
今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は、投資信託の運用現場や投資の考え方について詳しく紹介したインベスコ・アセット・マネジメントの『世界屈指の資産運用会社インベスコが明かす世界株式「王道」投資術』の一部を特別に公開します(全3回/本記事は第3回)。
※本記事はインベスコ・アセット・マネジメント著『世界屈指の資産運用会社インベスコが明かす世界株式「王道」投資術』(KKベストセラーズ)から一部を抜粋・再編集したものです。
インベスコの世界株式の運用拠点、英国ヘンリー
ここからは、インベスコの世界株式運用チーム、つまりプロの運用者が実際どのようなことを考え、行動し、銘柄を選んでいるのかを具体的にご紹介します。
世界株式を運用するインベスコの主要拠点が英国にあります。英国にあると聞くと歴史的な金融街であるロンドンを想像する方が多いかもしれません。しかし、インベスコの株式運用の拠点はロンドンから西に約60㎞、電車で1時間半ほど離れたオックフォード近郊のヘンリー・オン・テムズというのどかな場所にあります。
町の中心部をテムズ川がゆったりと流れ、鴨やリス、時には孔雀が優雅に散歩をする姿を目にするほど自然豊かな風景が広がります。平日は地元の住人やインベスコの社員以外をあまり見かけることのない静かな町ですが、「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」が開催される夏を中心に大きな賑わいを見せます。もともと英国貴族やロンドンで成功した商人などが好んで別荘を建てたテムズ川上流の一帯であり、その閑静な住宅街には、現在も有名俳優、アーティスト、政治家などの邸宅が立ち並びます。多くの英国人に愛され続けている豊かな地域のつといえます。
ヘンリーで働くインベスコの社員も皆この場所を愛し、この環境は日々の資産運用業務にもポジティブな影響をもたらします。都会の喧騒から距離を置くことで、短期的な、場合によっては過剰ともいえる情報の波を遮断し、長期的な目線と柔軟な思考をもって投資と向き合うことができるのです。
インベスコ・ヘンリー拠点の歴史は、1973年まで遡ります。英国生まれのマーティン・アビブ卿(Sir Martyn Arbib)は歳の時に、ヘンリー中心部の小さな建物でインベスコの前身であるパーペチュアル社*を創業しました。
*1973年当時はCharvine Finance Limited、1974年にPerpetual Trustee Company Limitedへ社名変更後、1987年よりPerpetual Limited(パーペチュアル・リミテッド)。
マーティンは、投資理念として創業当時から成長と割安という評価軸をもっており、企業のファンダメンタルズ分析にも定評がありました。着実にリターンを獲得するため「徹底した企業調査・分析に基づき、適正な価格で購入できると判断した時には、ためらわずに買う」という運用スタイルを一貫して続けました。
2000年秋、パーペチュアル社はさらに広く世界へ展開するため、資産運用業界におけるグローバル・プレイヤーとして定評のある、米国アトランタに本拠地を置くインベスコと合併しました。合併後もヘンリー拠点はインベスコの欧州エリアの中心拠点として機能し、また、成長と割安の観点から投資企業を厳選するパーペチュアル社時代からの投資スタイルが今も受け継がれています。
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ヘンリーの投資哲学
アクティブ運用を行う上では、投資哲学というものが必ず存在します。投資哲学とは、投資を行う際の基本的な信念や考え方のことを指し、どのような資産に投資するか、いつ、どのように投資するかを判断する上での指針となります。
ヘンリー拠点の投資哲学は、短期の市場トレンドやコンセンサス(業績予想平均)への過度な注目を回避しながら長期投資に徹することにより、優れた投資成果を達成することを目指すものです。これを実現するため、以下の4つの観点に基づいた運用を実践しています。
■ボトムアップ・アプローチ
ボトムアップ・アプローチとは、個別企業1つひとつの財務状況や業績などを分析して、投資する個別銘柄を選定する方法です。ボトムアップ・アプローチによる徹底的なファンダメンタルズ分析を通して、市場に存在する非効率性(すべての最新の情報は株価に反映されておらず、見逃されている、もしくは過小評価されていることから投資機会が存在すという考え方)による株価の歪みを捉えることで、優れた投資成果を目指すものです。
■長期投資
長期投資とは、短期間に売買を繰り返すことなく、長期にわたって投資した銘柄を保有し続ける投資手法です。企業は長期的視野で事業を営んでいるため、長期的な視点で企業分析・調査を行い、長期投資を実践することで、優れた投資成果を達成することができると考えています。
■アクティブ運用
アクティブ運用とは、運用者の判断によって株価の上昇が期待される銘柄を厳選して投資を行い、市場全体を上回る投資成果を目指す運用手法です。アクティブ運用は、投資銘柄の選定において、インデックスを構成する銘柄やその比率などの制約がないことから、魅力的な投資機会をみつけることにより、市場全体およびパッシブ運用に比較して優れた投資成果を期待できます。
■バリュエーション重視
株価は、長期で見ると企業の利益成長や資産価値などから評価された本質的価値に収れんしていくと考えられます。短期的な要因により、株価が企業の本質的価値を下回り(割安)、その乖離幅が拡大している際に投資を行うことで、より高い投資成果が期待されます。