東急不動産とソフトバンクは、東京都港区の竹芝地区において共同で推進するプロジェクト「Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)」で、竹芝地区で収集した人流データや訪問者の属性データ、道路状況、交通状況、水位などのデータをリアルタイムでさまざまな事業者が活用できるデータ流通プラットフォーム(Smart City Platform)を活用し、防災力の強化や来訪者の回遊性向上など都市課題の解決に向けた取り組みをさらに拡大すると発表した。
両社は、豪雨発生時の対応の効率化を検証する実証実験を2022年12月に行い、災害時の情報の収集・発信など複数の作業において所要時間を約50%以上削減できることを検証したという。

Smart City Takeshibaとは

東急不動産とソフトバンクは、一般社団法人竹芝エリアマネジメントが活動を行うエリアで、2019年7月に最先端のテクノロジーを街全体で活用するスマートシティのプロジェクト「Smart City Takeshiba」を開始。2020年度に国土交通省の「スマートシティ実装化支援事業」や「ProjectPLATEAU」、東京都の「スマート東京」に採択されるなど、スマートシティに関する取り組みを進めてきた。

特に災害が多い日本において、災害発生時の対応は大きな課題となっており、首都直下地震で想定されるマグニチュード7程度の地震の30年以内の発生確率は70%程度(2020年1月24日時点、「国土交通白書2020」)と予測されているなど、防災力の強化と防災業務の効率化は都市課題においても重要な位置付けとなっている。

総合デベロッパーとして、手がける都市開発やエリアマネジメントに関する東急不動産の知見と、ソフトバンクのテクノロジーやスマートシティに関する知見をかけ合わせて、街の状況をリアルタイムに把握・情報発信できる防災サービスの導入や、デジタルツインによる災害発生時のシミュレーションを活用した防災力の強化など、竹芝地区のような都市部での課題を解決するとしている。

リアルタイムデータで防災力の強化

現在、災害の発生時には当該エリアにいる人を対象に、ニュースサイトや「LINE」など複数のメディアからさまざまな防災情報が届くことや、自治体から広範囲に発信される情報が街の管理者や施設管理者などの対象ごとに最適化されていないことで、街や施設の管理者などが街の状況を正確に把握した上で、効率的な避難誘導を促すことが難しいという課題がある。

ソフトバンクは、このような課題の解決に向けて、サイロ化された街の防災情報を一つに統合し、街の状況をリアルタイムに把握して情報発信できる防災サービスを開発した。

また、東急不動産とソフトバンクは、この防災サービスを基に自治体が情報収集を効率化する「統合管理UI」を構築して、豪雨発生時の対応の効率化を検証する実証実験を2022年12月に行い、災害時の情報の収集・発信など複数の作業において所要時間を約50%以上削減できることを検証した。

街の情報を含めて災害時の情報を一元管理できるシステムは、自治体の担当者やエリアマネジメント組織の管理者、施設管理者らが、運営の判断や情報収集、施設から来館者への情報発信などに活用できる。この実証実験を通して機能の改善などを行った上で、竹芝地区の情報を統合管理・発信する防災サービスとして、竹芝エリアマネジメントが導入する。

デジタルツインを活用した災害発生時の帰宅困難者の受け入れ対応

災害発生時における竹芝地区の帰宅困難者は、災害発生から数時間後に約4万7,000人、災害発生から3日間は約1万8,000人から3万2,000人までに上ると想定されている。(浜松町駅・竹芝駅周辺地区 都市再生安全確保計画に関する資料)。

東京ポートシティ竹芝をはじめ、一時滞在施設として災害時の帰宅困難者の受け入れを行う施設は増えてきているが、自治体と施設側の情報連携や避難可能な施設の受け入れ対応、来訪者などへの周知や誘導など、アナログな対応に頼ることが多いという課題がある。

そこで、東急不動産とソフトバンクは、正確さや精度を追求した3D都市データの制作技術とハイクオリティーなコンテンツの表現力を持つキャドセンターや、クラウドを活用したアプリケーション、AI・IoTの開発に強みを持つFusicと共に、竹芝地区のデジタルツインを構築し、自治体と施設間の情報連携や来訪者の一時滞在施設への避難、一時滞在施設における入館時の受け入れ対応などの効率化を検証した。自治体や施設管理者から、一時滞在施設の開設情報や満空情報を、「LINE」などを通して帰宅困難者に伝えることで、施設へのスムーズな誘導や受け入れが可能になる。

検証では正確性や迅速性、省力性などについて高い評価が得られ、受け入れ対応においては約70%以上の効率化につながるという結果になった。

今後、検証で得られた結果を踏まえ、自治体や施設管理者、帰宅困難者などがリアルタイムに情報を把握して共通認識を持ち、円滑な避難行動を起こせる環境と仕組みを構築していくとしている。また、東急不動産は検証した一部の機能を2023年4月から東京ポートシティ竹芝に実装しており、災害発生時に円滑な避難誘導を実施することで、安全・安心な施設運営に取り組んでいる。



サイネージによる地区内回遊性の向上

竹芝地区はオフィスやホテル、劇場、商業施設などの集客施設が点在する一方で、来訪者の属性データの捕捉や人流動態の実態を把握できていないことから、竹芝地区全体の集客や回遊性向上が難しいという課題があった。

そこで、東急不動産とソフトバンクは、竹芝エリアマネジメントと連携し、竹芝地区全体の価値向上に寄与する情報の発信を目的として、9施設に合計20台の可動式サイネージを設置。サイネージには、来訪者の人流データや属性データを取得する機能を搭載したカメラを設置し、来訪者の属性や行動パターンを把握することで各施設の販促に活用するとともに、各施設の情報を相互に発信することで相互送客を促し、来訪者の回遊を高める取り組みを進めている。



シェアサイクルに関する情報発信・表示による回遊性の向上

竹芝地区は3方向を海または河川に囲まれていることからエリア内を通る路線バスは少なく、隣接する浜松町地区、芝浦地区への交通手段が不足しており、来訪者が限られた場所で同様の交通手段を使うことで特定の場所に人が集中したり、移動が敬遠されたりするなど、エリア内の回遊性が低下するという課題がある。

回遊性の向上に向けた取り組みとして、東急不動産とソフトバンクは、移動手段が不足している竹芝地区でシェアサイクル「HELLO CYCLING」を提供するOpenStreetなどのシェアモビリティ事業者のデータと連携。竹芝エリアマネジメントの「竹芝公式LINE」や東京ポートシティ竹芝のデジタルサイネージに満空情報を表示するなどの取り組みを進めている。「LINE」やデジタルサイネージなどで交通手段に関する情報を簡単に確認できることで、異なる交通手段の利用を促進するとともに、竹芝地区の回遊性の向上につながることを目指している。




東急不動産とソフトバンクは、今後これらの取り組みで得られた成果を、東急不動産が推進する「広域渋谷圏」をはじめとした新たな都市開発案件や、東急不動産の関連施設へ積極的に導入することで、防災の効率化や街の回遊性向上など都市課題解決の取り組みをさらに拡大していくとしている。