3カ月に1度の目標設定によって成長スピードの向上を実感

問:どのようにして識学の浸透を図っていきましたか。

まず、午前中に私が講師の方から指導を受けて、話の要点をメモし、午後から私が管理職に対して受け売り講座を実施していきました。それを1年間続けて、以降は毎年理論学習をするたびに識学への理解が深まっていると感じています。

理論学習に合わせ、当社では理解度チェックテストを実施してきました。最初のテストで80点を取れたら合格。これを評価項目のなかに入れています。

80点を取れなかった人は再テストを受けてもらい、そこでは90点を超えなければ合格になりません。そこで不合格なら、100点を取れるまで延々とテストが続きます。こうすることでテストに慣れ、識学理論を覚えければならないという意識が根付きました。

それと、ルールを徹底して守らせましたね。ルール違反を許した方が仕事が早く終わったとしても、長期的に見ればデメリットは多いです。「逸脱してもまあいいや」を許さなかったことは、識学が社内に早く浸透していった大きな理由ではないでしょうか。

といっても、ルール変更は頻繁にあります。朝に発表したルールをその日のうちに変えたこともありました。そういうときは、社内のコミュニケーションツールですぐに伝え、運用します。

問:識学の導入によって社員の皆さんから反発はありませんでしたか。

変化を嫌がった管理職が、「つらいです」と漏らしたことはありました。部下に嫌われることを恐れて、指示をしたくなかったようです。

それくらいですかね、識学に対するアレルギー反応というのは。その管理職も、今や当社のなかで識学への理解がとりわけ深くなっていますから、私も期待しています。

実は、私自身、それまで1年に1回だけだった目標設定を「3カ月に1度のスパンにしましょう」と言われたときは、「えっ、そんなに頻繁にやるんですか。せめて半年に1度でよいのではないですか」と講師の方に言ってしまったことがありました。結局、勧められた通りにしたところ、本当にやってよかったと思っています。

1年間で達成すべき目標であっても、毎日集中しているわけではなく、それこそ「最後の1カ月間だけ頑張って達成したらそれでよし」としてしまうことがありました。3カ月で区切ることで、「この期間のうちに習得できることは何か」に目線が向きます。社員の負担も減りますし、成長も自覚しやすくなるのです。自社の成長スピードが4倍になった気がしますよ。

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社員に気を遣い過ぎて根回しに疲れている社長に識学の受講を勧めたい

問:組織改善が図れましたか。

はい。行動指針書を作成し、管理職と一般社員それぞれの役割定義をしたので、各人が何を求められているのか明確になり、迷いがなくなりました。私の指示が社員にスムーズに浸透するようにもなりましたね。

それから、作業効率が格段に向上しました。従来、繁忙期の2~3月の間、社員は連日残業続きで、土曜日も毎週出社しなければならなりませんでしたが、もうそんなことはありません。繁忙期だろうと土日は休めますし、残業時間も大幅に減りました。

これは、期限と状態を明確にして仕事をするという識学の教えのおかげです。当社の業務のうち、特に印刷の仕事はオーダーメイドであるがゆえに顧客と細かくやり取りしながら進めていく必要がありますが、もともと、「いつまでにどの段階へ至っていないと納期が守れないか」をしっかり約束する文化がありませんでした。

納期があったとしても、それが本当のデッドラインなのか希望なのかも曖昧でしたし、顧客から連絡がなくても催促していなかったのです。そのため、約束期日が本当のデッドラインだったときは、後工程にしわ寄せが来るということを繰り返していました。期限と状態をはっきりさせた打ち合わせによって、こうした面倒はなくなったのです。

昔は和気あいあいのんびり仕事をする会社でしたが、今はなるべく雑談を排除して、いかに集中して仕事に臨むかを社員が意識するようになっています。

問:どんな会社や経営者に識学はお勧めでしょうか

全ての経営者にお勧めですが、なかでも、年上の社員に囲まれた後継ぎ経営者でしょうか。社員が言うことを聞かなくて困っている、社員に気を遣い過ぎて根回しに疲れている社長には、識学が非常に有効だと言いたいです。

そこに悩まなくてよくなると、会社をいかに成長させるかに頭を働かせることができます。私は今、「社員のためには何をしたらよいか」を考える時間が以前に比べ少なくなりましたが、私の思考が社員のためになっている時間は大きく増えているはずです。

それから、製造業の会社。なぜなら、業務が属人化し過ぎてしまう傾向があるからです。ある一人のベテラン職人に頼り切りになり、その人がいなくなったらどうしようもありません。識学の考えをもとに評価制度を構築していくと、ブラックボックス化した技術を明らかにすることにもつながります。当社では今、誰がどの仕事を担っても大丈夫な状態になっていますよ。