フィンランドの防衛技術が日本の領土を守る!? 75年ぶりに国防武官が在日大使館に着任。防衛軍制服組トップと国防相が立て続けに訪日する異例の事態も…

ウクライナ侵略によってロシアの脅威が高まる中、フィンランドでは、特に外交・安全保障関係者の間で日本への関心が急速に高まりつつあるという。日本とフィンランドの間で、安全保障の文脈で連携を深める絶好の機会が訪れているというが、いったい何が起きているのか。『フィンランドの覚悟』(扶桑社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

#2


防衛首脳による相互訪問


日本とフィンランドの間では近年、防衛首脳による相互訪問が、頻繁に実施されている。これは、両国の安全保障協力が着実に深化していることを示している。

2018年5月には、小野寺五典防衛大臣がフィンランドを訪問し、大統領公邸においてニーニスト大統領を表敬した。その後、ユッシ・ニーニスト国防相と会談し、ロシア情勢などについて意見が交わされた。

この訪問から短期間に、10月には河野克俊統合幕僚長がフィンランドを訪問し、2019年2月にはニーニスト国防相が日本を訪問した。

統合幕僚長によるフィンランド公式訪問は、2000年7月以来、18年ぶりであった。河野統合幕僚長はロシア訪問後にフィンランドを訪れ、ニーニスト大統領とニーニスト国防相を表敬したほか、ヤルモ・リンドベリ国防軍司令官と会談した。加えて、フィンランド海軍部隊やフィンランド海軍アカデミーを訪問した。





2019年2月の訪日では、ニーニスト国防相は岩屋毅防衛大臣と会談し、日フィンランド防衛協力・交流に関する覚書への署名が行われた。フィンランドにとって、同種の覚書への署名は10か国目であるが、アジア国家との間では初めてであった。

翻って日本にとってフィンランドは、普遍的価値を共有する戦略的パートナーであり、防衛協力を進展させることは自然の流れといえよう。


(広告の後にも続きます)

軍制服組トップと国防相が立て続けに同じ国を訪問するのは異例


2020年8月には、河野太郎防衛大臣とカイッコネン国防相が、日フィンランド防衛相テレビ会談を実施した。

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の維持、強化に向けて、防衛協力、交流を強力に推進していくことで一致した。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの最中にもかかわらず会談が実施されたことからは、防衛協力進展のモメンタムを維持しようという両国の意志が見て取れる。

パンデミックの鎮静化に伴って、防衛首脳による訪問が再び活性化した。

2022年9月には、フィンランド軍制服組トップであるティモ・キヴィネン国防軍司令官(陸軍大将)が、山崎幸二統合幕僚長の招待により日本を公式訪問した。キヴィネン司令官はウクライナ侵略について、ロシアの戦略的なミスであるという認識を示し、結果としてフィンランドがNATOに加盟することになったと語った。





10月には、カイッコネン国防相が訪日して浜田靖一防衛大臣と会談し、ロシアのウクライナ侵略などによって国際社会が厳しい安全保障環境に直面する今こそ、日本やフィンランドをはじめとする国際社会の結束が重要であることを確認した。軍制服組トップと国防相が立て続けに同じ国を訪問するのは異例であり、フィンランドの積極姿勢が際立つ形となった。

なお、訪日後にカイッコネン国防相は、育児休暇を取得すると表明した。マリン内閣の男性閣僚としては、初めての取得例となった。

2023年5月には、小野田紀美防衛大臣政務官がフィンランドを訪問、カイッコネン国防相、プルッキネン国防次官と会談した。

また、ハイブリッド脅威に対抗するため、専門知識とトレーニングを提供することを目的に設立された欧州ハイブリッド脅威対策センター(Hybrid CoE)や、フィンランドの代表的な防衛産業であるパトリア社を訪問している。

パトリア社は、航空宇宙、安全保障分野に強みを持つ老舗メーカーで2021年に創立100周年を迎えた。株式については、フィンランド政府が50.1%、ノルウェーの大手防衛企業が49.9%をそれぞれ保有している。