日本型職務給は果たして導入が進むのだろうか?


岸田総理は施政方針演説で「物価上昇を超える賃上げが必要」と述べ、持続的な賃上げを実現するために、リスキリング支援、日本型職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動など、労働市場改革を進めると表明した。

ところで、“日本型職務給”とは、どのような賃金形態なのだろうか。具体的な内容が示されていないので詳細は不明だ。6月までに日本企業に合った職務給の導入方法を類型化し、モデルを示すようである。

日本大百科全書(ニッポニカ)によると、職務給とは「労働者の職務を基準として決められる賃金形態」で、1930年代にアメリカで開発され、1950~60年代には、ヨーロッパにも導入が広がっていった賃金形態である。

日本でも、大企業などで導入されるようになったが、日本企業の大半は勤続年数や年齢に応じて賃金が決まる年功型の賃金形態を採用している。

賃金は上がらず、男女の賃金格差も是正されないのは、職務に応じてスキルが適正に評価されない“日本型雇用慣行の弊害”とする見解も示されるようになっている。

そのため、年功型賃金や終身雇用を見直す動きが加速している。なぜ、これまで日本では普及しなかったのだろうか。高度経済成長期には、企業は従業員を大量に雇い入れ定着させる必要があったからだ。

定年まで勤められる終身雇用制度や、勤続年数に応じて賃金を上げていかなければ人材の確保が難しかったのである。企業収益が順調に伸びていたこともあって、当時はそれが可能であった。

高度経済成長期にはそれほど必要とされなかった“職務給”が、施政方針演説で取り上げられたのは、日本経済がそれほど行き詰まっていることなのかもしれない。