食に関する仕事はどんなものがあるのか

食に関する仕事は多岐にわたります。代表的なものを例に挙げると食品メーカーや食品卸などの「販売系」、コックやパティシエ、料理教室の先生など調理することでお金をいただく「調理系」、食事献立の作成や栄養指導をする「栄養素系」、ソムリエやバーテンダーなどお酒に関するサービスを行う「お酒系」などがあります。

国家資格の取得が必要な仕事もあれば、資格がなくても働ける仕事もあります。また就職して食品メーカーや食品卸の会社で勤務するスタイルや、資格をとってフリーランスで働く人も多くおり、多種多様な働き方ができる業種といえるでしょう。

ほかにも、民間の団体が発行している食に関する資格もたくさんあります。食と一言でいっても料理・食器・スタイリング・お酒・販売・紅茶など幅広いです。これから食に関する仕事を職業にする人は、自分が食のどの分野に興味があるのか、よく考えてみてください。

食品メーカーの仕事

食の物流や販売に関わる仕事には、商品をつくる食品メーカー、スーパーやデパートなどの小売につなぐ食品卸、実際に商品を販売するスーパーやECサイトなどが考えられるでしょう。

食品メーカーには、調味料やレトルト食品、冷凍食品、乳製品、酒類など原材料を加工して販売する会社と、塩や砂糖などの主に原材料になる商品を販売する会社があります。

会社の中にも、商品を売るための戦略を立てるマーケティングや商品企画の部署、研究開発をおこなう部署、販促をするPRや営業する部署、人事や法務などをおこなう部署などさまざまな部署があります。。

食品卸・食のECサイト

食品卸の大きな役割として生産された商品と、スーパーやデパートなどの小売をつなぐ役割があります。メーカーの代わりに食品を販売するのもその1つで、スーパーやデパートといった小売店やレストランなどに代わり、商品を仕入れ安定して供給します。

他には商品を製造するメーカーと小売の間の立場を活用した情報提供、食品の安全管理、商品の調達、需給調節、物流効率化、販売のサポートなどがあります。

消費者が商品を購入する場所として最近注目されているのが、ECサイトです。最近ではAmazonや楽天、大手スーパーなども積極的に食品のEC化に乗り出しており、少しずつですが取引も広がっています。

安定した収益が見込める製造・物流・販売業

食品卸や食品メーカー・食品製造の会社はいろいろありますが、基本的に会社につとめる形になるので安定した収益が望めます。会社という組織の中で自分が希望する部署で働けるかはどうかはわかりませんが、いろいろな部署を見ることで様々な側面から食に関する知識を構築できるのも利点といえるでしょう。

会社にもよりますが、オンオフがつけやすく自由時間が設けやすいというのもメリットです。休日や夜間の自由時間を利用してスキルアップのための勉強にあてることもできます。

仕事によっては個人ではできないような大きな取引案件にも関われますし、やりがいのある仕事ではないでしょうか。

資格がなくても働ける食に関する仕事

資格がなくても働くことができる食に関する仕事をご紹介します。「料理や食が好き」「料理やお菓子をつくるのが好き」という人におすすめです。最初から職業として志す人もいますが、結婚、出産などのライフステージの変化の中で職業とする人もいます。

フリーランスで働く人、レストランや和菓子店で経験を積むなど働き方は様々です。経験や実績が増えれば収益も増えていきますが、安定した収益を獲得するまでは比較的時間がかかる仕事が多いです。パティシエや和菓子職人の中には、人気店で修行を積んだあと独立する人も多くいます。

料理研究家

料理研究家になるのに特に必要な資格は必要ありませんが、料理の専門的なスキルや知識、オリジナリティーが必要です。料理に関する独自のアイディアを活かしたレシピ開発や商品の企画などの仕事があります。テレビや雑誌などのメディアに出る先生も多く華やかなに見える職業ではありますが、収入は一定ではなく、経験や実績により差があります。

料理教室の先生

料理教室の先生には、大手のクッキングスクールに所属して料理を教える先生と主に自宅を解放して個人で料理を教える先生の2パターンがあります。家庭料理をはじめ、イタリアン、エスニック料理、パン作り、お菓子作りなど教える料理のジャンルは様々です。特に資格は必要ありません。実績と経験が収入に関わってくる仕事ですが、生徒さんが増えると固定収入が増え安定する職業ではあります。

パティシエ

フランスでは国家資格であるパティシエですが、日本では必要な資格はありません。製菓の専門学校や調理師専門学校で学んだ後にレストランやホテル、洋菓子店に就職するのが一般的です。そこで働きながらパティシエとしてお菓子作りの経験を積んでいきます。日本の国家資格である菓子製造技能士とは異なります。

和菓子職人
和菓子職人になるために資格は必要ありません。製菓の専門学校や調理師専門学校で学んだ後に和菓子店や和菓子メーカーに就職して目指す人もいれば、和菓子店等に弟子入りをして修行を積んで一人前になる人もいる業界です。日本の伝統的な技を会得し、技術を磨くのはもちろん、新しい和菓子を生み出す独自性も必要となる職業といえるでしょう。

料理評論家

食に関するテレビや雑誌で目にすることも多い料理評論家。料理の批評・評論だけではなく、食にまつわるコラムや食の流行や傾向などを推察するなど幅広い料理の知識が必要になる仕事です。特に資格は必要ありませんが、安定した収入を得るためには社会的な認知が必要になり、一朝一夕ではできない仕事といえます。

食に関する資格

管理栄養士や、栄養士、調理師、ワインソムリエ、食育インストラクターなど食に関する資格には様々なものがあります。民間の団体が認定する資格と国が試験、認定をおこなう国家資格の2つがありますが、資格を取得する前提条件(実務経験が必要・栄養士資格がないと受験できないなど)があるものもあります。

民間の資格も国家資格も資格を取得するまでにある一定の金額や勉強の時間が必要です。働きながらとれる資格もあれば、資格によっては大学や専門学校など専門の養成施設に通わないといけないものあります。資格をとるのはお金がかかりますが、専門性がでて仕事の幅が広がるのも事実です。

ある程度人生プランを決めて、どうなりたいかを考えてから取得すると資格取得の目的も生まれ、金額もシミュレーションできるので、事前準備も必要でしょう。

民間の団体が発行している食の資格

国が認定・発行している仕事ではないものの、食に関する知識を学ぶことができる民間の資格をご紹介します。民間の団体が認定する独自の資格ですが、専門的な知識を深く学びたいという人におすすめです。

対面での講座受講ができるのか、通信なのか、勉強の仕方や資格取得にかかる値段も団体によって様々。似てるような資格もたくさんあるので、まずは資料請求して何を学ぶことができるのか、資格を取得したら何ができるのか、どんな仕事につけるのかなどリサーチしましょう。

民間の資格の多くがピラミッド型になっており、上の資格は最初に取得できる資格よりも難易度、金額ともに上がっていく傾向があります。勉強時間が確保できるのか、ゴールの設定をどこにするかを考えておくのも大切です。

野菜ソムリエ

野菜ソムリエは日本野菜ソムリエ協会が発行している民間の資格です。野菜の興味深い知識を学べるのはもちろん、栄養素の吸収率が高まる野菜の食べ方や逆に吸収を阻害する組み合わせなど生活に役立つ知識も学ぶことができます。資格は3段階に分かれており、一番最初に取得できる野菜ソムリエの資格取得者は、2020年7月の段階で 58,713 名。芸能人やアナウンサーなどの取得者も多いことで知られています。取得後の進路は、野菜専門の料理教室を主宰したり、レシピ開発開発、スーパーマーケットや百貨店で消費者へのアドバイスをするなど様々です。

食育インストラクター

食育インストラクターの資格は、NPO法人日本食育インストラクター協会が発行している民間の資格です。服部学園「服部栄養専門学校」の校長で知られる服部 幸應先生が理事長をつとめられています(2022年12月での情報)「食育」の理解や実践のレベル等により、インストラクター「資格」を5段階に分けて認定。食育に関して興味・関心があれば初心者でも学ぶことができます。

ソムリエ(ワイン)

フランスやイタリアでは国家資格でもあるソムリエですが、日本では認定をおこなっているのは民間の団体です。日本ソムリエ協会(J.S.A.)と全日本ソムリエ連盟(ANSA)という2つの団体がそれぞれソムリエ試験の認定をおこなっているので、資格をとる時は気をつけましょう。日本ソムリエ協会(J.S.A.)のソムリエ資格の受験する場合は、前提として、酒類・飲料を提供する飲食サービスや販売業などに3年以上従事していることが条件になります。(一部例外あり)対して、全日本ソムリエ連盟(ANSA)のソムリエ資格を受験する場合の条件は、申し込み時点で満20歳以上であることだけ。資格をとってどのような仕事をしたいかによって選んでもよいかもしれません。

フードアナリスト®

フードアナリストとは、一般社団法人フードアナリスト協会が認定している民間の資格です。食の情報を調査、分析し客観的かつ合理的に発信することを目的としてつくられた資格で、4級から1級まであり、食に関する知識を体系的に幅広く学ぶことができます。他の資格と同様、実績や経験が必要になりますが、資格取得後は食関連の企業で商品開発やレシピ開発、PR、ミステリーショッパーや様々な分野で活躍をしている人もいます。

フードコーディネーター

フードコーディネーターの仕事は、レストランやホテル、食品メーカーなどの食をビジネスにした会社で新しいレシピの開発やレシピ撮影の演出、レストランやホテルのプロデュース、CMやテレビ番組の撮影の企画、コーディネートなど多岐にわたります。レシピだけではなくテーブルクロスや器などトータル的な空間の演出、プロデュース業をしたいという人におすすめです。

国家資格の食の仕事

医者や弁護士になるために必要な医師国家試験や司法試験と同じく、食に関連する国家資格もあります。資格を取得するためには、専門の学校で決められた期間学ばなければいけない、規定の年数の実務経験が必要など受験資格を満たすための前提条件があるので、気をつけましょう。

調理師

食の国家資格の1つである調理師。資格を取得するためには、専門学校などの養成施設を卒業し申請する方法と2年以上の実務を経験した後、試験に合格する方法があります。試験は公衆衛生学、栄養学、調理理論などマークシートでおこなわれ、実務の試験はありません。独学で試験に挑む人もいれば通信講座で勉強をしてから試験に挑む人もいます。調理師資格がなくとも業務として調理することは可能です。

管理栄養士

管理栄養士とは、専門的な知識で健康な人はもちろん、病気や高齢者への栄養指導や栄養管理、給食管理をおこなう仕事です。管理栄養士になるためには、いくつかの方法がありますが、養成施設である大学(4年制)で学んだ後に国家試験を受けて合格する方法が最短です。養成施設である短大や専門学校で学び卒業すると栄養士の資格が取得できますが、管理栄養士の受験資格を得るためにはそこから決められた年数の実務経験が必要になります。食に関する資格の中では、長い期間が必要となる資格です。

菓子製造技能士

国家資格でもある菓子製造技能士。和菓子と洋菓子の分野に分かれており、2つとも1級と2級があります。学科・実技ともに試験があるので知識だけではなく一定の技術も求められる試験です。資格を取得するためには、製菓の専門学校を卒業するか規定年数の実務経験が必要となります。

食の仕事はこれから注目の分野

従業員の健康保持や増進を配慮することは、仕事効率や生産性が高められ経営面においても成果が期待できるというのが健康経営の考え方で、近年その重要性などが再認識されつつある分野です。

健康経営のニーズが高まるとともに、食に興味関心をもつ人が増えてくるでしょう。なぜなら、食と健康は切っても切れない関係にあるからです。食の仕事は、人の命をつなぐ大切なものですが、それだけでなく健康を助け仕事パフォーマンスを高める未来のある仕事でもあります。

ライフステージの変化に伴う独立や、他分野からの転職者も多い分野です。アイディア次第ですが、人生経験がプラスに役立つ職業でもあります。食の仕事は、自分の健康だけではなく家族、企業の経営もマネジメントできる意義のある仕事といえるでしょう。

食に関する仕事は多種多様でやりがいがある

食に関する仕事は、多種多様にあります。企業でおこなう仕事の他、スキルアップとして資格を取得する人や、資格を手に独立して働く人も多い分野です。民間の資格、国家資格などの資格も多く存在しますが、資格を取得したからといってすぐに仕事が増えて報酬が上がるかというとそうではない場合も多く、経験と実績がものを言う分野でもあります。