米大手暗号資産取引所のBinance(バイナンス)が、暗号資産レンディングを手がけるVoyager Digital(ボイジャーデジタル)の約10億円(約1336億円)の資産購入を撤回したことがわかった。同国内の「敵対的で、確実性にかける規制環境のため」という。

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Voyager Digitalは2022年7月、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)の適応を申請。債権者は10万人以上、資産は10億~100億ドル(約1336億~約1兆3360億円)で、負債も同程度とされていた。当初は暗号資産取引所大手のFTXトレーディングへの資産売却で合意していたが、22年11月の同社の経営破綻により撤回されていた。

Binanceによる買収提案は、Voyager Digitalへ現金2000万ドル(約27億円)を支払い、顧客から預かっている暗号資産を引き継ぐものだった。しかし売買契約書の不備を米証券取引委員会(SEC)から指摘されるなどスムーズにすすまず、3月には米国司法省の訴訟を受け、破綻計画への緊急差し止め命令も下されていた。

4月19日にはBinanceとVoyager Digital、米政府がデジタル資産購入に合意していたが、撤回によりBinanceが支払った保証金1000万ドル(約13億円)とM&Aの解約金は保留するという。Binanceは「米国内の敵対的で確実性にかける規制環境のため、ビジネスコミュニティー全体に影響を与える予測不可能な事業環境を導入した」と発表している。Voyager Digitalの無担保債権者公式委員会はBinanceの対応に失望を表明し、法的措置を取る意向もみせている。