UXに絶対的な正解はありませんが、優れたUXにはいくつかの共通点があります。ユーザーエクスペリエンスの構成要素の理解に欠かせないのが、各要素がもたらす結果を調査することです。
この記事では、ユーザーエクスペリエンスを構成する、6つの要素と5つの体験を紹介します。
UXとは、6つの要素の集合体である
『Design for How People Think』の著者であるジョン・ウォーレン氏は、UXとは以下の6要素の集合体であると述べています。
- 視覚(Vision)/注意(Attention)
- 道案内(Wayfinding)
- 記憶(Memory)
- 言語(Language)
- 意思決定(Decision Making)
- 感情(Emotion)
ウォーレン氏は続けてこのように述べています。
以下の図に示すように、一般的に脳は、独自の脳領域に位置する非常に異なるプロセスが一体となり、私達一人ひとりが唯一の経験として認識するものを創ります。
認知神経心理学者の友人は、これは解剖学とプロセスの両方を極端に単純化したものだと言うでしょう。しかし、プロダクトデザインと神経科学の接点となるような、合理的な包括的テーマがいくつかあります。
「経験」は単一ではなく、多次元的でニュアンスに富み、多くの脳内プロセスや表現から構成されていることに、私たちはみな同意できるはずです。
▲出典:ジョン・ウォーレン著『Design for How People Think』
この6要素を認識したうえで重要なのは、「UXは単一の存在ではなく、さまざまな要素の集合体だ」という理解です。そのなかには、以下のような内容も含まれています。
- 使いかたを覚えるのは簡単か?
- ユーザーのニーズに応えているか?
- 楽しく、魅力的か?
- 自分がコントロールしているように感じられるか? それともシステムにコントロールされているように感じられるか?
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UXがもたらす5つの体験
UXの6要素は、次の5つの体験をもたらします。この「5つの体験」こそが、UXを構成するカギとなるのです。
1. 感情的体験
感情は、インターフェースのデザインによって引き起こされることもあれば、それを体験することによって引き起こされることもあります。
たとえば、お店に入って気に入ったものがあったとします。見つけたときは大きな喜びを感じるかもしれませんが、その商品を買わなければ、店を出た時点でその体験は終わってしまいます。
安全性に懸念のある環境でオンラインショッピングをしていたら、クレジットカード情報を入れることに不安を感じますよね。人の感情は、環境にも影響されます。
2. 物理的体験
製品本体、パッケージなど、触れることのできる物理的なものもユーザーに影響を与えます。
ユーザーインターフェイスや製品の機能、マーケティング方法なども物理的体験に含まれます。
3. 文脈的体験
文脈的体験は、物理的な場所であれ、オンラインコミュニティであれ、ユーザーを取り囲んでいる環境を指します。職場から家に帰ってくつろいだ気持ちになったり、Webサイトにアクセスして安心するのは、環境のおかげだといえるでしょう。
週末に外食するより、料理をしながらポッドキャストを聞くのが好きな人がいるのも、環境に好みがあるためです。どのような環境を好むのか、その環境をどれだけ楽しんでいるのかによって、文脈的体験は異なります。
4. 習慣的体験
環境は期待に結びつきます。たとえば、混んでいるレストランに入ると、きっと料理が美味しいだろうと期待しますよね。これは、混雑している状況と、その店が人気である理由を結びつけて考えているためです。
直感的に操作できるアプリやWebサイトを作ろうとして失敗してしまう原因は、UXの原則がかならずしも正しく適用されていないためです。デザイナーが行動心理学の基礎知識を持たず、チームメンバーが適切に協力できないと、優れたUXは実現できません。
5. 社会的体験
社会的体験は日常生活の一部としてだけでなく、バーチャルの世界にも存在します。また、2人以上のユーザーのあいだだけでなく、ユーザーと環境のあいだにも成立します。
社会的体験をデザインする際には、1対1の会話、公共の場での自然な出会い、一緒に過ごす集中した時間など、どのような種類の相互作用を創出しようとしているのか、そして製品がユーザーをどのように結びつけられるのかを考えることが重要です。