■I.米国株式市場

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●1.NYダウの推移

 1)3/13、NYダウ▲90ドル安、31,819ドル(日経新聞より抜粋
  ・米国で銀行の破綻が相次ぎ、金融システムを巡る不安の高まりを背景に銀行株を中心に売られ、昨年10月下旬以来の安値となった。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)が3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとの観測が浮上し、相場には一定の支えとなった。
  ・3/10のシリコンバレーバンク(SVB)に続き、暗号資産(仮想通貨)企業への融資が多いシグネチャーバンクも3/12に経営破綻した。破綻の波が広がることへの警戒感が強く、地銀を中心に売りがかさんだ。NYダウの構成銘柄ではないが、ファーストリパブリックバンクは▲62%安、コメリカは▲28%安と下げがきつかった。NYダウの構成銘柄では金融大手のゴールドマンサックスやJPモルガンチェースが安い。
  ・市場では「銀行は融資を縮小し、米景気は減速しやすくなる」との声も聞かれた。
  ・景気悪化への懸念からクレジットカードのアメリカン・エキスプレスや化学のダウの下げも目立った。NYダウの下げ幅は取引時間直後に▲280ドルを超えた。
  ・売り一巡後は下げ渋り、NYダウの上げ幅は+330ドルに達する場面もあった。
  ・市場では「状況が落着くまでFRBは利上げを停止するだろう」との声が聞かれた。ゴールドマンサックスやバークレイズは、3月のFOMCで政策金利が据え置かれる可能性を指摘した。
  ・米利上げの一時休止観測が浮上するなか、米国債に買いが広がった。10年物国債利回りは一時前週末比▲0.29%低い、3.41%と約1ヶ月ぶりに4%を割込む場面があった。相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株に買いが入りやすく、ソフトウェアのマイクロソフトが+2%高で終えた。スマートフォンのアップルと顧客情報管理のセールスフォースも高い。
  ・投資家心理を測る指標となる米株の恐怖指数(VIX)は前週末比+7%ほど高い26台半ばで終えた。不安心理が高まった状態とされる20を大きく上回った。

【前回は】相場展望3月13日号 日本株: 米国株に対し強い相場も、難問山積・過熱感 米国株: SVB銀行問題で、金融危機へと波及?注目

 2)3/14、NYダウ+336ドル高、32,155ドル(日経新聞より抜粋
  ・シリコンバレーバンク(SVB)など米銀の破綻をきっかけに売り込まれた金融株の一角は急反発し、投資家心理の支えとなった。NYダウは前日までの5営業日で▲1,600ドル余り下げていたため、目先の戻りを見込んだ買いも入り、NYダウの上げ幅は一時+480ドルを超えた。金融システムを巡る不透明感が重荷となり、このところ下げがきつかった金融株が上昇した。「破綻が回避されるなら売られ過ぎ」とみた買いが入り、一部のヘッジファンドの銀行株買いが伝わったのも好感された。
  ・NYダウの構成銘柄ではないが、ファーストリパブリックバンクは+27%高、ネット証券のチャールズシュワブは+9%高となった。銀行株の株価指数、KBWナスダック銀行株指数は+3%上昇した。
  ・朝方発表の2月消費者物価指数(CPI)はエネルギー・食品を除くコア指数が前年同月比+0.5%上昇と、市場予想+0.4%を小幅に上回ったが、前年同月比では+5.5%上昇と同じだった。インフレ加速への過度な警戒が和らいだのも株買いを後押しした。
  ・ただ、買い一巡後は上げ幅を縮める展開だった。米格付け会社のムーディーズは3/13、米国の銀行システム全体の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。米国の金融システムに対する不安感は根強く、相場の重荷となった。
  ・顧客情報管理のセールスフォース、半導体のインテル、クレジットカードのアメックスの上げが目立った。電気自動車のテスラ、半導体のエヌビディアが上げた。追加の人員削減計画を発表した交流サイトのメタは+7%高で終えた。一方、バイオ製薬のアムジェンやドラッグストアのウォルグリーンなどディフェンシブ株が下げた。

 3)3/15、NYダウ▲280ドル安、31,874ドル(日経新聞より抜粋
  ・欧州市場で3/15、スイスの金融大手クレディ・スイスの経営不安から欧州株市場が大幅安となり、米株市場にも売りが及んだ。金融システムの不安定化が景気を冷やすリスクが警戒され、金融株を含む景気敏感株が下げた。
  ・経営不振が続くクレディ・スイスを巡り、筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクの会長が「追加の出資要請には応じない」と述べたと伝わった。シリコンバレーバンク(SVB)など米銀の経営破綻が相次ぐなか、金融システムが一段と不安定になるとの懸念が高まった。金融株は軒並み売られ、NYダウ構成銘柄ではJPモルガンチェースが▲5%安、ゴールドマンサックスが▲3%安で終えた。
  ・金融システム不安が米景気の減速につながるとの懸念から、航空機のボーイングや化学のダウなど景気敏感株も売られた。市場では、銀行が流動性を確保するために貸出に慎重になり、企業活動が冷え込むとの見方がある。
  ・NYダウの下げ幅は一時▲720ドルに達したが、売り一巡後は下げ幅を縮小した。相対的に安全資産とされる米国債に資金が集まり、米長期金利が一時3.3%台と前日終値3.69%から大幅に低下。割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株には押し目買いが入りやすく、ネット検索のアルファベットや交流サイトのメタ、ソフトウェアのマイクロソフトも上昇した。製薬のアムジェンなどディフェンシブ株も買われ、相場を下支えした。
  ・取引終了間際には、スイス国立銀行(中央銀行)が「クレディ・スイスは必要な資本と流動性を満たしているが、必要なら流動性を供給する」との声明を発表した。これを受けて、NYダウはさらに下げ渋った。