「毎日残業ばかりで心身ともに疲れている」
「サービス残業が多く、残業代を全額受け取れていない」
仕事をしている中で、このような残業に関する悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。残業が続くと身体面や精神面、金銭面で大きなストレスになるでしょう。
2018年には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。その中に、残業時間の上限規制が含まれています。しかし実際のところ、長時間の残業はゼロにはなりません。なかには残業代が支払われない、いわゆるサービス残業をさせられるケースもあります。
この記事では、残業についての理解を深めていただくために、残業の種類や残業手当、およびサービス残業について解説します。
残業には2種類ある

実は法律上では残業という言葉は存在しません。労働基準法では、「時間外労働」と呼ばれています。
労働時間には、下記2種類があります。
- 所定労働時間
- 法定労働時間
所定労働時間を超えた労働が時間外労働、いわゆる残業です。
また残業にも、下記2種類があります。
- 法定内残業
- 法定外残業
法定内残業
残業のうち、法定労働時間の範囲内で行った残業が法定内残業です。
就業規則で、下記内容で定められている企業を例に説明します。
- 勤務時間が9時から16時まで
- 休憩時間1時間
この企業の所定労働時間は6時間です。
ある日、従業員が18時まで残業したとします。
8時間働いているため、就業規則上では2時間の残業です。
しかし労働基準法で定められている「1日8時間」の範囲内なので、これは法定内残業に分類されます。
法定外残業
残業のうち、法定労働時間を超えた残業が法定外残業です。
就業規則で、下記内容で定められている企業を例に説明します。
- 勤務時間が9時から18時まで
- 休憩時間1時間
この企業の所定労働時間は8時間です。
ある日、従業員が19時まで残業したとします。
9時間働いているため、就業規則上では1時間の残業です。
この場合は、労働基準法で定められている「1日8時間」の範囲を超えたため、法定外残業となります。
残業手当について

前の項目で、残業には法定内残業と法定外残業があると説明しました。
このうち、法定内残業については、残業手当を払う法的な義務は存在しません。したがって残業手当の支払いについては、就業規則にのっとった形となります。
ここでは、法定外残業での残業手当について説明します。
時間外労働
時間外労働とは、平日に1日8時間を超えて行った労働のことです。時間外労働については、基本給の1.25倍の残業手当が支給されます。
深夜労働
深夜労働は、平日の午後10時から午前5時までの労働です。深夜労働に対しては、基本給の1.25倍の残業手当が支給されます。
休日労働
休日労働は、文字通り休日に労働することです。休日には
- 法定休日
- 所定休日
の2種類があります。法定休日と所定休日では、残業手当の額が異なります。
法定休日
法定休日とは、労働基準法で定められた労働者の休日のことです。
労働基準法第35条では、
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない
②前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
とされています。
引用元:e-Gov法令検索労働基準法
法定休日に労働した場合は、基本給の1.35倍の残業手当が支給されます。
所定休日
所定休日とは、会社の就業規則で定められた休日のことです。別名、法定外休日ともいいます。例としてあげられるのは、夏季休暇や年末年始の休暇です。
所定休日に労働した場合は、基本給の1.25倍の残業手当が支給されます。
休日深夜労働
休日の午後10時から午前5時までに行った労働が、休日深夜労働です。前項で説明した法定休日に深夜労働をした場合は、基本給の1.6倍の残業代が支給されます。
なぜ1.6倍かというと、深夜労働の残業手当(基本給の1.25倍)と休日労働の残業手当(基本給の1.35倍)の合算だからです。
サービス残業は労働基準法違反である

残業手当が支払われない、いわゆる「サービス残業」は今も存在します。しかしサービス残業は労働基準法違反です。ここではサービス残業の種類や、サービス残業に関する相談先をご紹介します。
サービス残業の種類
サービス残業とされるものには、以下のようなものがあげられます。
- 定時にタイムカードを切らされ、その後も働かされる
- 始業時間前から働かされる
- 固定残業代制を理由に残業手当が支払われない
- 15分単位や30分単位などで残業時間をカットしている
サービス残業に関する相談先
働き方改革で残業時間削減が進められている日本ですが、まだまだ長時間残業やサービス残業で悩む人が多い現状です。サービス残業や残業手当未払いについては、1人で悩まずに専門機関に相談しましょう。
主な専門機関は以下のとおりです。
労働基準監督署
企業が労働関係の法律に基づいて運営されているかを監督する機関です。残業手当未払いなどの違法行為があった場合、立ち入り調査や是正勧告を行えます。
社会保険労務士
社会保険労務士は労働問題の専門家です。サービス残業や残業手当未払い、パワハラなどの相談に対応してくれます。
弁護士
弁護士は、サービス残業や残業手当未払いについて、法的根拠を持って対応してくれる存在になります。残業手当の請求手続きを代行することも可能です。
サービス残業や長時間残業に苦しんでいる人は転職も検討しよう
残業そのものは法律違反ではなく、問題なのは、サービス残業や長時間残業が一般化している状況です。
サービス残業や長時間残業が続くことは、金銭的な問題だけにとどまりません。心身に大きなストレスを与え、うつ病や過労死など命に関わることにもなるのです。
現在サービス残業で苦しんでいる人は、サービス残業や長時間残業がない企業への転職を視野に入れて行動しましょう。健康経営を推進している企業であれば、長時間残業を改善するための取り組みも行っているので、選択肢に入れることをおすすめします。