月刊株主手帳から、「CACホールディングス(東証プライム市場。以下、CACHD)のZoom形式のIR説明会に参加しないか」と誘いを受けた。快諾した。

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 CACHDは独立系のシステムインテグレータを生業とする企業。前12月期の決算説明を受けても「IT音痴の僕には、半分ぐらいしか理解できないだろうな」とは思ったが、西森良太社長が登壇し質疑応答も可能だという。実は2点、是非とも聞きたいことがあった。IR説明会は5月22日に行われた。

 知りたかった1点目は、セグメントの1つだった「CRO(医療品開発システム)」事業から、前期第1四半期時点で撤退した理由。撤退の理由は2022年2月時点で「IT関連事業に経営資源を集中するため」と説明がなされていた。

 そして遡る21年12月期の中間期時点のCROの売上高は前年同期比29.0%減収、セグメント利益:3億5300万円の損失となっていた。西森氏はIR説明の中でも、前記の通り「IT関連事業に・・・」と説明した。

 私は「煎じ詰めると利益化が望めないからか」と質問した。西森氏は、首を縦に振った。私は意地悪で質問した訳ではない。逆だ。「撤退は適切な経営判断」と評価したからこそ、確認したかったのである。

 2点目は至25年度の中計で、「DOE5%水準」を打ち出している点だった。CACHDの前期の配当性向は48.5%、今期も20円増配/61.8%計画となっている。そうした状況下で:中計ではDOE5%水準を標榜するとした理由だ。DOE(株主資本配当率)は「(年間配当総額÷株主資本)×100」or「配当性向×ROE(自己資本利益率)×100」で算出される。

 配当水準を示す指標としては、当該期の純益に対する配当額を表す配当性向が一般的。が当期純益は全収益から全ての費用・法人税などを差し引いたものであり、変動幅が大きい。粗利益・営業利益・経常利益が増益・黒字でも、「最終利益は減益・赤字」となるケースも稀ではない。

 従い、最終利益を前提に捉える配当性向は必ずしも株主還元の指標とは言い切れない。CACHDのように、株主資本を基準としたDOEを採用する企業が増えつつあるのはそのためだ。評価したい。

 CACHDが手掛けるインテグレートの範囲は、金融・信託・医薬・食品・製造・サービス等々広い。それぞれ専門のグループ会社が担っている。

 CRO撤退が数字的に明示された前期の中間期決算を契機に、株価は居所を変えている。年初来安値(1368円)から同高値(1768円)まで水準を切り上げ、本稿作成中の時価は1700円余(予想税引き後配当利回り3.7%余)。成り行きを注目したい企業といえる。