
身近な用語の意味を解説する、今回のテーマは「温帯低気圧」。
天気予報では「低気圧が発達して・・・」「台風が温帯低気圧に変わりました」、などと伝えられることがあります。
低気圧も台風も馴染みのある言葉ですが、それらと「温帯低気圧」とはどのように違うのでしょう?
そこで今回は「温帯低気圧」の特徴、そして熱帯低気圧や台風との違いについてしらべてみました。
すると、温帯低気圧にも備えが必要な場合もあることがわかったのです。
ぜひ本記事を参考にして何となくわかる天気予報をしっかり理解できるものに変え、災害に備えていきましょう。
温帯低気圧と熱帯低気圧では発生源が異なる
温帯低気圧の特徴をお伝えするまえに、まずは温帯低気圧と熱帯低気圧の違いを解説します。
これらの違いは、ひと言でいうと「発生源の違い」つまり「何をエネルギーとして発生するのか?」ということです。
温帯低気圧と熱帯低気圧それぞれ2つのキーワードを使い、できるだけ簡単に説明します。
はじめに、温帯低気圧の発生からみていきましょう。
温帯低気圧は中緯度で発生する
気象庁は温帯低気圧について次のように説明しています。
温帯低気圧は、中緯度(ちゅういど)地域で発生し、発達する低気圧です
気象庁|はれるんランド「台風、熱帯低気圧、温帯低気圧は、どうちがうの?」より引用
温帯低気圧を理解するうえでポイントとなるのが、この“中緯度”という場所です。
キーワードは「冷たい空気」と「温かい空気」
温帯低気圧が発生する中緯度は、北からの「冷たい空気」と南からの「温かい空気」が接する場所にあたります。
そして、これらの「冷たい空気」と「温かい空気」という、性質の異なる2つの空気が交わろうと渦を巻くエネルギーによって、温帯低気圧が発生・発達するのです。

Sachiyo
異なる性質をもつ2つの空気の境目を「前線」と言います。
温帯低気圧は前線をともなうことが多い
ここで温帯低気圧の特徴をお伝えします。それは「前線をともなうことが多い」こと。
天気図で確認してみましょう。
出典:気象庁「天気図」2023年9月12日21時 https://www.jma.go.jp/bosai/weather_map/
天気図の北側に2つの低気圧があります。

Sachiyo
天気予報で単に低気圧と言った場合には、基本的に温帯低気圧のことを指しています。
右側の低気圧(温帯低気圧)には、寒冷前線(青色)と温暖前線(赤色)が示されています。
低気圧では外側から低気圧の中心にむかって空気が吹きこみ、反時計回りに流れています。そのため、温帯低気圧では北から「冷たい空気」が入ることで南西に寒冷前線ができ、そして南からの「温かい空気」が入る南東には温暖前線ができるのです。
では、話を温帯低気圧と熱帯低気圧の違いに戻しましょう。
熱帯低気圧のキーワードは「多くの水蒸気」と「温かい空気」
熱帯低気圧とは『熱帯または亜熱帯地方に発生する低気圧の総称※』とされています。※気象庁|気圧配置 台風に関する用語より引用。
この地域の海上では「多くの水蒸気」が発生します。そして、この水蒸気をふくむ空気が上昇する動きと、まわりの「温かい空気」の働きによって渦ができ、熱帯低気圧が発生するのです。
ここまでの話をまとめると、次のようになります。
◆発生源の違いで低気圧を分類
- 温帯低気圧は「冷たい空気」と「温かい空気」をエネルギーとして発生
- 熱帯低気圧は「多くの水蒸気」と「温かい空気」をエネルギーとして発生
温帯低気圧と熱帯低気圧の違いは、この2つのキーワードとともに覚えておくと、わかりやすいのではないでしょうか。
次に、熱帯低気圧とともによく聞く言葉でもある「台風」についてみていきましょう。
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台風は熱帯低気圧が発達したもの
台風とは簡単に言うと「熱帯低気圧が発達して、風が強くなったもの」です。
気象庁の定義は、次のとおりです。
熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びますが、このうち北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上のものを「台風」と呼びます。
気象庁「台風とは」より引用
つまり台風とは、特定の領域にある熱帯低気圧のなかで「最大瞬間風速が、17メートル毎秒(=17m/s)を超えたもの」と言い換えることができます。
そのため、熱帯低気圧の発生源である「温かい空気」のエネルギ-が衰えた場合には、台風から熱帯低気圧に戻ることもあるのです。
ここまで、台風と熱帯低気圧の関係について解説しました。