国際農研は1月12日、「マダガスカルでの米の収量増加が農家の栄養改善に有効であることを明らかにした」と発表した。

東京大学大学院農学生命科学研究科・マダガスカル国立栄養局との共同研究による分析結果。研究成果は国際科学専門誌「Food Security」電子版(日本時間2023年1月11日)に掲載された。

世界の飢餓人口は約8億3000万人とされており、特にサブサハラ・アフリカは最も割合が高い。その背景として作物の生産性が「極めて低い」ことが挙げられ、米の10a当たり収量は約200kgで日本の半分以下となっている。

マダガスカルは1人当たりの米消費量が日本の2倍以上、国民の半数が稲作に従事する稲作大国であるにも関わらず、国民の2人に1人が栄養不足に陥っているのが現状。栄養改善には米の収量を上げることが課題な一方、米だけでは微量栄養素を摂取できない面もあるため、これらの栄養素も含めた定量的な研究が求められてきた。

研究は2018~2020年、マダガスカルの農村地域(ヴァキナカラチャ県)600家計を対象に、生産や消費などのモニタリングを実施。収量が栄養供給に与える経路や影響を解析した。

その結果、収量が10a当たり約100kg増加したとき、平均世帯で1人当たりのエネルギー供給量が212kcal増加することが分かった。微量栄養素は亜鉛0.7mg・鉄分3.1mg・ビタミンA21.3μgRAE増加すると推定。また、収量増加によって米消費量や現金収入が上がり、市場での肉・魚・野菜の購入量も増えた。米の販売については、市場へのアクセスが良いほど促進しており、市場の重要性も示唆された。

国際農研はこれまでも、マダガスカルでの収量向上を目指し効率的な施肥技術や新品種の開発を行ってきた。今回の研究も合わせ消費や購買行動の多様化に繋げ、飢餓ゼロを目指す。

〈米麦日報2023年1月16日付〉