【ディープテックを追え】軽く薄く柔軟な「CIS太陽電池」で再挑戦。ペロブスカイトとタンデムも

PXP(神奈川県相模原市、栗谷川悟社長)は、軽く薄く柔軟な化合物系太陽電池「CIS太陽電池」の事業化を目指す。大手太陽電池メーカーで、CIS太陽電池の量産化に成功したコアメンバーらがスピンアウトして2020年に起業した。同メーカーでは中国系メーカーによる低価格攻勢に合い、後に生産から撤退したが、より安価に生産できる製造プロセスと製品を高付加価値化する体制を整えて、再び太陽電池の市場に挑む。

「軽く薄い太陽電池を実現し、既存のシリコン太陽電池が置けない場所で使えるようにして太陽電池をもっと普及させたい」。栗谷川社長は力を込める。

PXPはカルコパイライト化合物を発電層に用いた太陽電池を開発する。カルコパイライトは光吸収の性能が高いため、薄膜で形成できる。シリコン太陽電池に比べてパネルの重さは10分の1以下、厚みは0.4mmで柔軟に曲げられる。変換効率は20%以上、耐久性も15-20年程度を実現しているという。

事業化に向けて製造コストを低減する新製法を開発した。従来に比べて生産速度5倍以上、設備投資3分の1以下を見込む。新製法のポイントの一つが、太陽電池の基板に厚さ50μmのチタン箔を用いたことだ。チタン箔は熱容量が極めて小さいため、製造工程における加熱や冷却が迅速になり、生産速度を早められる。また、パネルは4cm×16cmを最小構成単位とした小さなセルをつないで構成する仕組みにした。これにより、大面積で一括製造する場合に必要なパターニングの工程をなくし、従来の常圧と真空を繰り返す複雑なプロセスも排除することで製造設備を小型化したほか、顧客の要望に応じて多様なサイズ・仕様の最終製品を製造しやすくした。

PXPの製造プロセス

すでに同社はパイロットラインを稼働させ、新製法の量産性を検証している。6月をメドにサンプルを供給し、性能を評価してもらう予定。その評価を踏まえ、早ければ24年内にも量産体制構築の投資判断をする。規模は25MW程度を想定する。供給先は、既存の太陽電池が置けない耐荷重の低い工場屋根や農業用ビニールハウスなどを想定しつつ、中長期的には一大市場として車載を見据える。

「電気自動車(EV)のうち半数しか太陽電池を搭載しなかったとしても、30年ころには数十GWの市場が生まれる。また、グローバルサウルス(南半球を中心とした新興・途上国)エリアはエネルギーインフラが乏しい。そうした地域の移動体の電源としても需要が見込める」(栗谷川社長)。

国内において車載太陽電池は現在、オプションとしてW単価1600円程度で提供されているが、PXPはそれをW単価250円以下まで下げて供給できると見通す。

パイロットライン

一方、薄く軽く柔軟な次世代太陽電池としては、発電層にペロブスカイト材料を用いる「ペロブスカイト太陽電池」が足元で脚光を浴びている。栗谷川社長はCISとペロブスカイトは競合ではなく協力関係になると見る。得意な吸収する光の波長領域が異なるため、二つの材料を積層する「タンデム型」によって、より広い波長の光を吸収できるようにして変換効率の高い太陽電池を実現するという考えだ。

実際、PXPはタンデム型を製作し、変換効率26.5%を達成した。ペロブスカイトはまだ耐久性などに課題があるため、そうした課題を解消した後に、より変換効率が高く柔軟な太陽電池として試作品を作製する予定だ。

栗谷川社長はかつて大手太陽電池メーカーで中国メーカーの低価格攻勢に合う中で、新たな製造プロセスを構想した。PXPで今、それを確立させようとしている。進化させたCIS太陽電池で市場に再挑戦する日が迫っている。