【M&Aの成長戦略<第3回>】増米商店とonce inのM&Aはどう進んだ?当事者が感じた戸惑いと不安

第3回目となるM&Aの連載は、前回に続き、once inと、福井を拠点にカニのECを手掛ける増米商店のM&A事例を紹介します。2回目はonce inの代表である長坂賢介氏がM&Aを考えた経緯や経営者としての考えを紹介しました。3回目は、M&Aの進め方をどのようにしてきたのかなどについて触れていきます。

室井(日本M&Aセンター):M&Aを進めていく中で、買い手企業のどこを見ていたのか教えてください。
 
長坂(once in):18年間会社を続けてきた身として、実際にM&Aを進めていくと、戸惑いが多くありました。
 
ここまで事業を進めてきた過程における成功と失敗、そして苦労などを会社とともに経験してきたこともあって、会社と自分が一体化している状態だったためです。
 
当社がM&Aをすることを頭で分かっていても、会社に対する気持ちの整理が付かず、踏み込めない自分に葛藤する日々でした。結局、M&Aを進めて検討を始めてから、2年の月日が経過していました。
 
自身の気持ちにどうしても整理が付かなかった時は、当社を担当してくれた白鳥雄飛さんに相談していました。電話も数回程度ではなく、数えきれないくらい相談しました。電話も日中とかではなくしていて、深夜にかけてしまったこともたくさんあります。メールでの連絡も何度もありました。
 
M&A後の自分自身がどうなってしまうのかなど、漠然とした不安を毎日、抱えていました。会社イコール自分だったこともあり、憂鬱な日々だったことを鮮明に覚えています。
 
室井:白鳥さんは、長坂さんに対してどのように対応していましたか。
 
白鳥(日本M&Aセンター):決断するのは社長であるため、私は、長坂さんに一度も「売った方がいいです」とは言いませんでした。当社はあくまで、M&Aの手伝いをするのが仕事です。
 
私がしてきたのは、長坂さんの決断に寄り添うことだけです。寄り添うという行為にもさまざまありますが、長坂さんのお話を聞くこと、じっくり待つように、電話やメールなどを通じて、そのつどやり取りしました。

経営者もいろいろな方がいます。社長自身の背中を押して欲しい人や背中をさすって導いてほしい人など。経営者は、最終的には自分で決断しなければならないので、決断までのそのプロセスをサポートしてきました。
 
室井:長坂さんは買い手側のどこを特に注視していましたか。

長坂:まずは、経営者の人柄です。そして、一緒になる企業とのシナジーがどれほど見込めるのか見ていました。
 
シナジーという点は、買い手側がプラスになるということももちろん重要ですが、特に当社が抱えている問題を解決できる買い手と一緒になりたいと思っていました。つまり、一緒になることで当社のビジネスをスケールアップさせるような会社を選んでいました。
 
室井:M&Aを進めていく中で大変だったことはありますか。
 
長坂:私がM&Aをしてからすでに1年が経過していますので、当時の状況と今では考え方が変わっています。

いろいろ踏まえると、もっとこうしておけばよかったと思うところや反省もあります。デューデリジェンスは大変だったので、数字関連はしっかりとおさえておくべきだったと思います。

当時は、全てが分からない中、手探りで進む状況でしたが、今を振り返ると、こういう道を通ってきたことで見えるもの景色と、そうでない景色も選択あったのかなと思うことはあります。


(第4回につづく)