モンテネグロ政府は3月23日、暗号資産テラUSD(現テラクラシックUSD)の運営会社Terraform Labs創業者のド・クォン容疑者を拘束したと発表した。クォン容疑者はトークンの価格を不正につりあげた詐欺の疑いで2月に米証券取引員会(SEC)に提訴されており、韓国当局からも証券規制違反で国際手配されていた。

モンテネグロのFilip Adžić内相が自身のTwitterで「モンテネグロ警察は、指名手配されている逃亡者の1人で、韓国籍でシンガポールに拠点を置くTerraform Labsの共同設立者兼CEOである容疑者を拘束した」と明らかにした。クォン容疑者は同国首都ポドゴリツァの空港で偽の身分証明書を所持しているのを発見され拘束されたという。モンテネグロ内務省は、警察がコスタリカとベルギーの偽造パスポートを発見し、ポドゴリツァ空港でドバイ行きの飛行機に乗ろうとした2人の容疑者が拘束されたと発表している。

テラUSDは米ドルと価値が連動するステーブルコインの一つ。法定通貨を価値の担保にするものではなく、アルゴリズムによる発行量の調整で価値が連動する「アルゴリズム型」の暗号資産だった。2022年5月、ビッコイン相場の下落などでアルゴリズムが機能しなくなり暴落。関連する暗号資産のルナも急落しており、損害価値は約400億ドル(約5兆2000億円)規模とも指摘されている。

SECによると、クォン容疑者とTerraform Labは18年4月から22年5月までに20%の高配当をかたり、無登録の暗号資産証券を販売。数十億ドル(約数千億円)を調達していたという。テラの価値の不安定さを不当に隠しており「ステーブルコインに支えられた詐欺だ」として、ニューヨーク州連邦地方裁判所に訴状が提出されていた。

テラの暴落により暗号資産関連企業の破綻も相次いでいる。テラやルナなどに投資していた暗号資産ヘッジファンドのThree Arrows Capital(スリーアローズキャピタル)は22年7月に経営破綻し、同社に融資していた暗号資産レンディングを手がけるVoyager Digital(ボイジャーデジタル)も同月、日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請している。