2023年度に行われる代表的な5つの法改正とは

改正が行われる代表的な4つの法律とは

2023年に法改正が行われるものとして、①労働基準法②労働安全衛生法③消費税法④電子帳簿保存法の4つが中小企業にとっては大きな法改正となります。
もちろん他の法律でも改正は行われますが、期限延長などを除けば上記4つの法改正は業界によって対応が求められます。

それぞれの法律の概要や変更点の概要を確認して法改正に備えていきましょう。

改正の具体的な内容とは

①-1労働基準法(中小企業における時間外労働の割増賃金率引き上げ:2023年4月より)

労働基準法は、労働者の権利や義務、労働環境などを規定している法律です。労働環境の改善や労働者の権利の強化を目的に、労働基準法の改正が行われています。

例えば令和3年には、過労死を防止するための取り組みや残業代の支払い義務の強化、働き方改革の推進などが、令和4年には、派遣労働者に対する保護措置の強化、テレワークの利便性の向上、労働災害の防止などが盛り込まれました。

今回の令和5年度の改正を見ていきましょう。

中小企業においては、時間外労働の割増賃金率が低いことが問題となっています。そのため、政府や労働関係者が中小企業の時間外労働の割増賃金率を引き上げることを提案しています。

割増賃金率とは、普通労働時間外における賃金の上乗せ割合で、普通労働時間外に対してどの程度多く支払うかを示します。

今回の改正では、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%になることがポイントです。

2023年3月31日までは中小企業であれば、一か月の時間外労働が60時間以下であっても、それ以上であっても賃金は、通常の1時間あたりの賃金の25%を上乗せした額でした。

しかし2023年4月1日からは月60時間超の残業割増賃金率は大企業、中小企業ともに50%という形に引き上げられることになります。

詳細に関しては、厚生労働省のHPをご確認ください。

今まで中小企業においては、時間外労働の割増賃金率が低いため、時間外労働をする従業員にとっては、それに見合った賃金を受け取れないという問題がありました。そのため、政府や労働関係者は、中小企業における時間外労働の割増賃金率を引き上げることが決定した形となります。

①-2労働安全衛生法に基づく省令改正(安全衛生上の一定措置の実施義務化):2023年4月より)

安全衛生上の一定措置とは、労働者の健康や安全を保護するために、雇用者が負うべき措置のことです。それらは、労働環境の改善や危険性の除去、従業員の教育や訓練などが含まれます。

安全衛生上の一定措置の実施義務化は、雇用者に対して、労働者の健康や安全を保護するために必要な措置を実施する義務を負わせるものです。この義務は、労働基準法や労働安全衛生法などの労働法によって定められています。

2023年4月1日から、危険有害な作業を行う事業者は一定の保護措置が義務付けられることとなります。
その対象となるのは①作業を請け負わせる一人親方等②同じ場所で作業を行う労働者以外の人が対象となります。

詳細に関しては、こちらも厚生労働省HPにファイルがありますのでそちらを確認しましょう。

③労働基準法の省令改正(デジタルマネーによる賃金支払い解禁)

労働基準法の省令改正により、2023年4月からデジタルマネーによる賃金支払いが解禁されます。現在は労働基準法により、賃金は現金で支払う必要がありますが、この改正によってデジタルマネー(電子マネーやクレジットカードなど)による賃金支払いも認められるようになります。

この改正によって現金に頼らなくても賃金を受け取れるようになるため、従業員にとっては現金を持ち歩かなくても済むという利便性が生まれます。また、給与支払いをデジタル化することで、支払いのスピードアップ・賃金の不正受給を防ぐ効果も期待されます。

電子マネーやクレジットカードなど資金移動業者の提供サービスへの給与支払いを行うためには、従業員の同意や労使協定の締結が必要なため注意が必要です。

企業のメリットとしても、銀行振込手数料の削減に繋がり、従業員が多いほどコストカットに繋がることが期待されます。

③消費税法(適格請求書などの発行や保存・インボイス制度)

消費税法改正により、適格請求書などの発行や保存・インボイス制度が導入されます。
現在の消費税法により、商品やサービスを購入する際に消費税を支払う必要がありますが、インボイス制度は売り手と買い手が取引をする際に、請求書(インボイス)を交換しそれをもとに消費税を申告する制度です。

業者間の取引で購入側が仕入税額控除の適用を受けるためには、インボイス発行業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。

この改正により、商品やサービスを購入する際に、適格請求書(インボイス)を受け取ることが必要になります。そして、適格請求書をもとに、消費税を申告することになります。インボイス制度により、消費税の申告がスムーズになり、不正な税金の脱税を防ぐ効果が期待されています。

国税局のHPを見ると、以下のようにまとめられています。

  • 適格請求書(インボイス)とは、
    売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
    具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

    インボイス制度とは、
     売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
     買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
    (※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

    引用:国税局HP

自社が売り手であれば登録事業者となるための対応が求められますし、買手の場合は取引先が登録事業者でなければ仕入税額控除の適応が受けれなくなるため、確認と対応が必要となります。

④電子帳簿保存法(電子取引における電子データ保存の義務化・デジタル化)

電子帳簿保存法は、電子取引において、電子データの保存の義務化・デジタル化を指します。現在、紙による帳簿や取引記録を保存することが一般的ですが、電子帳簿保存法により、電子取引においても、電子データによる帳簿や取引記録の保存が義務づけられるようになります。

この法により、電子取引においても、取引記録を保存することが義務づけられるため、取引の証拠として利用することができるようになります。また、電子データによる保存は、紙による保存よりも管理がしやすく、検索も容易になるため、経営管理上の利便性が生まれます。

今回の改定で2024年1月1日より、電子取引で発生した請求書・Eメールでのやり取り等のファイルは、電子保存が義務化の対象です。そして電子保存したもののみが申告書類として認められるようになります。
認定にあたっては、「真実性」「可視性」の二点を満たす必要性があります。

電子帳簿保存法の改正は影響が及ぶ範囲が広く、適切な対応が求められるため、国税局でも特設サイトを作り詳細を解説しています。対応の際にはぜひご確認ください。

各法改正と健康経営の関係とは

今回行われる各法改正は、それぞれ

  • 長時間労働の是正 
  • 安全衛生の順守 
  • 事務や経理などバックオフィスの煩雑さ軽減による働き方改革
  • など中身を見ていくと健康経営との関りも見られます。

中小企業ほど長時間労働や電子化の遅れも指摘されていますし、国としても対応を迫ってきていることからこれらの法改正をきっかけに健康経営のさらなる推進が図れるとよいでしょう。

関連コラム

  • 長時間労働者への対応に関する取り組み

各改正を詳細をチェックし、チームで対策していきましょう。

本記事では令和5年法改正のなかでも中小企業への関わりが強いものを取り上げていきました。

見て頂いた通り、改訂項目が多いことや特に消費税法・電子帳簿保存法の改定などは関わる部署も広く影響も大きいことため、単一部署だけでの改正対応は困難な量です。
各法改正毎にチームを作り、対応漏れのないように対策していきましょう。

改正時期は大変ですが、健康経営に繋がる面もあるため、改正対応と健康経営の推進が両輪で回るように対応していきましょう。