2022年10月から育児休暇制度が見直され、より柔軟に育休を取得できるようになりました。日本における男性の育児休暇取得率は13.97%です。

「収入を減らしたくない」
「取得しづらい雰囲気がある」

国は男性の育児休暇を推奨していますが、デメリットを感じ思うように取得できない現状があるそう。今回は男性が育児休暇を取得するのにあたって感じるデメリットとその解消法をご紹介します。

男性が育児休暇を取得するメリット

育児休暇を取得することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 育児の負担を夫婦で分担できる
  • 子どもの成長に立ち会える
  • 次の子どもを検討する余裕ができる
  • 父親としての自覚が芽生える

子どもが生まれるとこれまでの家事に加えて、育児という大きな負担が発生します。食事を与えたりおむつを替えたりするのはもちろん、寝たり起きたりを繰り返す子どもの行動に目を配らせたり、朝晩問わず泣く子どもの相手をしたりしなければいけません。

この負担を夫婦で分担することで、父親も親としての自覚が芽生えたり、次の子どもを検討する余裕ができたりするでしょう。ほかにも、日々成長する子どもの様子を見守れるメリットもあります。

特に生後1か月は母親の休養が必要です。出産で消耗した体力を回復させ、今後の育児に向けて英気を養わなければいけません。また、産後はホルモンバランスの乱れや、はじめての育児による疲れで、精神的なバランスを崩す女性もいます。

そのため、父親が母親のそばで、暮らしや育児をサポートして心の支えになることが大切です。

男性が育児休暇を取得するデメリット

育児休暇を取得することで、以下のようなデメリットが考えられます。

  • 無給になることで家計収入が減る
  • 出世に影響する懸念がある
  • 同僚に負担をかける可能性がある
  • 家庭に入ることで外部情報が得づらくなり、情報弱者になる

仕事への影響が大きな懸念となるようです。特に担当していた仕事に長期間の穴を開けることで、同僚に負担をかけたり今後の出世に影響したりする可能性があります。育児・介護休業法では、育児休暇を取得する従業員に対する企業の不当な扱いを禁じていますが、いち従業員としてキャリアプランを考えたときにブランクはデメリットに感じられるでしょう。また職場で得られていた業界や社内の情報が長期休業によって得られなくなれば、業務復帰やその後の業務進行に影響が生じる恐れがあります。

育児休暇のデメリットとして大きいのが収入の減少です。共働き世帯が増えている現代の日本において、夫婦どちらか、もしくはその両方の収入が入らなくなる不安は大きいでしょう。子どもが生まれ、今後ますます支出が増えることを考慮し、収入を減らしたくないと考える夫婦も多いようです。

男性が育児休暇を取得する現状

実際に日本人男性の育児休暇取得率は低い現状があります。データから育児休暇取得率を解説しましょう。

育休を取得しなかった理由

2018度に厚生労働省が発表した「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業」によると、男性が育休を取得しなかった理由として以下が多くあげられています。

  • 収入を減らしたくない
  • 取得しづらい雰囲気
  • 業務が忙しい

収入面の不安が大きく見られる一方、男性が育児休暇を取得しづらい職場があるのも、育休を取得できなかった理由のひとつとされています。育児休暇を申請して「男が育休を取得して何をするのか」、「男の育休取得は理解できない」と言われた例もあります。女性の社会進出が推進されている一方で、いまだ家事・育児は女性がやるものという認識が根強く残っていることを象徴する結果といえるでしょう。

男性の育休取得率

厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休暇取得率は13.97%。一方、女性の取得率は85.1%であることから、男女の取得率に大きな差があるといえます。男性の育児休暇取得率は依然として低い現状です。しかし男性の前年度取得率は12.65%であったことから、わずかながら上昇傾向にあります。男性の育児に対する考え方や向き合い方、社会的な風潮が変化しつつある結果です。この変化をサポートする動きが、国や企業には求められます。

女性の配偶者・パートナーに対する取得希望

2018度に厚生労働省が発表した「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業」によると、女性のうち配偶者・パートナーに育児休暇を取得してほしいと思わない人は60%以上でした。その理由は、しゅふJOB総研(運営会社:株式会社ビースタイル ホールディングス)が2022年に発表した『男性の育休取得』をテーマに主婦層を中心とする就労志向の女性に行ったアンケート調査の結果から見えてきます。

  • 夫が家事育児をせず却ってストレスがたまる
  • 夫のキャリアダウンに対する懸念
  • 夫の仕事感が鈍ることに対する懸念

夫のキャリアダウンや仕事感が鈍ることに対する懸念は、収入の減少や出世への影響に直結します。一方、「夫が家事育児をせず却ってストレスがたまる」という回答は48.1%と、そのほかの回答と比較して最も多い結果でした。家事・育児は女性がするものという認識は職場だけでなく、家庭を持つ男性にも根強く残っているのかもしれません。

ただし本調査では、男性の育児休暇取得について「取得するべき」と回答した女性が87.5%という結果でした。前述した60%以上の女性が「配偶者・パートナーに育児休暇を取得してほしいと思わない」という結果は、厚生労働省によって2018年に発表されたものです。女性の家事・育児に対する考え方や育児休暇に対するとらえ方は変化しつつあるといえるでしょう。

男性の育児休暇に関するデメリットを解消する方法

男性の育児休暇取得には収入の減少や出世への影響といった懸念があり、実際に取得率は10%台と低い傾向にあります。これらのデメリットや現状に対応するべく、国が提示する支援策をご紹介しましょう。

産後パパ育休(出生時育児休業)

2022年10月に新たに創設された産後パパ育休制度。通常の育児休業とは別に、男性の育児休暇に対する懸念を払拭するべく見直された制度です。

  • 子どもの出生後8週間以内で、4週間まで取得できる
  • 2回に分けて取得可能
  • 労使協定を締結していれば、労働者の合意範囲内で休業中も仕事ができる(就業可能日数に上限あり)

上記が産後パパ育休制度のポイントです。これまでも男性の育児を推奨する目的でパパ休暇制度がありましたが、それにかわる制度として通常の育児休暇制度以上に柔軟に休暇を取得できるよう配慮されています。特に休暇期間を分割できたり休暇中も仕事ができたりすることで、職場にかける負担や仕事感が鈍るといった懸念も解消されるでしょう。

育児休業給付金や社会保険料の免除

収入の減少という懸念に対応するのが、育児休業給付金や社会保険料の免除制度です。育児休業給付金とは、企業に勤める従業員が育児休暇を申請するともらえる給付金のこと。雇用保険でまかなわれており、育児休暇開始時の賃金日額のうち67%が支払われます。ただし育児休暇取得7か月以降は賃金日額の50%です。もちろん産後パパ育休制度を利用する男性も活用できます。

さらに育児休暇期間は社会保険料が免除されます。2022年10月に改正された育児・介護休業法によって、同月内に14日以上の育児休業などを取得した場合は、当該月に限って保険料が免除。手続きは事業主が年金事務所に書類を提出するのが一般的です。事業主の支払い分も免除されるため、育児休暇の取得が決まったら相談するとよいでしょう。

くるみんマークや健康経営優良法人

従業員の子育てを支援している企業もあります。くるみんマークが付与されている企業は男性の育児休暇取得を推奨しているのでチェックしてみてください。次世代育成支援対策推進法にもとづき、厚生労働大臣が子育てサポート企業として認定するくるみんマーク。男性の育児休暇を含めた育児に関わる休暇取得率が20%以上ならくるみんマーク、50%以上ならプラチナくるみんマークが付与されます。育児休暇の取得率が認定に関わっているので、くるみんマークに認定されている企業なら男性でも育児休暇を取得しやすいでしょう。

また健康経営優良法人のなかには、従業員の働きやすい環境を整える取り組みを進める企業もあります。企業が経営理念に基づいて、業績や組織価値の向上を目的に従業員の健康維持・増進に取り組む健康経営。心と体の両面から健康促進事業を展開します。取り組み方は従業員の身体的・精神的健康の維持はもちろん、働き方改革の推進やワーク・ライフ・バランスの見直しなど企業によってさまざまです。経済産業省では健康経営銘柄制度を設けて、健康経営に優れた企業を選定しています。健康経営優良法人なら、育児休暇を取得しやすい雰囲気が期待できるでしょう。

デメリットに感じる点を明らかにして、育児・仕事にとって最適な選択をしよう

男性の育児休暇取得に対するデメリットとその解消法をご紹介しました。収入面の不安は育児休暇給付金や社会保険料の免除などで払拭できる可能性があります。また取得しづらい雰囲気を懸念するなら、くるみんマークや健康経営優良法人に認定された企業がおすすめです。職場の繁忙期や仕事感が鈍る不安があるなら産後パパ育休制度を利用すれば、より柔軟に育児休暇を活用できるでしょう。

育児休暇や産後パパ育休制度は労働者の権利です。企業に勤めるほとんどの人が取得可能なので、企業に確認してみてください。ただしパートナーが育児休暇の取得を望んでいない場合もあります。まずは家庭でよく話し合い、育児と仕事を両立した最適な選択をしましょう。