労働力人口の減少によって長時間労働や人手不足などの問題に直面する近年、スマートワークという働き方が注目されています。今後もますます深刻化する労働市場の課題に対応しながら、業績の安定・向上を図るためには従来の働き方を見直す必要があるでしょう。

変化しつつある一人ひとりの価値観やワークスタイルを支えるスマートワークは、好きな場所で暮らしながら働きたい、プライベートと仕事を両立したいといった個人の想いを尊重します。今回はスマートワークの具体例や導入メリット、スマートワーク導入に役立つツールをご紹介します。

スマートワークとは

情報通信機器を利用して、場所や時間にとらわれずに働く新しい働き方をスマートワークといいます。近年増加傾向のテレワーク・リモートワークはスマートワークを具体化した働き方のひとつです。パソコンやモバイルデバイス、インターネット回線を活用することで、オフィス以外でも業務を遂行できます。

スマートワークが目指すのは生産性の向上です。少子高齢化によって労働力が不足し、人手不足や労働時間の長期化などが問題となっている近年。また働き方が多様化して、一人ひとりの仕事に対する価値観やワークスタイルが変化しつつあります。それらに対応するべく注目されているのが、ITやICT技術です。インターネットを活用することで従来の働き方を変え、多様化するワークスタイルにも対応可能。スマートワークが労働市場の課題を解決し、生産性を向上させる手段として活用されています。

テレワーク・リモートワーク

自社オフィスから離れた場所で仕事をするテレワーク・リモートワーク。それぞれteleは「離れた場所」、 remoteは「遠隔」を意味し、ほぼ同義で使われます。自宅はもちろん、コワーキングスペースやカフェなどを活用した働き方として、ICT技術の発展によって実現しました。テレワーク・リモートワークの働き方によって、居住地を問わず優秀な人材を確保できる利点があります。

ワーケーション

Work(働く)とVacation(休暇)を組み合わせたワーケーションは、オフィスを離れ観光地やリゾート地を拠点にして仕事をします。ICT技術の発展によって、仕事とプライベートの両立も図れるようになりました。ワーケーションは自然豊かな地域で仕事することによる作業効率の向上や、長期休暇を取得できない場合でもリフレッシュできる働き方として注目されています。

フレックスタイム制

就業時間にとらわれず、従業員自らが始業時刻と終業時刻を決められる働き方がフレックスタイム制です。それぞれのライフスタイルに合わせて勤務時間を調整できるので、通院や子どもの送り迎え、役所・銀行への用事など仕事とプライベートを両立できます。また通勤時間をずらすことでラッシュアワーを避けた出勤も可能です。介護や育児などの理由で時短勤務を選ばざるをえなかった人も、フレックスタイム制ならフルタイムで働けるかもしれません。プライベートとの両立を図りながら自由な働き方を実現する方法として、注目を集めています。

スマートワーク導入のポイント

仕事とプライベートを両立させる働き方として注目されるスマートワーク。実際に、総務省が発表した「通信利用動向調査」によると、新型コロナウイルスの影響もあり近年のテレワーク導入率は増加傾向です。テレワークが浸透する一方で、対応すべき課題も見えてきました。

スマートワークのメリット

スマートワークには以下のようなメリットがあります。

  • 生産性の向上
  • ワーク・ライフ・バランスの実現
  • 優秀な人材の確保

通勤にかかる金銭的・時間的コストが削減されることで、より業務に集中できるでしょう。また通勤ラッシュや早朝通勤によって感じていた精神的負担も、スマートワークを活用して軽減できます。通勤にかかる時間が削減され、プライベートの時間が増えればワーク・ライフ・バランスも図れるでしょう。育児や介護をしながらでも働きやすく、家庭や趣味の時間の確保も可能です。さらに居住地や働き方を問わないスマートワークは、労働力不足の課題にも対応。個人の働き方を尊重することで、より広く多様な人材を確保できます。これまでは育児や介護を理由に職場を離れなければならなかった人たちも引き続き働けるので、人材の確保や育成に効果的です。

導入の課題

スマートワークには以下のような課題があげられます。

  • 導入にあたっての制度調整
  • 業務評価制度やマネジメント方法の見直し
  • コミュニケーション機会の減少
  • 情報漏えいのリスク対策

新たにICTを活用したテレワークを導入する場合、業務フローや労務管理、人事評価制度などの見直しが必要です。対面で行われていた業務の流れが変わることで、業務効率や成果に支障が出る場合があります。あらかじめ業務フローを確認し、長時間労働や業務怠慢を防ぐための労務管理、人事評価制度の確立が重要です。特にコミュニケーション機会が減少することで、マネジメントや評価がこれまで通りにできないといった課題があげられます。意識的にコミュニケーション機会をつくったり、業務効率化ツールを活用したりしてコミュニケーションへの配慮が求められるでしょう。

オフィス外で業務情報を取り扱うので、セキュリティ対策にも注目。不正アクセスや情報漏えいを防ぐため、データの取り扱いや社用端末の持ち出しについて、セキュリティガイドラインを作るなどして対応する必要があります。

スマートワークを効率化するツール

効率的にスマートワークを進めるためのツールとして、以下のようなICTツールがあります。

  • チャットツール
  • Web会議ツール
  • 情報共有ツール
  • 電子署名ツール

コミュニケーションを促進する手法として取り入れたいのがチャットツールです。従来の電話やメールから即時性・利便性を向上させ、会話のように気軽に情報共有できるツールとして注目されています。また離れたところでも顔を合わせてコミュニケーションできるWeb会議ツールは社内外で活躍するでしょう。

ICTを活用する以上、ペーパーレス化は必須事項です。情報をクラウドで管理したり申請業務をデジタル化したりしてワークフローシステムを見直す必要があります。そこで情報共有ツールや電子署名ツールが活躍するでしょう。

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スマートワークと健康経営

スマートワークが解決する健康経営課題

健康経営が向き合う課題を解決する手法のひとつとして、スマートワークが注目されています。健康経営の推進において、働き方改革は大きな課題です。少子高齢化や育児・介護との両立、価値観の多様化といった課題を解決するために、働き方を見直す必要があります。

長時間労働の是正や適正な休暇の取得推奨はもちろん、スマートワークの導入も働き方課題に対応するでしょう。テレワークやフレックスタイム制の導入により多様な働き方が認められれば、従業員のワーク・ライフ・バランスの実現や身体的・精神的健康の促進につながります。

スマートワークが健康経営を推進します。従業員一人ひとりが健康で生き生きと働くために、スマートワーク導入の観点から健康経営と向き合うのもよいでしょう。

スマートワークの事例

日本経済新聞社は働き方改革を通じて成長する先進企業を選出する「日経スマートワーク大賞2022」を決定しました。柔軟な働き方支援や社内外の多様な人材・先進技術の活用を通して、働き方課題に対応する事例をご紹介します。

ダイキン工業

産学連携や他社との共同開発によって社外人材を活用し、生産性や品質の向上に取り組んでいます。大学の研究者と社員を相互交流させて人材育成を推進。希望者全員が70歳まで働けるようシニア社員の活躍の場も創出しました。人材活用やイノベーション、市場開拓といった分野で注目を集めています。

アサヒグループHD

ARデバイスを用いて、生産現場でリモートワークを実現。工場の技術指導者に拡張現実(AR)技術を活用したリモートワークを推奨し、工場現場での遠隔アクセスを可能にしました。さらに多様な働き方を支える仕組みも拡充。コアタイムのないスーパーフレックス制度を導入したり在宅勤務を活用したりしてライフスタイルに合わせた働き方を推進しています。

SOMPO HD

社員のスキル・キャリア開発へ積極的に取り組んでいます。従業員の能力向上や人材育成を目的に研修費用を拡大。若手社員向けの短期海外研修やキャリアプランニング研修などが導入されました。さらに次世代リーダーの育成や自立的なキャリア形成をサポート。女性登用にも積極的で、2020年度末の課長相当職以上は国内企業の全体平均を大きく上回りました。さらに健康経営を目指す取り組みとして社員の健康維持・増進に努めています。

スマートワークが支える多様なライフキャリア

スマートワークの具体例や導入メリット、スマートワーク導入に役立つツールをご紹介しました。人手不足がますます深刻化する時代に、業績の安定・向上を図るためには人材確保が大きな課題です。変化しつつある一人ひとりの仕事に対する価値観やワークスタイルに対応するためには、働き方改革が欠かせません。その手法としてスマートワークは引き続き注目されるでしょう。

スマートワークは個人がワーク・ライフ・バランスを実現しながら、生産性を高める有効な手段です。ただし従来の働き方とは異なるため、これまでにない課題に対応する必要があります。社内制度を見直したりスマートワークを推進する効率化ツールを活用したりして、自分らしいライフキャリアを築いてください。