年の瀬が迫ると、世間は慌ただしく動き出します。そんな1年の終わりに話題になりやすいのが、国公認の節税対策として知られる「ふるさと納税」です。

ふるさと納税比較サイトを運営する『ふるさと納税ガイド』によれば、2021年に納税義務者のうち、ふるさと納税を実行した割合は約13.2%となっています。かなり便利な制度ですが、大半の人はまだふるさと納税をしていないのが現状。「制度がよく分からない」「おトクなのは知っているけど面倒でやっていない」という声もよく聞きます。

さらに、フリーランスは会社員に比べてふるさと納税の計算が複雑になりやすく、まだ二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ファイナンシャルプランナーとしても活動する筆者が、フリーランスのふるさと納税をさまざまな角度からなるべくわかりやすく解説していきます。

執筆:齊藤颯人

FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身も現役フリーランスで、当事者ならではの情報発信に強み。

ふるさと納税とは?

ふるさと納税とは、めちゃくちゃ簡単に説明すると「自分が住んでいる以外の自治体への寄付制度」です。

現代の日本は、進学や就職などで地元を離れることも当たり前です。そうなると、地元を出ていった人たちの納税先は地元ではなく、転居先の自治体になります。つまり地元の自治体は税金を払ってもらえないので、ある意味で「育て損」というのが現状。

こうした現状を変えるべく、「納税者がお世話になった自治体に納税し、恩返しする」というのが、ふるさと納税の理念です。

▲人口流出の現状(出典:総務省)

しかし、ふるさと納税が上記の効果しかない「単純な寄付」だったら、ここまで浸透しなかったでしょう。ふるさと納税のミソは「返礼品」と「節税効果」にあります。

ふるさと納税をされた自治体は、納税額の3割以内(10,000円の納税→3,000円相当以内)で、地元の特色を活かした「返礼品」を納税者に返せます。自分たちの自治体を選んでくれた納税者へのお礼というワケです。

しかも「ふるさと納税」は、恩返しのための制度とは言いつつ、納税可能な自治体は出身地に限りません。縁もゆかりもない自治体にも納税できるので、返礼品が魅力的な自治体を選べばOK。自治体側もそれを分かっているので、魅力的な返礼品を打ち出すことで税金をゲットしています。

ふるさと納税は節税面でもおトク?

そして、もう1つの特徴である節税効果を見ていきましょう。

ふるさと納税は、納税額から2000円の自己負担額を差し引いた額が、「寄付金控除」として控除扱いになり、所得税や住民税の節税になります。

▲控除額計算の仕組み(出典:総務省)

細かい計算式や上限額はのちほど見ていきますが、「返礼品」と「節税効果」がふるさと納税の特徴であることはご理解いただけたでしょう。

(広告の後にも続きます)

ふるさと納税の限度額/計算方法

ふるさと納税はめちゃくちゃおトクな制度ですが、残念ながら納税額に上限があります。そして、その上限額を計算する式が複雑なのも特徴で、かなり簡略化した式でも以下の計算は行う必要があります。

控除限度額=(住民税所得割額×20%)÷(90%-所得税率×1.021%)+2000

上記の式に自分の住民税額や所得税額をあてはめ、自己負担を2,000円に抑えられる金額にあたりをつけなければいけません。これを自分で計算できる方は少ないのではないでしょうか。

しかし、会社員の場合は救済策があります。会社員は基本的に同じ給与を毎月受け取る働き方なので、同じ収入額なら所得税や住民税額もだいたい一緒。そのため、収入と家族構成などがわかれば、おおまかなふるさと納税の上限額がカンタンに算出できるようになっているのです。

たとえば、総務省は以下のように「ふるさと納税の上限額目安」を公表していますし、より詳細な額を知りたい場合には、ふるさと納税関連サービス各社が提供する「ふるさと納税シミュレーター」を使えば、数字を入れていくだけで計算をせずおおまかな上限額を把握することが可能です。

▲ふるさと納税の上限額早見表(出典:総務省)

【ふるさと納税 控除限度額シミュレーター】

しかし、フリーランスの場合はすこし厄介です。くわしくは後述しますが、会社員向けのシミュレーターは基本的に使えず、上限額を把握するハードルが上がってしまいます。