「このままでは餓死する」金正恩“ミサイル乱射”の陰で苦しむ国民

北朝鮮は2日、またもや巡航ミサイルを発射した。その一方、国民の間からはこんな声が漏れている。「腐った月がさっさと過ぎないと、このままでは餓死する」。

朝鮮半島で「腐った月」と呼ばれるのは本来、旧暦の閏月である。しかし今の北朝鮮では、生活の最も苦しい毎年1月のことを指すようになった。寒さで市場の人出が減って儲けが少なくなり、様々な病気も流行する。さらに、肥料にする人糞集めに動員される「堆肥戦闘」も加わるなど、1月にはろくなことがないのだ。

さらに北朝鮮国民を苦しめているのは、穀物価格の上昇だ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、平城(ピョンソン)市場でのコメ1キロの価格が、年初の4000北朝鮮ウォン(約68円)代後半から、1月25日の時点で5500北朝鮮ウォン(約93.5円)まで上昇した。

コロナ禍以降、不景気が続いており、零細商人は1日の儲けが1000北朝鮮ウォン(約17円)にも満たない。1キロ2500北朝鮮ウォン(約42.5円)のトウモロコシですら、気軽には買えない。

ちなみに白米ではなくトウモロコシ飯を主食とする場合、1日に1.2キロから1.5キロが必要になる。また、1回の炊事に必要な薪も2500北朝鮮ウォンもする。これでは生活が成り立つわけがない。

デイリーNKが定期的に物価調査を行っている両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)では、1月21日の時点で、コメ1キロが5400北朝鮮ウォン(約91.8円)で、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)では5100北朝鮮ウォン(約86.7円)で、それぞれ2週間で5.9%、3.9%上昇した。

昨年の北朝鮮の農業生産量は、一昨年を上回ったと伝えられている。韓国の農業振興庁は、2023年の北朝鮮の農業生産量は、前年より31トン増加した482万トンに達したと推測している。

しかし別の内部情報筋は、コメ、トウモロコシ、大麦、アワなどの生産量は多かったものの、2022年に比べると品質が悪くなったと、朝鮮労働党中央委員会総会の分科会で示されたと伝えた。可食部分が少なかったということだろう。また、増加した31万トンでは、北朝鮮全体で25日分にしかならない。

そもそも482万トンでも、需要には全く足りていない。国連食糧農業機関(FAO)と国連世界食糧計画(WFP)の推測では、550万トンの穀物が不足している。

穀物価格の上昇に追い打ちをかけている一因と見られるのが、北朝鮮政府の食糧流通政策だ。

同政府は最近、一部国営企業の給料を10倍〜35倍に、協同農場でのコメの買取価格を280倍引き上げる措置を取った。従来のコメ1キロすら買えない超薄給を大幅に引き上げると同時に、穀物を市場ではなく国営米屋の「糧穀販売所」で販売するようにして、食糧流通の主導権を国の手に取り戻そうというものだ。

まだ一部での実施に過ぎないが、市場での穀物流通量が減る一方、糧穀販売所においても充分な量の穀物を供給できていないと仮定すると、それが市場での穀物価格の上昇につながっていることが考えられる。また、大幅賃上げで裏付けのないマネーサプライが増えたことも関係している可能性が考えられる。

北朝鮮の穀物価格は、例年通りなら麦の収穫が始まる初夏まで上昇を続け、秋のコメの収穫後に下落する。価格がこのサイクルをたどるのか、大幅に外れるのかによって、当局の政策の成否が明らかになるだろうが、いずれにせよ、北朝鮮国民の苦しみはしばらく終わらないだろう。