スタイルを持っているのが大人。キーワードは“定番+αの機能性”

日本のスニーカー・カルチャーを黎明期から牽引してきたミタスニーカーズ。同店のディレクター国井さんが考える大人のスニーカーの定義は、履く人自身のパーソナルな部分に起因するという。

「まず前提として、自分なりのスタイルを持っている人が、僕は大人だと思っています。例えば、ニューヨークの街角でヤンキースのキャップを普通に被っているおじいさんって格好いいじゃないですか。同じようにパーソナルな部分が滲み出てスタイルを形成できているのが大人だと思いますし、その上で選ばれたモデルこそが、大人のスニーカーなのではないでしょうか」

要は、自分のパーソナリティと合致したモデル選びが重要ということか。そこで有効な手段が、自分がスニーカーのどういった部分に興味を覚えるかを知ること。国井さんの場合は、履き心地やデザインの革新性。これはスニーカーの本分である、コンフォート性にも直結してくる重要な部分だ。近年は、一般的にもその辺りをセレクト基準にする人が増加し、デザインだけでなく機能性を求める声も高まっている。実際のところ店頭では、どうなのだろうか。

「ブランドでいえば、ホカの人気は継続していますが、今一番勢いがあるのはオン。元々、ニューバランスを履いていた人たちが、次なる一足として選んでいるような印象を受けますね。ただ年間売り上げでいうと、ベタですが1位はナイキの『エア フォース 1』の白×白と黒×黒。ニューバランスも上位人気をキープしていますが、需要と供給のバランスが難しいところ。全体のキ―ワードを挙げるとすれば“定番+αの機能性”。これが今の主流となっています」

たしかに今回、選んでもらった4モデルにも共通している。ここで各モデルを推す理由も聞いてみた。

「ニューバランスの『M990 V6“メイド イン USA”』[①]は予定から1年遅れてようやく一般発売されます。前作に比べるとソールユニットなどの機能面が大幅にアップデートされていて、履き心地も相当よくなっていますね。ユーザーを置き去りにしない進化の仕方をしているのも好感が持てますし、次なるベーシックのベンチマークになる一足だと思います。スネークスキンが特徴的なナイキの『エア・フォース 1』[②]は、実はウィメンズモデル。商品名にウィメンズと記載されているだけでスルーされがちですが、最近のナイキのウィメンズモデルは、メンズにも刺さるような良色が多く、しかも大きなサイズまでフォローされているので侮れません。スニーカーにおける多様性という点でも、いいものはいいということでチェックしていただきたいですね。」

「人気のホカからは、『ホカ オネ オネトー ウルトラ ロー』[③]が推しです。もはや定番モデルですが、今季からゴアテックスが搭載されてバージョンアップ。このカラーリングはホカ直営店とウチのみで販売されるエクスクルーシブカラー。これも定番+機能性ですね。最後は、アシックス スポーツスタイルの『ゲルライト3 OG GTX』[④]。2020年にアシックスとミタスニーカーズで作った『ゲルライト3』のコラボモデルに、バルのアイデアを加えて機能面をバージョンアップ。アッパーはデュラパックの上からプリントを施しているため質感もとてもよくて、今までにないようなマットな感じが面白い一足です。ただ、こちらはすでに即完ソールドアウトしているのでご注意を」

そんな国井さん自身が最近、好んで履いているのが、甲部分が低く設計されたロープロファイルで細身シルエットのモデル。取材時の足元は、アディダスの『サンバOG』。気負わずサラリと履いていて、レザーライダースとデニムの着こなしにもよく馴染んでいた。

「結局、どこにでも売っているモデルをシンプルに履きこなすのが一番格好いいし、大人ってことなんだと思います」

掲載スニーカーの問い合わせ先:ミタスニーカーズ TEL:03-3832-8346

取材・文/TOMMY 撮影/村本祥一、坂下丈洋(ともにBYTHEWAY) スタイリング/小孫一希