本連載では元日本マイクロソフト業務執行役員で「プレゼンの神様」とも呼ばれる澤円さんが、「時間とお金」をテーマにコラムをつづります。今回は、多拠点生活を送っている澤さんだからこそ語れる、持ち家と賃貸物件にまつわる話。

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みなさんこんにちは、澤円です。
連載第8回目をお届けします。

新学期・新会計年度を控えて、新生活に向けて準備している方もおられるのではないでしょうか。近所の親しい不動産屋さんも、ずいぶん忙しくしているようです。賃貸物件は、店頭に案内を出す前にどんどん契約が決まっちゃうみたいですね。とくに東京は人口流入がまた増えてきたみたいで、部屋探しの競争もし烈になっているようです(日本経済新聞参照)。

ということで、今回のテーマは「住む場所」にまつわるお金の話。そう、太古の昔から脈々と続く「持ち家 vs 賃貸」のお話です。ボクは「多拠点生活」というタグを自分につけて仕事をしていて、世田谷区、千葉県山武市、軽井沢町に拠点を持っています。

そして、世田谷と山武の家は持ち家、軽井沢は賃貸物件です。つまり、両方の体験を同時進行でしている状態です。そのため、それぞれのメリットとデメリットを同時に体験できています。

一人暮らし用に世田谷にマンションを買ったのが19年前。超駅チカの1LDK/50平米の中古マンションをかなり手ごろな値段で買いました。以前、テレビの取材で自宅にカメラが入ったことがあったのですが、ネットで「澤はずいぶん質素な生活してるな」と書かれてました。ほっといてください(笑)。

もともと一人で暮らしているところにかみさんが来てくれたので、メインの拠点は世田谷になっています。ここは購入して本当によかったなと思います。というのも、駅チカなのでリセールのリスクは少ないというのは大きいですね。

以前、所有者の方が手放しておられたのですが、すぐに次の購入者が現れていました。戸数が少ない小型のマンションなので、持ち家組とは理事会などでお互いすぐ顔見知りになります。その延長でゆるやかな世間づきあいなどもあり、「人の目がある安心感」を得ることもできています。

山武市の物件は、これまた信じられないくらい安い値段で購入することができました。国産の高級セダンと同じくらい、という値段感です。山武市は「全国自治体魅力度ランキング」で最下位という、なかなかロックな存在です。オリンピックのサーフィン会場になった上総一ノ宮と同様に、九十九里海岸という素晴らしい砂浜に面しているステキな場所なのですが、知名度がとにかく低い。それもあって、物件は基本的にどれも手ごろな値段で購入できます。そして、このあたりは賃貸物件がほとんどなく、住むなら購入するしかない場所です。


澤さんが中古で購入した山武市の別邸。ご自身でDIYをしてアップデートしているそう

ちなみに、バブル期はこのエリアも地価がおそろしく高騰したそうです。家とは別の場所に35万円で購入した駐車場用の100平米の土地は、最高値のときは1300万円だったとか。バブルがいかに異常な時代だったかがわかりますね。

ただ、このエリアを購入するのは値段的なハードルは確かに低いのですが、生活面で考えると気を付けなくちゃいけないことがいくつもあります。

まずは医療。東京都は比べ物にならないくらいに脆弱です。医者にかかりたいなと思った時、そこに行く手段を確保する必要があります。家族がいて、かつ運転ができるというのが条件になってきます。家の価格は安くても、車の維持費なども考慮しないといけないですね。そして、お子さんがいるなら教育のことも考えなくてはなりません。ボクには子供がいないのでここは問題にはなりませんが、小さいお子さんがいる方は、毎日の送迎をセットにして生活をデザインする必要があります。

そして、軽井沢。ここは賃貸物件です。なにせ、購入するには高すぎます! ボクが手を出せるようなものではございません。ただ、賃貸物件は結構豊富にあります。旧軽井沢エリアはかなり賃貸でも高額な物件が多いですが、中軽井沢などになってくると、手ごろな物件がたくさんあります。BBQなどができる広さの庭が付いた3LDKの一軒家が、15~20万円程度で借りられます。「そんなに安くないね」とお思いかもしれませんが、なにせ場所が避暑地の聖地・軽井沢。都市部で同じ値段で借りられたとしても、QOLはずいぶん差があると感じる方も多いでしょう。

とにかく自然は豊かでありつつ、町としての機能も充実しています。東京まで新幹線で1時間程度という便利さも魅力ですね。


軽井沢のご自宅での1枚

このエリアに賃貸物件が多い理由は、やっぱりこのエリアは冬の寒さが厳しいのと、車中心の生活になるため、高齢になってくると生活がしんどいようです。もともと別荘として所有していた物件を、手放して賃貸に出している方が増えているとか。ボクがお借りしている物件も、所有者であった高齢の女性が一人で住んでおられたようなのですが、冬場の生活が大変ということで引っ越しをされたとか。今は、不動産屋さんが買い取って自社物件として賃貸に出しています。

そのため、いわゆる大家さんというのが存在しない物件です。管理なども気軽に不動産屋さんに相談できるので、我々夫婦は非常に気が楽です。ただ、ボクら夫婦も年は取るわけで、その時に売却しようとすると、高価な物件はリスクになりそうだな、ということで軽井沢は賃貸にしております(そもそも買えないし)。家具類ももともと備わっているものが使えたので、家への投資金額はかなり抑えています。

ということで、持ち家と賃貸を同時に体験しているボクとしては、「両者に優劣はない」というありきたりな結論になっちゃうんですよね。というより、持ち家・賃貸の契約だけの視点ではなく、自分たちのライフスタイルやライフステージと照らし合わせるのが一番大事なことは間違いありません。

そして何より大事なのは「自分の感覚を信じる」ことかなと。どうしても他の人の選択が気になってしまうかもしれませんが、人生の基本である「衣・食・住」の一つである「住」は、やっぱり自分の価値観が一番大事ですね。

そして、ボクら夫婦がとてもラッキーだったのは、どの物件も不動産屋さんに恵まれたことです。とにかく親身になって、かつボクの考えを尊重してあれこれ提案してくれました。こういう相談相手を見つけるのも、不動産で失敗しないためには大事な要素だと思います。

この記事も含めていろんな情報が発信されていますが、「最後は自分で決める!」という強い意志を持ちましょう!

澤円(さわ まどか)

株式会社圓窓 代表取締役、元・日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 専任教員。
 
立教大学経済学部卒業後、生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、大手外資系IT企業に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。直属の部下のマネジメントだけではなく、多くの社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を得ている。2015年より、サイバー犯罪に関する対応チームにも参加。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動中。また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオなどの出演多数。