業務スピード2倍速…トヨタ紡織がDX推進で社内事例共有

人材育成へ研修充実化

トヨタ紡織は競争力強化に向けたデジタル変革(DX)を意欲的に推進している。DXをテーマとした社内展示会を初めて開催し、オフィスや工場など各部署の事例を共有した。また製造現場における見える化の取り組みでは、すでに生産性向上などの成果が出ている。同社は業務スピードを2030年度に23年度比2倍に高めることを目指し、デジタル人材の育成や事例の横展開に挑む。(名古屋・増田晴香)

トヨタ紡織はDXの展示会「DXエキスポ」を18―20日の3日間、猿投工場(愛知県豊田市)で開いた。社内の各部署の改善・実証事例など31テーマをパネル展示したほか、基調講演も実施した。

ビジネス改革推進部は実在する管理職社員を模した「デジタルヒューマン」を使ったコミュニケーション改革案を展示。対話型生成人工知能(AI)にモデルとなる社員の趣味や業務で重視する観点などの情報を入力すると、部下がデジタルの上司と気軽に話せるようになり、日常業務の効率化を図れる。稟議(りんぎ)書の確認作業で実験的に導入したところ、1週間の日程短縮効果が見られたという。

豊橋工場(同豊橋市)工務部ではスマートフォンを活用した固定資産管理の事例を紹介した。従来は棚卸しの際、紙のリストを持ち歩き、目視で確認、手書きでチェックを入れた後、結果をデータ入力し直していた。改善後は固定資産に貼ってある2次元コード(QRコード)をスキャンする手法を取り入れ、手書きやデータ入力が不要になった。

DX&IT推進本部の柴田隆宏チーフデジタルオフィサー(CDO)は「事例を一人でも多くの社員に共有し、各職場で業務改革を始めるきっかけにしてほしい」と展示会の狙いを語る。生成AIなど注目技術への理解も深めてもらい、ツールの選択肢を広げる。

生産現場ではIoT(モノのインターネット)を活用した見える化の取り組みを18年に開始し、成果が出ている。各工場の当日の生産計画数、現在の進捗(しんちょく)状況、停止時間、可動率などを横並びで把握できる「稼働モニター」を国内の一部工場に導入した。現状確認や生産管理を効率化でき、工場や拠点間の情報共有も可能。可動率低下につながるリスクは事前に対策できるようになった。

これまではランプを点灯させる「アンドン」でリアルタイムに異常を把握していたが、過去の履歴が追えず、問題箇所の特定は熟練者の感覚や経験に依存していた。ラインや工場全体で管理ができていないことも課題だった。

トヨタ紡織はDX推進により業務を迅速化し、ビジネススピードを2倍に高める。足元は社内のアナログデータをデジタル化するなど情報基盤の構築が進行中だ。今後は情報基盤のフル活用に備え「社員一人ひとりのITリテラシーの向上を目指す」(柴田CDO)。

同社はデジタル人材を「基礎人材」「応用人材」「改革人材」の3ステップに分け、育成・採用する計画。まずは全体の底上げに向け研修の場を充実させたり、成功事例の情報共有や横展開を通じて活動を全社に広げる。

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