのに、人が行き来し、車がやってきたのに、輸出は再開されず、貿易関係者は心を痛めている」(情報筋)

税関の業務最下位を見越して、中国で人気のある松の実を大量に買い付けた貿易会社は、輸出のタイミングを逃してしまうのではないかと心配し、不満をつのらせている。

「国からワック(貿易許可証)を受け取って、後は指示を下すだけなのに」(貿易関係者)

実際に自分の目で見るまでは「税関が開く」、「貿易が全面再開される」という噂は信じられないというのが、現地の雰囲気だという。

西部の新義州(シニジュ)、東部の羅先(ラソン)を通じた人と物の行き来は再開されているものの、それ以外の10カ所以上の国境は未だに開かれていない。その理由は定かでないが、北朝鮮政府が両江道を問題視しているためとの見方がある。

北朝鮮は昨年2月の最高人民会議第14期第6回会議において、国家唯一貿易体制の復旧を課題に挙げた。これは、各地方の貿易会社や業者が勝手に輸出入を行い、密輸、脱北などの違法行為が横行していた状況を正し、すべての貿易を国が司るかつての状況を取り戻そうとするものだ。

過度に輸出入が行われたことで、国富の流出、国内市場の中国製品による侵食が進んだ状況を解決しようとしているが、国境沿いの地域の中で、最も違法行為が頻発していた両江道の貿易再開は、体制が整うまで遅らせようとしている可能性が考えられる。

貿易が再開した地域では、程度は不明だが、既に密輸が横行しており、政府の思惑通りには進んでいないことがうかがえる。ただ上述の通り、これといった産業のない両江道にとって、貿易の再開は死活問題だ。

貿易を制限して国産品を市場に流通させようにも、両江道の人々にとっては、遠く離れた地域にある国産品の製造工場から商品を取り寄せるよりも、目の前の中国から取り寄せたほうが速くて安い。また、国産品とは言っても、原材料は中国からの輸入に頼っているため、そもそも価格が高い。

北朝鮮がいくら抵抗しても、市場が再び中国製品であふれる状況に戻るのは時間の問題だろう。