(株)矢野経済研究所はこのほど、完全栄養食の国内市場調査の結果を公表した。感染拡大を背景とした栄養摂取意識の高まりや認知度向上により市場は拡大、「一般消費者の認知が急速に広がっている」とする。2022年の市場は144億円(2021年比2.3倍)と推計、2030年には546億円(8.5倍)に達すると予測している。調査期間は2022年11~12月。調査員によるヒアリング、関連文献や社内データベースによる調査を実施した。完全栄養食の定義は「1日に必要な栄養素を3分の1以上含む、もしくはカロリー当たりの配合量が基準値を上回り、全般的な栄養摂取や完全栄養であることを訴求した加工食品」とした。

矢野経済研究所によると完全栄養食は2013年頃にアメリカから広がり、日本では2016年に市場が立ち上がったが、ベンチャー企業による参入が大半で、市場は小規模で推移。2019年には日清食品(株)の参入で話題になったが、メインチャネルがECでありプロモーションも限定的だったことから、一般消費者への浸透は進まず、需要は新しい物好きなど一定の層に留まっていた。

しかし、新型コロナの流行を背景とした栄養摂取意識の高まりによって2020年、2021年と市場は拡大。2021年末頃からベースフード(株)によるCVS(コンビニエンスストア)など小売店への全国展開、2022年の日清食品による新ブランド「完全メシ」の発売により、一般消費者の認知が急速に拡大。健康意識の高まりから健康食品でのビタミン・ミネラルなど基礎栄養摂取への再評価やプロテインブームによるたんぱく質摂取が進んでおり、“完全栄養”という訴求がフックとなって、健康意識の高い消費者だけでなく漠然と健康を気にしている層の需要を獲得している。

チャネル別では通信販売の比率が高いが、2022年はベースフードと日清食品が市場をけん引し、CVSや量販店など小売店の比率が3割を超える見通し。商品別ではパンや麺、米飯など主食を完全栄養食とした商品が、粉末や飲料と比較して1食の食事と置き換えやすく、抵抗感が低いこともあり需要を取り込んでいる。ベースフードや日清食品がフレーバー展開や商品カテゴリーの強化などラインアップの拡充に意欲的であり、引き続き活発な商品展開やプロモーション展開が予想される。

〈米麦日報2023年2月6日付〉