白色矮星のイメージ。

 近年、白色矮星の近傍の宇宙空間において、岩石物質が存在している証拠が多数観測されている。このことは白色矮星を周回する地球型惑星の存在を示唆し、そのような惑星で生命が存在しているかもしれないのだ。3月10日にアメリカ天文学会が発行する「アストロフィジカルジャーナル」で、その可能性について検討を行った研究論文が公表された。

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 カリフォルニア工科大学らの研究者よって行われた研究によれば、白色矮星のうちの25~50%は、惑星膠着物質を伴っているという。白色矮星は、そのような物質の周回軌道を不安定化させる要因をはらんでいる。だがその静かで長い冷却期間の間に、ハビタブルゾーンに惑星が形成され、生命誕生に必要な大気や水が存在できる可能性があるという。

 太陽のような恒星系で生命が誕生するための熱エネルギーは、恒星内部で起きる核融合反応に起因する。だが白色矮星系では、熱エネルギーが主星で新たに生成されることはない。かつて膨大なエネルギーを放出していた恒星の燃えカスである白色矮星が保有する熱が、どのくらい穏やかに冷えていくかが、生命にとっては非常に重要な問題だ。

 いっぽうで白色矮星近傍を周回する惑星は、白色矮星との距離が非常に近いことに起因して、潮汐力によって熱エネルギーが発生する可能性もあるという。

 つまり白色矮星を周回する惑星では、白色矮星の放射熱と、潮汐加熱が生命の命運を握る。白色矮星の冷却プロセスを数値解析シミュレーションで考察すると、ハビタブルゾーンは10億年で3分の1ないしは7分の1にまで縮小していくという。だが潮汐加熱を考慮したシミュレーションによれば、惑星がとりうる公転軌道パラメータによっては、生命が持続できる期間が60億年~100億年にまで及ぶ可能性も示唆された。

 今回の研究により、白色矮星系で生命が誕生し維持されていくかどうかは、白色矮星の冷却速度よりも、むしろ惑星の公転軌道要素で決まる潮汐加熱によって左右されることが明らかにされた。宇宙には様々な場面で生命が誕生できる可能性があることに改めて驚かされる。