
消費者物価指数は、毎月総務省統計局が調査して発表します。具体的に、日本全国の世帯が購入するモノやサービスの価格を総合した物価変動を示す数値のことです。
本記事で、消費者物価指数の計算方法やアメリカとの違いを理解しましょう。
日本の消費者物価指数(CPI)とは
消費者物価指数とは、消費者が日常的に購入する商品・サービスの価格がどれくらい変動したかを示す数値です。英語でConsumer Price Indexと表現するため、略してCPIと呼ぶこともあります。
ここでは、公表日や調査対象の品目、調査方法など日本の消費者物価指数について詳しく解説します。
消費者物価指数の公表日
原則として、消費者物価指数の公表日時は毎月19日を含む週の金曜日午前8時30分です。当日は、前月分の指数を総務省統計局が公表します。また、12月分を公表する際は年平均指数、3月分を公表する際には年度平均指数を同時に発表しています。
なお、全国を対象とした指数とは別に、東京都区部の当月分指数の中旬速報値の公表もされていますが、こちらは原則として毎月26日を含む週の金曜日の午前8時30分です。
消費者物価指数で調査対象の品目
消費者物価指数で調査対象となる品目は、基準改定(一定期間ごとに消費者物価指数の基準年を更新すること)の都度変わります。2020年基準では、家計の上で重要な商品として選定した581品目に「持家の帰属家賃」を加えた582品目が対象です。品目は食料・住居・被服・交通通信・化粧品など幅広い分野にわたります。
対象品目の中には、品質・規格・容量など銘柄(スペック)が異なる複数の商品が含まれています。たとえば、化粧品ひとつ取ってみても、化粧クリームA・化粧クリームB・化粧水A・化粧水B・乳液A・乳液Bなど種類が複数あります 。
なお、急速に新製品が普及したり、消費類型や消費支出内容に大きな変化があったりした場合、対象年以外でも品目を変更することがあります。
消費者物価指数の調査・作成方法
消費者物価指数の対象となる各品目の価格は、主に毎月の「小売物価統計調査」の結果を用いて決定します。
小売物価統計調査とは、国民の消費生活で重要な商品の小売価格やサービスの料金、家賃について毎月調査するものです。小売物価統計調査の方法には、品目によって調査員調査・都道府県調査・総務省調査の3系統があります。
調査員調査は、一般の人の中から選考された調査員が実施する方法です。都道府県知事に任命された人(調査員)が、特別職の地方公務員として店舗や世帯から価格・家賃などの情報を聴き取り、専用の携帯情報端末に入力していきます。
消費者物価指数の計算(算出)方法
消費者物価指数は、基準時を100として比較時の費用を比率の指数で示したもののため、以下の式で計算します。
・消費者物価指数 = 比較時の価格 ÷ 基準時の価格 × 100
2023年現在、基準となるのは2020年の家計調査結果(2020年基準)です。そのため、消費者物価指数は、現在の値が2020年と比べて上昇(下落)しているかを示しています。
計算にあたって、各品目の指数を出してからウエイトによって加重平均している点に注意が必要です。ウエイトとはある時点の品目ごとの支出割合をいいます。ウエイトの大きい品目ほど消費者物価指数に与える影響は大きくなるため、商品Aの価格が5%上がることと、商品Bの価格が5%上がることが消費者物価指数に与える影響は必ずしも同じではありません。
なお、物価の上昇・下落傾向を判断する際に消費者物価指数の前年同月比を確認することがあります。前年同月比の算出方法は以下のとおりです。
・前年同月比(%)=((今月の消費者物価指数 ÷ 前年同月の消費者物価指数)- 1)× 100
たとえば、前年同月比が+3%であれば、前年よりも物価が3%上昇、-5%であれば5%下落していると判断できます。
消費者物価指数を利用する場面
消費者物価指数は、官民問わずさまざまな場面で利用されている指標です。主に以下の場面で消費者物価指数を使います。
・経済指標(家計調査・GDP統計の家計消費支出など)を実質化するため
・国民年金・厚生年金などの給付水準見直し
・賃金を改定する際の参考にするため
・家賃を改定する際の参考にするため
・公共料金を改定する際の参考にするため
そのほか、日本銀行が金融政策の判断材料のひとつとして用いることもあります。
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アメリカ(米国)のCPIとは
アメリカのCPIとは、米国国内の物価上昇や下降などを日本の消費者物価指数と同じように示した指標です。日本との違いや、米国CPIの現状について解説します。
日本と米国CPIの違い
日本の消費者物価指数は総務省統計局が調査して発表するのに対し、米国CPIの発表主体は米国労働省です。また、日本では原則として消費者物価指数の公表日時は毎月19日を含む週の金曜日が公表時期であるのに対し、米国では毎月中旬(15日)前後に公表します。
さらに、日本では582の品目が調査対象となっているのに対し、米国では200超です。
米国CPIの現状
2023年5月(同年6月13日発表)の米国CPI(季節調整済)は、前月と比べて0.1%上昇しました。ただし、前月は0.4%上昇していたことを考慮すると、減速傾向にあります。また、前年比の伸び率は4.0%で4月の4.9%と比較すると大きく鈍化しました。
米国CPIは、為替などで日本にも影響を与えることがあります。
一般的に、市場予想よりも米国CPIが高い局面では、継続的な物価上昇(インフレ)を抑制するために金融引き締めが実施されます。これにより米国金利が上昇(円との金利差が拡大)すると、ドルの需要が高まるためドル高(円安)になりやすいです。
反対に、市場予想よりも米国CPIが低い局面では、インフレの鈍化(もしくはデフレの加速)に対応すべく金融緩和が実施されることが一般的です。これにより米国金利が低下(円との金利差が縮小)してドルの需要が減るとドル安(円高)になる傾向にあります。