地方移住から「2年」でUターン…一家が“勇気ある撤退”を決断できた理由

コロナ禍で地方移住という選択肢を選んだ人は少なくないと思います。私たち一家もそうでした。しかし、新天地の山梨での生活が始まってしばらくすると、徐々に息苦しさを覚えるようになりました。

移住から2年で気付いたミスマッチ

1つの要因は、よく言われることですが、密過ぎる人間関係です。高齢化が進む地方では40代の私たち夫婦も「若手」扱いで、地域の会合や催し物がある度に呼び出されるのには閉口しました。留守宅に平気で上がり込んでくるような“間合いの近さ”にも抵抗を感じてしまいます。

また、当初期待したほど家計が改善されていないことも気になっていました。スーパーに行くにも車を走らせなければならないこのエリア。暮らしていくにはどうしても車2台が必要で、税金や保険料といった維持費に加え、最近のガソリン価格の上昇がわが家の家計に重くのしかかっています。

そして、家族の状況も移住当初から大きく変化しました。今年中学2年生になった上の息子はデータサイエンティスト志望で、有名国立大学の理学部への進学を目指しています。大学受験に万全を期すため、地元の公立高校でなく、都内の私立高校に進学したいと言い出したのです。

私自身も今の仕事に行き詰まりを感じていて学生時代からの親友に愚痴ったら、「本気に東京に戻ってくるつもりなら、お金のことなんかも含めて一度、専門家に相談した方がいいんじゃないか」とファイナンシャルプランナー(FP)の香川さんを紹介されました。

上の息子の進学問題は急を要する問題だけに、すがるような気持ちで香川さんにメールを送りました。すると、早速その日の夜、香川さんから直接電話がかかってきたのです。

(広告の後にも続きます)

香川さんからの核心を突いたアドバイス

「はじめまして、香川です。メールを拝読してお急ぎのようだったので、お電話を差し上げました。よろしければこの週末にでも一度、オンラインで面談いたします。ご都合のいい時間帯をご指定ください」

耳に心地よく響く低音ボイス、落ち着いた語り口に、「この人は信頼できそうだ」と思いました。その印象は、オンライン面談でも全く変わりませんでした。

私の話をひと通り聞いた後、香川さんは言いました。

「南さん、それは“勇気ある撤退”ですよ。コロナ禍での移住はやむを得ない選択だったと思います。しかし、今は事情が変わってきているわけですし、家族みんなが我慢しながら今の場所にとどまる必要はないのではないでしょうか」

そして、こう続けたのです。

「東京での生活基盤を築く鍵を握るのは、香川さんの仕事です。幸い今、コロナの5類移行でイベントや旅行業界は回復が進み、売り手市場になっています。以前一緒にお仕事をされていた方に声をかけたり、転職サイトに登録してみたりしてはいかがでしょう? 当面のご長男の学費については、正直、それほど心配はないと思います。東京都では私立高校の授業料が実質無償化されていますし、受験に関しても、ご長男の学力なら塾の特待生制度が利用できるかもしれません」

香川さんのアドバイスを家族に伝えると、みんなの表情が緩むのが分かりました。進学の事情を抱える上の息子だけでなく、妻や下の息子も新しい環境で無理を強いられてきて、ようやくそこから解放されることに安堵したのでしょう。