好調な日本株の背景と持続可能性

野村アセットマネジメントでは、毎月、世界経済や金融市場の注目点を投資環境レポートとしてお届けしています。

8月の投資の視点は、「好調な日本株の背景と持続可能性」です。

<注目点>

●日本株は東証株価指数(TOPIX)が年初から7ヵ月連続で上昇するなど、極めて堅調な推移をしている。株価上昇率は主要国・地域の中でも上位となったが、背景には国内外の多岐に亘る要因がこの期間に集中した点が挙げられる。

●日本株の上昇の要因が多数あったことは、株価上昇の持続性や、幅広い業種・銘柄の上昇にも寄与したとみられる。米国株の上昇がハイテク株に一極集中したような状況であったのに対し、日本は内需関連株や割安株なども底堅く推移した。

●これまでの株価上昇は、賃上げや、株価純資産倍率(PBR)の底上げなどのガバナンス改革への期待が先行した面が大きい。今後はそうした政策の持続性が注目されていくだろう。

(広告の後にも続きます)

上期は多数の上昇要因が重なる

日本株はTOPIXが年初から7ヵ月連続で上昇するなど、極めて堅調な推移をしている。日経平均やTOPIXの7月末までの年初来上昇率は+20%を超え、また他の国・地域と比較可能なMSCI株価指数では先進国・地域の中で最も好調な市場の一つとなった。

日本株市場が他の国・地域の市場の中でも好調だった背景は、多岐に亘る要因がこの期間に集中した点だと考えられる。グローバル環境の改善といった世界共通の要因に加えて、日本固有の要因、さらにはグローバル要因の中でも他の国・地域と比べて有利だった条件がそれぞれ複数件挙げられる(図2参照)。

グローバル共通の上昇要因の中では、世界的なインフレの鎮静化と、それに伴う利上げ局面終了の期待による部分が大きいだろう。国内外の株式市場は、米国の政策金利の引き上げが依然継続しているにも関わらず、昨年後半以降、その引き上げペースが低下した頃から上昇に転じた。

日本株に相対的に有利に働いた要因には、今年3月以降、米国などの複数の銀行が破綻した際、日本の金融機関は同様のケースにはほぼ当てはまらないと判断された点が挙げられる。また、中国株の低迷と日本株の加速が同時に進んだことから、中国の政治・経済のさまざまなリスクを嫌気した投資家が日本株にシフトしてきたことが示唆されている。

日本固有の要因は数多く、この期間の上昇に特に寄与した部分といえるだろう。

長年停滞に近い状態であった賃上げが、今年度は非常に幅広い企業で実施された。国内外の投資家には、企業の人件費上昇というマイナス面よりも、国内経済の活性化というプラス面が評価された。東京証券取引所のPBR1倍割れ企業への改善要請なども新たな取り組みであり、企業が時価総額を引き上げるための努力を行っていく効果が期待された。