【ノーベル賞候補】「ペロブスカイト太陽電池」誕生の舞台裏には数多の秘話があった

脱炭素化のキー技術と期待される「ペロブスカイト太陽電池」。軽くて薄く柔軟な特性を持たせられる次世代太陽電池です。耐荷重の低い屋根や壁面など既存の太陽電池は設置できない場所での利用が見込まれており、政府は量産化を強力に支援する方針を掲げています。ノーベル賞の有力候補ともされるペロブスカイト太陽電池は、横浜市の小さな丘の上にある桐蔭横浜大学で生まれました。その誕生に至る経緯には多くの研究者らの汗や好奇心、彼ら同士の交流があります。その誕生秘話をお届けします。(全15回)

第一部:舞台が整う
episode1 着任の日

宮坂力は48歳で富士写真フイルム(現富士フイルムHD)を退社し、桐蔭横浜大学の教授に着任する。ここで立ち上げた研究室が後に大発明の舞台になる。

episode2 人工網膜と色素増感太陽電池

宮坂力は研究室で取り組むテーマを2つ設定する。1つは「人工網膜」。そしてもう一つがペロブスカイト太陽電池の土台となる「色素増感太陽電池」だった。

episode3 創業するならダンゼン横浜!

横浜市の支援を受け、宮坂力は大学発ベンチャーを立ち上げる。宮坂はこの創業を「人生を大きく変えるトリガーになった」と後に振り返ることになる。

episode4 ペクセルに来た二人

宮坂力が立ち上げた大学発ベンチャー「ペクセル・テクノロジーズ」。その創業期に池上和志と手島健次郎は入社した。彼らはペクセルにそれぞれ大きな価値をもたらす。

第二部:ペロブスカイトはどこからきたのか
episode5 パイオニア

有機・無機複合の化合物「ペロブスカイト」。その日本における研究の起源は東北大学にあった。

episode6 理論を実証せよ

ペロブスカイトに関わる基礎研究は、東京大学物理工学科の研究者らのつながりによって引き継がれていく。

episode7 CRESTが残したモノ

政府が1995年に立ち上げた基礎研究の大型支援事業「CREST」。この事業はペロブスカイトと太陽電池が近づくきっかけだった。

第3部:太陽電池と融合する
episode8 自己組織化が面白い

太陽電池の研究に憧れる東京工芸大の学生、小島陽広はとあるきっかけでペロブスカイトの発光特性の研究を始める。

episode9 きっかけ

ペロブスカイトを太陽電池の材料として用いる。そのアイデアはいつどのように生まれたか。

episode10 世界初?…参考文献がない

ペロブスカイトを用いた太陽電池は05年に初めて学会で報告された。その舞台裏では。

episode11 プレッシャーとポテンシャル

大学の博士課程に進んで、ペロブスカイト太陽電池の研究を論文としてまとめる。小島陽広のその決断を密かにアシストしたものがあった。

episode12 誕生

小島陽広は苦難を経つつ、ペロブスカイトと太陽電池を融合させた世界で初めて学説論文を世に出す。

第4部:研究に「火」が着いた
episode13 EPFLの出会い

桐蔭横浜大学で宮坂に師事した村上拓郎と、英国人研究者との出会いは後に太陽電池の研究を一変させる。

episode14 変換効率10%

ペロブスカイト太陽電池が変換効率10%を超え、研究に「火」が着いた。その成果のポイントは2つあった。

episode15 それぞれの2012年

ペロブスカイト太陽電池の研究が進展した変換効率10%超の成果を、宮坂力や小島陽広らはどう受け止めていたか。